第九十一話 バハムートが来た。
高度15000メートルで人体に異常が見受けられなかったので、30000メートルまで上がった。
地球なら成層圏じゃないかな。景色を見て地球の丸さを実感して、空の暗さから宇宙の近さを知るはずなんだ。
でも、全然それが無い。
上空100メートルを飛んでるのと変わらない。きっと、まだ何かあるんだな。
高度を上げても、何も異常は無いので退避させてた仲間を全員乗せてある。でも、どうするか決めてない。とりあえず、この更に上空にあるだろう浮遊大陸を見つけに行こうかと思う。
「上昇だ!」
「まだ上がるの?」
今日の操縦士であるアキナの顔が不安そうだ。
しかし俺は、その表情を無視して頷く。アキナは覚悟を決めたのか、頷いて更に上昇を開始するのだが、フユミの声が割って入る。
「上昇やめ! 何かくるよ!」
アキナは上昇を止めて停止する。そして俺からの指示を待っている。
「接近してくる奴が、どんな奴か分かるか?」
「分からない。憶測で構わないなら、ドラゴンだと思う」
そんなとこだよな。
この高い場所を蜂っ子達は飛ぶ事が出来る。だが、この高度まで飛んで来るのは無理と聞いた。
つまり、翼を持った種族は無理だろう。俺達が知らない未知の存在でもない限り。
「伝令。ベティとレヴィを至急呼んでくれ。それと飛行部隊に出撃準備」
「了解」
三人の蜂っ子が部屋を飛び出していく。そんな短い間でも、未知の飛行物体は急速に接近してきた。もう視力に優れた蜂っ子じゃなくても、はっきりと視認できる。
ドラゴンだ。
もっとも、俺は映画やアニメ、本の挿絵くらいでしか見た事はないけれど。
しかし、このドラゴンはパートナーになる前のベティやレヴィくらい大きいんじゃないか?
「フェイロン、何やら来たらしいの? おぉッ!? 彼奴は!!」
「懐かしい。バハムートなのだわ」
「よし、フェイロン。ついてまいれ!」
「話をつけるのだわ」
ベティとレヴィは、来てからドラゴンを見るなり、一方的に話をして出ていった。騒がしいよなぁ、主にベティが。
もちろん、俺もあとを追って走っていく。だって俺の為に動いてくれてんだから。
外へ出るとビルみたいに高いドラゴンと、小さい美少女二人が対峙していた。それにしても、こんなバカデカイ奴が飛んでるなら、この空飛ぶ島のサイズは正解だった。
小さいと一撃で破壊されそうだ。こんな上空で空中分解して放り出されて、音速で地面に叩きつけられるなんて、イヤだよね。
「久しぶりじゃな!」
「三人揃ったのは五千年前くらい?」
二人がフレンドリーに接してるのに、ドラゴンはイライラした様子だ。
『貴様ら、何故ここにいる?』
人間の言葉を話せないからか、直接心に意思を伝えてきた。ここにいるのは俺の意思だから、俺が言うのが早いかな。
俺は異世界人で神に連れられて来た事
ベヒモスやレヴィアタンを
神にもらった能力でパートナーにした事
この空飛ぶ島は浮遊大陸が落ちた場所を
探して浮遊石を集めて作った事
などを、ベティやレヴィに茶々を入れられつつ説明した。
『ベヒモスがいれば、それも容易かろうが、それにしても、こんなところまで来るとはな』
呆れたような、困ったような、悩んでる雰囲気なので聞いてみた。
「人間が来るのはマズイですか?」
『空を飛ぶのは構わんのだが、この高度が問題なのだ』
陸の王がベヒモス、海の王がレヴィアタン、空の王がバハムートなら、バハムートが許可すれば済むんじゃないのかな?
『実はな、私の権限は低空のみでな』
バハムートが話してる時に、ベティとレヴィが服を引っ張ってきた。見ると二人が悪い笑顔を浮かべてる。
「彼奴もパートナーにしてしまえ」
「同感! なのだわ」
バハムートに近寄ると体に触って、いつものセリフを言ってみた。
「俺のパートナーになれ!」
『うわぁッ!? なにがあったんだ!?』
巨大なバハムートが、あっと言う間に小さく輝く塊になった。そして光が弱まると、そこに美少女がいた。
「あぁ〜ッ!! 人間になってる!?」
「竜としての能力は残ってるし、角や鱗もあるから人間と言うより、竜人ってとこかな」
自分なりにフォローしたつもりだったけど、めちゃくちゃ怒られた。竜の姿だったら怖かったと思うが、美少女になっちゃったからね。
可愛かった。




