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死にたがりの神様へ  作者: ヤヤ
第二章 降りかかる悪夢
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27.待ちぼうけ

 



 それから朝日が昇っても、リックとリオルは応接室から出てくることは無かった。リレイヌ、睦月、アジェラ、それから馬車の操手は応接室の近くに椅子を持ってきて、それに座ってただふたりが出てくるのを待ち続ける。

 時間が経ちすぎてみなが器用に椅子の上で寝ようとも、リレイヌだけはふたりが出てくるのを黙って待っていた。決して寝ようとしない彼女に、隣の椅子でウトウトと船を漕ぐ睦月が、心配そうな目を向ける。


「……なあ、リレイヌ」


「ん?」


「……お前さぁ」


 何かを言いかける睦月。

 と、そこで開かれる応接室へと続く扉。


 寝ていたアジェラと操手が飛び起きるのを尻目、すぐさま椅子から立ち上がるリレイヌに、部屋から出てきたリオルは一瞬瞠目。すぐに困ったように笑みを零す。


「寝なかったのかい?」


「……」


「夜更かしはダメだろ? 女の子は特に、肌荒れとか気にするんだからさ。ちゃんと寝ておかないと大変だよ」


 優しく、促すように告げれば、リレイヌは一拍の間の後に「ごめんなさい」と謝った。リオルはそれに頷き、「分かってくれたならいいんだ」と微笑む。


「それはそうと、睦月とアジェラまで徹夜とは……睦月はともかく、アジェラは仕事大丈夫なのかい?」


「がんばります……」


「……今日は休みな。みんなには僕が言っておくから」


「ありがとうございます……」、とアジェラは礼をひとつ。そのままウトウトと船を漕ぎだす彼に苦笑を浮かべ、リオルはその場にいる者を見回した。向けられる不安げな目が、少し心地悪い。


「……じい様と話さないといけないことがあるから、僕はこれで。リレイヌたちはひとまず一旦寝て、また起きたら話をしよう。──アジェラ」


「はい……」


「リピト家のご当主様とその部下を客室へ連れて行ってあげて。そしたら君はもう今日は寝てていいよ」


「えっ」


 眠たげだったアジェラの顔色がサッと悪くなるのを無視し、リオルは「それじゃあ」と早足でその場を立ち去っていった。残された面々は自然と顔を見合せ、最終的に一足遅れて応接室から出てきたリックへと目を向ける。


「……なに?」


 不満そうに一言。

 告げるリックに、みんながみんな首を横に振るのだった。

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