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122.抱擁と約束

「あー! リレイヌ! よく頑張ったなぁ! 皆のためにほんっとに頑張ったなぁ! ありがとうなぁ! 無理させてごめんなぁ!」


 エグエグと涙しながら、リオルは腹の底から声を張り上げると、小柄なリレイヌを抱きしめその頬に頬擦りをかました。


 あの後、部屋にやってきた友人たち四人。その中にリックの姿もあることにどこか安堵しながら、リレイヌは容赦なくリオルに抱きしめられつつ困ったような顔をする。アジェラが「やり過ぎでは?」とつっこむのを尻目、そっとリックを盗み見るリレイヌ。その視線がゆっくりと逸らされた時、睦月がリレイヌの目の前に立ち、問答無用でその頭を押し付けた。アジェラが「何してんですか!?」と驚きに声を荒らげる。


「お、ま、え、なぁ!! なに死にたいとか思ってんだよ!! なに戦闘で力抜いてんだよ!! 話聞いたけど馬鹿だろ!! 馬鹿だな!! 大馬鹿だよほんとにふざけんなよな!!」


「む、睦月いたい……!」


「痛くしてんの!! このバカタレ!!」


 怒る睦月が手を離し、リレイヌは思わず押されていた頭を抑えながら恐る恐ると顔をあげる。


「お、怒ってる……?」


「当たり前だろこの馬鹿!!」


「そ、それはその……ごめん……」


「謝るなら最初からすんな!! このボケ!! アホ!!」


 怒鳴る睦月は、背後で「……罵倒のボキャブラリー少ないな」、「いやほんとに……」、と囁き合うリックとアジェラをひと睨み。ゴホン、と咳払いしてから、改めてとリレイヌを見る。


 小さな、自分たちよりも遥かに小さな少女。まだ生まれてから十数年しか生きていない彼女は、その短い期間でどれ程の辛い思いをしたのだろうか……。


 寂しそうに、悲しそうに伏せられる青色の瞳。美しいそれを視界、睦月は深く息を吐き出すと、無言で居た堪れなそうな彼女を抱きしめる。


「!? む、むむ、睦月!?」


 狼狽える彼女。リオルが口元を抑えて「あらまぁ」と離れていくのを尻目、何故か両手を顔の位置まで挙げた彼女は、オロオロと迷子のように視線をさ迷わせる。


「……心配した」


 ポツリと、睦月は言った。疲れたような、たくさんの精神的疲労が感じられるその声色に、リレイヌは停止。ゆっくりと、肩口に埋まる黒紫の頭に視線をやる。


「……もう、死にたいとか言うな。生きることから逃げようとすんな。お前が抱えてるもん、俺も一緒に背負うから。だから、もう、俺ら放って遠くに行こうとすんな」


「……ごめん」


「ん」、と頷き、離れた睦月。眉尻を下げて申し訳なさそうにする彼女の肩に手を置き、彼はしっかりと彼女と己の目線をかち合わせる。


「絶対だかんな」


 落とされる言葉に、こくりと彼女が頷いた時だ。

「おアツいねぇ〜」の言葉と共に、その場にリンが現れた。隣に柊を連れている彼は、即座にリレイヌから離れた睦月を見てニヤニヤ笑う。


「ばっかリンちゃん隊長! 良いとこだったのに!!」


 リオルが叫ぶのをジトっと睨み、睦月は「あんだよ」と不貞腐れたようにリンたちを見た。その様子に苦笑を零しつつ、ケラケラ笑うリンを軽く叩いた柊が「皆呼ばれてるわ」と口にする。


「呼ばれてる?」


「だれに?」


「総司令に。……なんでも、あなた達全員に話があるそうよ」


 ほう、と頷く面々。リオルが「そんなの聞いてないけど?」と不満そうに隊長ふたりを視界に入れる。


「俺らも突然呼び出されたからよくわかってないのよねぇ〜」


「? おふたりも呼び出されたんですか?」


「ええ。皆と一緒に会議室に来いって言われてる」


 不思議そうな面々は自然と顔を見合せ首を傾ける。さてはて自分たちは特に何もしていないがと、思いながらも呼ばれたからには行かねばならない。

 ベッドから降りて立ち上がるリレイヌに手を貸してやりながら、リオルは小さな彼女を視界、目を細めた。そして、何かを思案するように考える彼を、「はよ行くぞ」と睦月が軽く蹴り飛ばす。


「いって!? お前なあ! 仮にも護衛対象にはもっと優しくしたらどうなんだよ!!」


「へっへーん、昔のことなんて忘れましたー! 俺は今孤高の人狼なので護衛してる奴なんていませーん!」


「おい、恥ずかしくなるような会話をやめろ」


 ピシャリと吐き捨てたリックが廊下の方へ。リレイヌはその背を見つめ、そっと視線を下へとおろす。


 なんだか、胸がザワザワする……。


 思いつつ、すぐに顔を上げた彼女は皆と共に部屋を出た。小さな戸惑いを、内に秘めて……。

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