表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/66

15.

地下入口の制御が解除されたらしい。

麗慈(れいじ)の作業時間とやらは、数登(すとう)が電話から戻ってくるそのタイミングと、同じくらいで終了した。


「前回みたいに、鐘楼(しょうろう)梵鐘(ぼんしょう)が鳴る他に別の音が鳴ったとして、そうしたら一番危ないのは地下だよなあって判断したので」


と麗慈。


「それで制御したんです。でもこっちも、慈満寺の人の許可を取ったわけではない」


「慈満寺の人に許可を取らない理由は、何かある?」


郁伽(いくか)は尋ねる。


「特にないですけれど。ただ、珊牙(さんが)さんの発想が突拍子もないんで、あんまり慈満寺の人には共感してもらえないだろうから。あと、ここの地下で人が死んだ以上、各々関係者を(つの)って何かってのも」


「あなたも関係者じゃないの」


「そ、そら、そうですけれど。ぼくはまあ。どっちかっていうと。割合としては、地下で人が死んだ理由が知りたいだけ、みたいな」


と麗慈。


「そこは、あたしも共感するかな」


「そうですか」


郁伽は笑った。







郁伽が勢いに任せて走らずとも、数登(すとう)釆原(うねはら)から電話を受けていたかもしれない。

いずれにしろ、数登の所に三人で向かっているという、連絡だった。


「写真の三人ですね」


と数登。

石段の所へ再び戻って来て言う。


「そうです。杵屋依杏(きねやいあ)杝寧唯(もくめねい)、それから釆原(うねはら)さん」


「時間も、あと少し」


と麗慈。

郁伽はすっかり時間のことを忘れていた。


「それって、恋愛成就キャンペーンの?」


「そうそう。郁伽さんはそれで、慈満寺に来たんじゃないですか?」


「そうだけれど、すっかり忘れていた」


麗慈が苦笑する番。


郁伽。


「あたしのマニアック加減で言うとですね。いろんな噂の中で特に気になるのが、『見ちゃいけない仏像がある』っていうやつで」


「ああ、確かにありますね」


と麗慈。


「今はどこにあるの?」


「丁度、僕が実験してた部屋に置いてあります」


「恋愛成就キャンペーン前までは、お堂の方に置いてありましたがね」


と数登が補足。


御開帳(ごかいちょう)のためにも、一旦移動したらしい」


「それ、やっぱり見ちゃいけないんですかね」


「らしいですが、本当かどうかは定かではないですね」


と数登。


「それが、地下で人が死んだ件と関係していると?」


「そういう感じのオカルトが、高校では流行(はや)るんですけど」


と郁伽。


「やっぱり違います?」


「さあ」


と数登。


「その部屋に行けば、仏像見られるんですか?」


「見たいの?」


と麗慈。


「いや、興味があるってだけ」


「じゃあ、ついでだから実験二回目なんてどうですか。一緒に部屋に行く感じで」


と麗慈。


「いいんですか?」


と郁伽は数登へ()く。


「特に問題はないですが」


と数登。


「次に鐘が鳴るのは、恋愛成就キャンペーンの時間中です。僕は少し、寄る所があるので」













鐘を()く音だ。


「時間、だっけ?」


と言ったのは依杏(いあ)だった。

寧唯(ねい)も耳をすます様子。


「時間ではない。ただ、鳴っているのは、あたしにも理解出来た」


「理解しなくてもいいけれど、やっぱり時間じゃないよね。なんで?」


「わかんない。イレギュラー発生した?」


「どういうこと」


「恋愛成就キャンペーン前の問題ってこと」


結局話は、行きつく所がなく。

寧唯によれば、こういう梵鐘の鳴り方というのは、前例としてあまりないことだという。


「少なくとも、あんまりいい感じはしないけれど」


と寧唯。


「それは、私も思うかな」


「高校でいろいろ噂、あるもんねえ」


「何の噂?」


釆原(うねはら)


寧唯。


「そら、あれですよ。地下で人が死んだっていうのは、釆原さんも御存知でしょう」


「それは知っているけれど。鳴るからどうっての?」


「関連性は知りません。あくまでも噂レベルですからね」


郁伽(いくか)先輩、いますかね」


と依杏。


「そうだね。とにかくまずは境内(けいだい)歩きだな」


と寧唯。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ