51.
朱色と白と赤の列。
夏の光との対比。
色的にも、とりどり鮮やかな列だった。
白い袖を振って歩いていた。アルバイトの巫女さん。
鐘搗紺慈が先頭。
その先頭を脇で固める人々。
もしアルバイトすることになったら、あの巫女になるのか……?
「何人か、うちの寺で巫女さんを見たでしょう。その人たち、アルバイトなんです」
と鐘搗麗慈。
杵屋依杏。
「見たよ。参道を歩いていくのを。ちょうど今、思い出していたところ」
「正規の巫女さんもいます。時期的には、アルバイトで来る人も今は多いので。あまり違和感はないんじゃないかと」
「私が。この部屋に居てもっていうこと?」
「アルバイトしてくれるなら。で、バイトの人に、朝夕食事付きで。部屋を何部屋か貸しているんで。何回も言いますが、勧誘ではないですよ」
訊きこみを受ける前に、家に帰るのか。
それとも、ここに留まるのか。
留まれば当然、警察からの訊きこみはされることになる。
そして、アルバイトもすることになる、か……。
依杏は考えている。
「それで部屋代が、無料」
「そうです」
と麗慈。
「恋愛成就キャンペーン中は、特に人手が欲しいっていうのが慈満寺全体として、あると思います。それに、杵屋さんはもう、巻き込まれちゃっているし……。ぼくの言うタイミングも、悪いのかもしれないですけれど」
「良くも悪くも、キャンペーン効果だな」
と釆原凰介。
「あと少しで七時」
「え」
依杏は和室に来て、初めて時計というかスマホの時刻盤に眼をやった。
本当だった。夜である。
窓の外は、まだ夕方のように明るい。
釆原。
「地下で遺体が発見されたのは、午後五時頃。で、午後五時前に遺体になっていたと。考えるのが妥当。情報から知り得る限り、硬直が進んでいたらしい」
加えて、このような状況。
麗慈がタイミングが悪いというのも、なんとなく。
と依杏は思う。
麗慈。
「今、連絡が来ました。ご遺体、本堂にあるそうです」
依杏はますます複雑になる。
アルバイトはいい。
家に一人、よりは。
でも……。
畳に寝そべった状態の数登珊牙。
依杏が眼をやると、寝そべったままである。
寝たのかもしれない。
今度こそ刑事である。
和室についている襖は簡素なもので、サッと開ければすぐ。
別の人が入って来られる。
刑事は大股で入って来た。
有無を言わさぬ。
そんな感じ。
そんな中、数登はまだ寝ている。
依杏は、寝るに寝られなくなった。
訊きこみ。
必然、この部屋には居る感じになる。
「どうも」
明らかに刑事である、その人は言った。
「まだです。私たちは」
釆原は返す。
「それで来ました。何しろ、ゴタゴタしてましたからね」
チラッと、数登へ視線をやる刑事。
「だいぶお疲れの様子だが」
「そうですね。関係者です。一応。葬儀屋ですから」
と釆原。
刑事。
「ほう。葬儀屋」
「九十九社です」
「ああ、そこなら知っています。西耒路署が、よくお世話になりますから」
手帳を取り出す。
「桶結と言います。遺体の出た件で」
釆原の差し出した名刺に、眉をひそめる桶結。
ふと。
「記者か……」
「ええ。こちらもそう思いますがね」
と釆原は苦笑。




