39.
「理由って、何なのよ」
と杝寧唯。
「そんなことより、とにかく数登単語さんがここに居るって、連絡しますから。イアンに……」
寧唯の手は押さえつけられる。
微動も出来ない。
下へ落ちるスマホ。
「離して!」
「地下入口は、開きません。今も、これからも」
と数登珊牙。
寧唯。
「開くわよちゃんと!」
「地下入口を閉鎖しに来たんです。杝さんを入れないために」
寧唯は数登を凝視。
続ける数登。
「あなたがしたいのは、参拝などではない」
「お願い離して」
「いいえ」
「そんなにあたしを追い詰めるの?」
寧唯は苦笑した。
「あなたを疑ったのは、六月の場で」
寧唯は再び、もがいた。
腕を。
手を。
「疑っていたって。どういうこと」
短い抵抗。
やっと振りほどく。
数登。
「開かないんです。とにかく」
数登と寧唯が最初に出会ったのは、六月の場。
今は七月。
六月はレストランだった。
寧唯の先輩である、八重嶌郁伽がバイトをしている「マリリンアンドウィル」。
そこで会ったのが始まり。
寧唯はかぶりを振った。
だが微々とも動けない。
その眼の端。
数登が、地面へ落ちたスマホを拾う。
「六月のレストランで拝見した、大量のパンフレット。最初の一点目です」
「何なんですか。それが?」
「あの量です。集めるためには、どうしたらいいか。単純に考えて、寧唯さんに限らず一人で一度に、大量のパンフレットを行き帰りと、荷物として持参しながら移動するのは、まず難しいでしょう。ではどうするか」
「一点。何人かで同時に参拝を重ねながら複数部、持参し移動するという方法。更に一点。あるいは長期間、たった一人で。参拝を重ねながら、回数でパンフレットを手に入れる。そんな方法です。いずれにしても回数が必要ですがね」
六月のレストランにて、寧唯は慈満寺のパンフレットを大量に持参していた。
目立つくらい。
そのことについて。
数登は続ける。
「一度で大量に、そして短い期間でパンフレットを集めるのには無理がある。六月のあの日、少なくとも僕には、大量のパンフレットが不自然に見えました。ただ、あなたが慈満寺へ何回も参拝するという点に、きちんとした理由があったとすれば。パンフレットが大量であったとしても不自然では、なくなります」
「それで?」
「ええ」
「その不自然で何かっていうので、満足なの? 微妙なんだけれど」
鳴る梵鐘。




