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31.

八重嶌郁伽(やえしまいくか)がまず開いたのは、音声ファイル。

スクリーンにタッチで、触れてパッと出たやつ。

.mp3が目立つ。

その他はi、i、i……。

J?


Beyond?

更に?


形式的に、郁伽(いくか)も既に。

見たことのあるものだったり。

正確には、音声ファイルそのものではなく。


.mp3その他が、乱立。

格納されているフォルダ。

上から下。


保存してた場所とかやつとか。

音声ファイルとわかったのは、ドットのあとにつくmp3の文字で。

郁伽も変に見憶えのあるものが、あったからである。


「さっき見せてくれた、波形のやつとは別物よね」


「そうですね。あれは音声を更に波形に加工して、後で日を追って、グラフ化したやつだから」


操作間違いの、ビープ音。


「やっぱり、見ているじゃないですか。それ」


「見てないわよ。ファイルの中身まではね」


で、パッと開いた。

件のファイルは、何の音声?

という話題になった。


「正確に言うと、ぼくのは制御とも。言えないんですよね」


鐘搗麗慈(かねつきれいじ)

地下入口云々の話に戻った。


「さっきも言ったけれど、ぼくには、そこまで強いアクセス権がないので」


「じゃあ、本堂裏とかでいじっていた。それと、今もでしょう? それ、スマホで操作しているのは何?」


「引き続き、見張りです。地下入口前の監視カメラの視覚を、ピンポイントでハックしてます」


「そこまで制御出来るんなら」


と郁伽。


「地下入口ごと、ボタンをポチで。なんとか出来るんじゃあないの?」


「見張る以外にも、いろいろやっていますよ。でも、難しいんです。特に、入口を閉じたりなんかってのは。ポチってなんちゃらとかいう問題じゃないです」


と麗慈。


郁伽。


「なんかごめん。真面目に言うけれど。地下入口を閉じるまで行った方が、安全だと思う」


「さっき、実際の円山(まるやま)さんと」


と麗慈。


「あと、うちの寺の。鐘搗深記子(かねつきみきこ)っていうんですけれど。その二人で言い合っていたのも、ぼく知っています。ここまで言っちゃったから言うけれど、さっきの音声ファイルは、地下入口で録音した音声の一部を、J、じゃなくてmp3に出力したものです」


「ああ。それで、出力のために。今もスマホに触れているということ?」


そういえば、今ので「B」の付く拡張子はない。

とか郁伽は変に余計なことを、一人考えたり。


麗慈。


「そうですね。安全確認と、どんな人物が地下に出入りしたか。そのくらいの、ぼく側での把握なら。円山さんに分かられても大丈夫そうかなと思ったんで」


「いずれにしろ、それ。ハッキングってことよね。ポチってやって」


「聞こえは悪いですが、大枠では。そういうことになりますね。なんで、ごめんとか云われても」


「そうね」







スマホの電波は、一通り通じており。

ので、何かあれば。


スマホに。連絡があるだろう。

それこそピンポイントで。とか郁伽は思っているが。


杝寧唯(もくめねい)や、釆原凰介(うねはらおうすけ)たちはまだ。

着かない様子。


郁伽。


「時間的に、少しずつよね」


「そうですね。恋愛成就キャンペーンのでしょう?」


麗慈はまだ、スマホに触れる。


「釆原さんとかから、持って来たって言うファイルに関しても。何か来てないんですか」


「まだ着いて、いないみたい」


と郁伽。

スマホを見て言う。

通知も入っていない。

なんちゃらJの文字はあるが。


「こっちは大丈夫だと思う。電波もあるし。それで。地下の入口、様子はどう?」


「今、(さかのぼ)っていて。釆原さんも。地下入口前へ寄ったみたいですね」


「そう?」


「たぶん、鐘搗(かねつき)み……」


「じゃあ、お母さんでしょう。あなたの」


「え。うわあ」


と麗慈。


「なんでわかったんですか」


「苗字が鐘搗だから」


「当たり前みたいに、言わないで下さいよ」


引き続きのタップ。

クリップ。Bの文字。

そしてmp3。


「で、釆原さんが離れて行ったあと、寺の住職も来てますね」


「お父さん?」


「あの。今の場合まあ、そうなるんですけれど。あんまりその言い方。嫌ですね」


「普段なんていうわけ?」


「普通ですよ」


麗慈は顔を赤らめる。


「パパとママですよ」


「確かに、普通だ」


「す、それで、一応!」


と、麗慈は口を挟む。


「地下入口で録音した、音声ですけれど」


「うん」


「出入りした人の記録、みたいなところがあるので。出入時に自動で、音声採取出来る感じになっています。ちゃんと。円山(まるやま)さんと、パパとママですね。で、円山さんとママは、地下へ一旦降りたみたいです」


「問題の地下ね」


と郁伽。


「円山さんに勘付かれても、地下が問題だって思っているのは。あなたも同じなんだから、もう少し強めに、さっきも言ったけれど。mp3とかより、地下入口ごと。なんとかすればいいのに」


「地下の話になってくると、もっと難しいんですよ。入口にはハッキング出来ても、地下のほうはもっと。あれ、頑丈なんです」


「ええっと。出来ないってこと? アクセス」


「出来ないというか。あくまで音声ファイルの採取が出来るのは、地下入口周辺のみです。内部は、円山さんの自衛が堅い。微妙に難しくて」







「勝手に開けないでくださいよ」

と麗慈が言った。

音声ファイルやら、なんやら。


地下入口を閉じるか否か。


そういう揉め事が、その入口付近であったとしても。

地下内部の情報まではわからない。

というのが、麗慈のハッキングの現状。


「これによると」


麗慈は一人で、音声ファイルを聞いている。

郁伽には聴かれたくないのか、一人でBlueToothなりで聴いている。

mp3?

その他もあるが。


「地下入口に、さっき郁伽さんの云っていた。同じ学校の人? が二人居たようで」


「三人で移動したまま、地下入口へ寄ったと」


「そう」


「じゃあ、そろそろ来る頃だろうか」


と郁伽。


「えっと。数登(すとう)さん? は、その地下入口に対して、権限はないわけ?」


「あのですね。一応珊牙(さんが)さんは、今の場合。慈満寺単語(ルビ)にとっては派遣なわけです。それに、珊牙さんは。そういうの、好きくなさそう。開発だの、アクセスだの。PC関連とかは」


と麗慈。


郁伽。


「古風な人なんだ」


「ええと。いや、古風ともちょっと違うような……変わっているだけですかね。あと、BlueToothとか?」


「で、結局。地下入口はどうなるわけ? その鐘搗側と円山さんの様子だと」


「あくまでぼくが聴けるのは、入口だけなんですよ。音声。さっきも言ったけれど、地下内部へのアクセスは、難しい。ぼくの、今の装備だと」


「今じゃなければ、アクセスも出来るわけ?」


「考えると。確かに、迂闊だったかもしれませんが」


と麗慈は顔を赤らめる。


「内部のことも含めて、考えるべきでしたね。珊牙さんが、梵鐘(ぼんしょう)を鳴らすからって。地下入口を見張ることくらいしか、考えていなかった」


「二人だけじゃ、調査に抜けもあるわけねえ」


と郁伽は苦笑。


「じゃ、やろうと思えばアクセス出来るの?」


(こだわ)りますね」


「うん」


「今はとにかく出来ないです。別の日は考えてみますが、一番いいのは。地下入口を、円山さんが閉じてくれればって。ことなんですけれど」


麗慈は再び、聴き進める様子。

郁伽は暇になったので、また許可も取らずに。


宙に浮かぶスクリーンをタップしたり、しなかったり。

乱立するAの文字、Jの文字。

Beyond……云々(うんぬん)


「これってさあ、結局PCなの? スマホなの?」


と郁伽。


「さあ」


と麗慈。







地下内部、そこに鐘搗紺慈(かねつきこんじ)

鐘搗深記子(かねつきみきこ)の二人と、円山梅内(まるやまばいない)()りる。


ただ、麗慈(れいじ)がmp3その他。

音声ファイルを持っているのは、地下入口のものだけ。

内部に関して。

その会話は、わからないという。


例えばアクセス出来たとしても。

かろうじて、映像を少し見るくらいだとか。


結局、そのまま進行して。

様子から言って、といっても郁伽(いくか)自身は。

音声を聴いてはいないが。


どうやら、地下入口を閉じるか否かで揉めて。

揉めたまま、入口自体は閉じないまま。

今の場合、物事が進行?


「ということ?」


と郁伽。


「そう、だと思いますけれど。いずれにしても、恋愛成就キャンペーンとなったら。パパは本堂に来ます。ママに関しては、わかりません。あの人、結構複雑にいろいろ動き回るんで」


と麗慈。


「円山さん、怒っているだろうなあ」


郁伽。


「地下入口を、たぶん閉じないから?」


「だって、ぼくが考えてみても、ずっと危ないと思いますからね。結局、参拝客を制限するほうが。駄目だって考えなんでしょうけれど。一応、地下入口の権限としては円山さんなのに、決定権は鐘搗。ですからね」


「恋愛成就キャンペーンで梵鐘が鳴るほうも、ちゃんと録音するわけ?」


「です。そっちの装備はちゃんとしてあるけど、うーん。なんかあったら、珊牙さんに連絡取ってみます」


「それがいいわね。あたしも、杵屋に連絡入れてみようか。ファイルのこと、忘れそうだったな」


と郁伽は苦笑。

話が地下入口ばかりに向かうで、忘れそうになった。

とか郁伽は思った。


「もうすぐ着くんじゃないですかね? 本堂裏へ。あるいは、着いているかも」


と麗慈。

  

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