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106.地上での再会

「ココから地上へ出られるよぉ」


 ゆらゆらと蛸足を揺らす魔導生物。それが示したその先、古い遺跡のような様相の建物があった。長ったるい円柱がいくつも、積み重なるように存在するその奥へと踏み込めば、そこにあったのはうすらと輝く巨大な魔法陣。魔導生物が近づいたことによりさらに発光を強めたソレを無言で見遣れば、魔導生物は説明するように口を開く。


「一回限りの限定魔法というやつさ。ぼくは生憎と魔法との相性が悪いから、コレは借りたものになるんだけどね。地上とココとを往復するにはコレで十分事足りるだろう?」


 静かな面々。誰もが沈痛な面持ちを浮かべる中、魔導生物はそれが面白くないと言うように唇を尖らせるとさっさと魔法陣の上へ。皆もそれに続くように、ぞろぞろと輝くそれの中に踏み込んでいく。


「よし、みんな入ったね? じゃあ、途中で飛び出さないよう注意してくれよ?」


 言って小さな赤い石を懐より取り出した魔導生物。

 ソレは手にした石を叩きつけるように地面に放ると、にんまりと楽しげに笑った。


「? おい、なにして──おわっ!?」


 ぐわん。揺れる空気。

 あまりにも大きく歪んだそれに思わず口元を抑えた皆が、瞬きの後に見たのはどこかの広い屋内の景色だった。


 教会、だろうか。

 前方に巨大な翼の生えた女の像が存在するそこは、上部に位置するステンドグラスから差し込む美しい光によりてらてらと照らし出されている。

 等間隔で並んだ横長の椅子は計12列ほど存在し、それらは屋内に整然と並べられている。


 そのうちのひとつの椅子に誰かが座っているのが見えた。

 皆は酔いに青ざめながら、その誰かをじっと見つめる。


 その視線に気づいたのだろう。誰かはピクリと肩を揺らすと、そっと、静かに皆のことを振り返った。


「あ──」


 睦月が、思わずと声を発した。

 と同時に、目を見開いたその誰かは勢いよく立ち上がると駆け足でみなの傍へ。「ただいまぁ」と呑気に手を振る魔導生物を渾身の力で押し退け、睦月、それからアジェラを、飛びつくように二人まとめて抱きしめた。


「へあ!?」


「お、おお……」


 アジェラが驚き、リックがそっと彼らから距離をとる。


「……リオル、か?」


 謎の人物に抱きしめられたまま、睦月が問うた。恐る恐ると言った風なそれに、下を向き震えていたその人物は勢いよくその顔を上げる。


「お゛まえら゛ぁ!! よぐ無事だったな゛ぁ!!」


 色素の薄い紫紺の瞳から大量の涙を流し、なんなら鼻水やらヨダレまでもを垂らすそれは、間違いない。シェレイザ家次期当主、リオル・シェレイザその人だ。

 睦月が「ばっ! 汚ねえ!!」と叫ぶのを無視して二人をさらに抱きしめるリオルは、顔から溢れる大量の液体をそのままに「ごべん゛っ! ごべんなあ゛っ!!」と汚い謝罪を幾度も発す。


「俺が、俺がもっどじっがり考えでだらっ! おまえら大変な目に遭わなくてずんだのに゛っ! 苦しい思いしなくてずんだのに゛っ! ほんどに、ほんどにごべえぇんっ!!」


 だらだらと鼻水やら涙やらなんやらを流しながら謝罪するリオルに、睦月とアジェラは思わず薄い涙をその目に浮かべた。しかし、今は泣くかと、ツンと痛む鼻を大きく啜った彼らは、そっとリオルの肩を叩いて彼に距離をとってもらう。


「むつき……あじぇら……」


 ぐずりと鼻をすするリオルに、ふたりは困ったような顔で「ただいま」を口にした。それを聞いたリオルの瞳が大きく揺らぎ、また彼は多量の涙を流していく。


「お、おがえり゛ぃ〜!!」


 わあああ!!、と嘆く彼に、ふたりは笑う。その微笑ましい光景をどこか呆れたように見つめていたリックは、ふと視線を横へ。そこに居るリレイヌを見て、その表情が暗いことを認識し、思わず彼は、そう……声をかけた。


「リレイヌ?」


「ん? なに?」


「あ、いや……その……」


 どう言葉をかければ良いか。悩んだリックが暫くして口を開いた時だ。睦月たちから離れたリオルが背後からリックに飛びつき、「おまえもげんきだったかぁ!!??」と声を荒らげた。その際飛んだ鼻水に思わず「離れろッ!!」と吐き捨てたリックは、そこでハッとしてリレイヌの様子に目を向ける。


 リレイヌは……彼女はただ笑っていた。嘆くリオルの様子を見ながら、とても綺麗に笑っていた。

 リックは言葉をなくし、思わずリオルを放置。グリグリと頭を押されようとも、それに反応を示すことはなかった。


「……リオル、元気そうだね」


 少し間をあけリレイヌは言った。ただ美しく微笑む彼女に、リオルは「リレイヌー!!」と叫び思いっきり彼女のことを抱きしめる。


「かわいいなぁ!! 相変わらずかわいいなぁ!! リレイヌも元気だったか!? 辛いこととか痛いこととかなかったか!? 大丈夫だったか!!??」


「うん。大丈夫。問題ないよ」


「そりゃよかったよぉ〜!!」


 ぐしゃぐしゃな顔で笑うリオルに、リレイヌもやわりと笑みを返す。その光景が、そう、あまりにも異様で、異質で……皆はただ言葉をなくし、ふたりのやり取りを見つめていた……。

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