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44/66

44.

鐘搗麗慈(かねつきれいじ)は、ドタラッと胡坐をかき。

大の字に近い雑魚寝しているのは、数登珊牙(すとうさんが)

畳の上。


ちゃぶ台。

釆原凰介(うねはらおうすけ)は、その前に腰掛けている。

窓から、日の光。


郁伽(いくか)先輩と麗慈くんは一緒に居るって、数登(すとう)さん。言っていなかったっけ。

あ。







「い、郁伽先輩は!?」


杵屋依杏(きねやいあ)は周りを再度、見渡して。

目一杯、言った。


「わ、そうだ、ファイル! ファイルは?」


麗慈はポカンとなる。


「ファイル?」


「渡してある」


と釆原凰介。

顎で数登を示す。


「渡してある。ええと、数登さんにですか? 本当?」


「そう。珊牙に」


「渡した」


合流だけでなく、ファイルも渡すことも出来た。

たぶん、全員が全員不本意という状況ではあろう。


なにせ、私、気絶したし。

とか依杏は、自分だけで補足。







慈満寺(じみつじ)会館。

その一室ということで。


更に、依杏が尋ねたところにより。

依杏が倒れたというか気絶したあと、ここへ運ばれた。


病院ではなく。







「郁伽先輩は、寧唯もどこですか?」


依杏は釆原へ尋ねる。


「郁伽ちゃんは、ですけれど」


それに麗慈が答えた。


「今は病院にいるんだそうです」


依杏は眼をぱちくり。


「あなたと同じように気絶した。という感じでしたね」


「私と同じに?」


(もくめ)さんは、僕が駅まで見送りました」


依杏は見事にびっくりした。

声は釆原ではなく、数登だった。


起きている。

雑魚寝も、しながら。


寧唯を送った?

どういうこと?


と依杏。


「郁伽さんは、いま劒物(けんもつ)大学病院へ」


「え、えっと寧唯も倒れたんですか!?」


数登は言う。


「違います。杝さんは僕が、駅まで。そのあとで麗慈から、郁伽さんが倒れたと聞きました」


「郁伽先輩が気絶……寧唯は無事?」


「そうです」


依杏は、へなへなした。

姿勢が見事に崩れる。


安心でもないけれど。

郁伽先輩、何故倒れた?


とにかく、依杏は布団に顔を埋める。

座った状態で。


「寧唯は家、ですよね。恐らく」


「恐らくね」


と数登。


「か、確認しておきます……」







参拝とは結局、本当の意味で名ばかりになった。

慈満寺のパンフレットまで見ていた、依杏。寧唯、郁伽。


三人が三人、恋愛成就キャンペーンへ結局、「参加していない」。







「慈満寺で鐘が鳴ると人が死ぬ」。


それは一種の謎である。


死人が過去一人、二人と出た。

その死因はどれも自然死として、処理されていた。とか。


数登さんは葬儀屋という。

慈満寺とのつながり、なんだかんだあって。


調査に乗り出したのは、彼としても必然。

やっぱり、今回も人が。


自分が、か。


倒れている。







数登は微笑みつつ、言う。


「頼んでおいたファイルの件」


釆原。


「ああ」


「見ました。ありがとう」


いまの和室で、ようやく、本当に受け渡し完了。


といったところか。

と依杏は思った。


釆原。


「ということは、珊牙はまだ知らない?」


数登。


「何をです」


「寝ていた理由はあれだろう、わざわざ。移動が多かったからだ。違う?」


と釆原。


「それで、依杏ちゃんが倒れたとか聞いて、ここへ来たついで。移動分、体力温存のために寝ていたと」


「大体、合っています」


と数登は微笑しながら。

畳へ寝ながら。

   

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