表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/66

45.

ちゃぶ台へ腕を載せ、手を組んだ釆原凰介(うねはらおうすけ)


「亡くなった。地下で一名」


「え……」


言ってポカンとしたのは、杵屋依杏(きねやいあ)


数登珊牙(すとうさんが)


「どういう意味ですか」


「そのままの意味。また死人が出た」


と釆原。


依杏は、さすがに。布団に載せていた頭を起こす。

出たって。

地下で?

そんな、まさか……。


釆原。


「遺体の発見はすぐではなかったらしい。恋愛成就キャンペーンの祈祷が終わって、少し経ってからだったそうだ。地下入口の、扉は破壊されていた」


「扉って、地下の? 今日? IDロック盤とか」


ひとたび、依杏は尋ねる。


釆原。


「その通り。細工か何かしたんだろう、という話だ」







「飲む? それとも、まだ休むか。休んだほうがいいと思うけれど」


釆原は言って、小さいペットボトルを取り出す。


依杏は布団から出た。


「休むけれど、飲めます」


鐘搗麗慈(かねつきれいじ)


「ぼく、お茶持ってきます。要る人は?」


数登が寝ながら手を上げる。

で、ちゃぶ台に甘味飲料と、お茶と。







釆原の話。

午後五時頃。

地下で遺体が発見されたという。


ニット帽にサンダル。

仰向けに倒れていた、その顔には無精髭。

恋愛成就キャンペーンの後、参拝客が()けて少し経ったあと。

慈満寺に勤める一人の僧侶が、地下へ入って遺体を発見した。


地下の宝物殿、その入口には分厚い扉。

そこまでは狭い通路で、地下全体の通路とつながっている。


地下の防犯カメラ。

映像の乱れはあった。

それ以外には異常なし。







数登(すとう)は、遺体が発見されたということを知らなかった様子。

依杏(いあ)から見ると、そう見えた。


数登の表情と眼に、緊張の色が出たのを、依杏は初めて見た。

もっとも、六月以降あまり会ったことのない人物では、あったものの。


依杏にも衝撃だった。

慈満寺(じみつじ)で鐘が鳴ると人が死ぬ」。


また、同じことになった。

そして、自分も倒れている。

何故?







「鉄扉のこと、あたしと釆原さんも見た。麗慈くんたちも、本当に本堂裏へ居たんだなって思った」


本堂裏の話。

八重嶌郁伽(やえしまいくか)はこの場には居ないが、鐘搗麗慈と一緒に居たというのは、話の中でも出たので。


「鉄扉の向こうは見ました?」


と麗慈。


依杏はかぶりを振る。


「そこでぼく、郁伽さんは付いて来たんですけれど。地下入口を見張っていたんだ」


「大方、珊牙(さんが)の言った通りだな」


釆原(うねはら)が補足。


麗慈(れいじ)


「珊牙さんに用事が出来たっていうんで、ぼくと郁伽さんのみでした。で、突然倒れたものだから」


「郁伽先輩が?」


と依杏。


麗慈は少し鼻をすする。


「そうです。大変だった。電波がおかしいおかしいって、何度も言ってたんで。なんかその時に、咄嗟に気付ければ。よかったんでしょうけれど」


「電波がおかしい?」


依杏も、それは思っていたことだった。

郁伽に電話が、繋がらなかったこともあった。


「ぼくにはよく、分かんなかったんですけれど。で、その後……」


郁伽が劒物(けんもつ)大学病院へ運ばれた。

その非常手配をした、という報告のような。


「ええ」


数登は肯く。


麗慈。


「うん。それでね、それで……ええと。地下入口の見張り画面。画面が真っ黒になっていたんで」


麗慈はシュンとした。


「さっき釆原さんも、地下入口の扉が破壊されていたって。言っていたでしょう。それで見張りもダメになってました」


「なるほど」


数登は言った。


「その扉の破壊も含めてだ。いま調査中というか、捜査に警察が来ている」


釆原は手で示した。


「俺らが居る、この部屋以外は大体」


「大体って言うと」


依杏は眼をぱちくりして言った。


「刑事さんが、この会館自体に?」


「そう」


「地下入口の扉を破壊した人。見当は?」


数登は尋ねる。


釆原。


「そんなに早く付くわけないだろう」


「あの」


麗慈は言ったが、シュンとなった。


「何です」


と数登。


「IDロック盤はカードリーダーがあるでしょう。読み取らせれば、扉がひらいたときの、多少何かデータは残る。それ、ぼくんとこにも来るんで」


「あのう」


と依杏。


「どうしました」


数登は尋ねる。


「あの、郁伽先輩はいま……」


「安静にしていますから、大丈夫ですよ」


「そうでした。よ、よかった」


依杏は言った。


「そ、それで」


「何」


麗慈は少し呆れたように。


依杏。


「地下の見張りとかデータとか、どうしたの」


「来たデータは一応保存してあるんです。ぼくんとこへ」


で、スマホを操作し始める。

依杏は、その手元を見つめた。

   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ