第九十二話 不老の血
俺がバハムートに叱られてる時に、ベティは何処かに行って戻ってきた。手にはナイフとコップがある。
そんなもんを持ってきて、どうするのかと思ったら、ナイフで腕を切って血をコップに入れていた。そしてレヴィの血も入れた。
「バハムートよ、お前の血も入れるのじゃ」
「やなこった!」
即答だった。
しかも被せ気味に返事しやがった。
ベティは俺を見るなり言った。
「此奴に名を与えてやれ」
「了解。命名、パール・バハムートだ」
「仕方ない。私はパールと名乗るのだな」
今まで意識したことないけど、名前をつけるのって、俺の支配下におく事を意味するのかな?
パートナー化と合わせたら、無敵になってしまうな。
ベティはもう一度、血を寄越せとパールに絡んでる。今度はパールも無下に断らず、素直に血をコップに入れた。そして三人の血が入ったコップを俺に渡そうとする。
「さぁ飲め」
「俺が?」
「そうじゃ」
「イヤだよ!吸血鬼じゃあるまいし!」
ベティはため息を吐くと、レヴィとパールに言った。
「仕方ない。ワシら三人の腕の肉を削ぎ落とすぞ」
「なんで、そうなるんだよ!?」
「以前、言ったじゃろ? ワシらは神々の食材に過ぎぬと。三人揃ったから、血肉を食わそうと思ったまでじゃ」
冗談じゃない。
美少女の体を傷つけるなど、断じて許されないのだ。
「ワシらの肉を食えば不老不死になれるぞ?」
「不死なんて絶対にイヤだ。死ねないって、どんな呪いだよ」
「ならば血を飲め。不死にはなれぬが、不老になれるのじゃ」
三人は俺を囲んで飲めと圧力をかけてくる。
「私達をこんな体にしておいて、先に死ぬなんて、許されないのだわ」
「そうだ。責任を取れ」
「わ、分かったよ。不老になるよ。命ある限り、お前ら三人を可愛がってやるから」
そこまで言うと、三人は納得したように柔らかい表情になる。血液の入ったコップを受け取ると、覚悟を決めていっきに飲み干した。
血なんて飲めたもんじゃないと思ってたが、わりと美味かった。なんか甘くてジュースみたいだった。変だなと思うけど、飲まなきゃいけないんだし、飲みやすくてありがたいと思う事にしたよ。
「私達三人を揃えて従えた者など、お前が最初にして最後だろう。フェイロン、お前は三界の王に相応しい」
パールは厳かに言って、ベティとレヴィと三人で俺を抱きしめてくれた。さっき、散々俺を説教したのに、もうわだかまりは無いのかな?
それを聞いて、また怒られるのも嫌だから、もういいか。
「一つ、伝えねばならないのだが」
パールは、そう話を切り出した。
パールは地上では、ベティ、レヴィと並ぶ伝説として語られてる存在だが、実は遥か上空には空飛ぶ大陸を守護する、天空の覇王がいるそうだ。
「このくらい高く飛ぶと、そいつに見つかる可能性が高くなるのよ。私の管轄は遥か下だから」
どれくらい強くて大きいんだろ?
「天空の覇王が、この空飛ぶ島だとすると、私は砂粒くらいの大きさだね」
マジで?
「覇王の周囲には数万から数十万の眷属がいて、あれを相手に戦ったら間違いなく死ぬよ」
「しかしなぁ、死にたくないが浮遊大陸に行けないのも、つまんないだろ」
パールは呆れた目で見られてしまった。
「はぁ、呆れたよ。でもまぁ、空は広いから細心の注意をしたら平気……かなぁ?」
よし、では見つからないように、こっそりと行こうか。




