第九十話 限界高度
高さ1000メートルの山の中腹に崖のような場所がある。そこにはガラスが嵌められていて、遠くから見ると光が反射して非常に目立つのだが、最初は気がつかなかった。
「山をくり抜いた中に、操縦室や司令室があるなんて、誰にも分からないだろう」
「そうかな? 空を飛んでるとキラキラしてるから一発でわかるよ?」
と、ナツミが指摘した。
でも、窓を無くしたら操縦するのに困るんだから仕方ないじゃんか。
「拗ねないでよ。誰にも分からないって言うから、誰でも分かると教えてるだけなのに」
よしよしと言わんばかりに、ナツミが俺の頭を撫でやがる。頭を撫でるな。俺はガキじゃないんだ。俺は男なんだからな!
「とか言ってるけど、サァベルさんは完全に子供扱いしてるのに怒らないよね?」
「あれはいいの!」
「ずるい! 贔屓だ!」
などと言いながら、ナツミは抱きついてきた。
美少女に抱きつかれるのは、悪い気がしないけどね。
「ガキじゃない、男だってのは分かります。ナツミを見る目は、野獣のような飢えた目ですからね」
と、ハルナに言われてしまった。
「胸と尻を見る目は餓狼のそれだよね」
と、アキナ。
「からかうのはやめなよ。フェイロンはキレたら恐いんだからさ。性的な意味で」
と、フユミ。
勘弁してよ。そうだ、この雰囲気を変えよう。
「おふざけは、ここまでだ。飛行テストやるんだから気合い入れてやろう。操縦のやり方は同じだけど、大きさが全然違うからな!」
「「「「了解!!」」」」
操縦の為の石板に触れて、ハルナが操縦を行ったが、空飛ぶ家と同様に違和感も無く操縦が出来たようだ。
これほど巨大な島が、ふわりと浮き上がる。
「高度15000メートルまで上昇開始」
「了解、高度15000まで上昇」
この時に空飛ぶ島にいるのは、俺と操縦士四人に、ベティとレヴィだけだ。他のメンバーは、空飛ぶ家で待機している。もしかしたら、危険だからね。
世界樹の頂上に行った時に、チラッと疑問に思ったのが、この世界は高い場所に行っても平地と変わらないのかなって事だった。
空気が薄くなったり、寒くなったりしないんだなと思ったわけだ。
もし、そうだとすると、この世界は宇宙との境目は何キロ上空にあるのか。もしかしたら宇宙なんてものは無いのか。
どれだけ高く登っても、平地と変わらないなら地上からは見えない高さに浮遊大陸があって、そこにも人間が生活してるのかもしれない。
もし、そうだったら面白いよな。
そんな事を考えながら、上昇していくのを操縦室の窓から見ていると止まってしまった。
「もう上れないか?」
「指示された高さです。もっと上りますか?」
「いや、少し待ってくれ」
窓の外を見ると、非常に高いのだが違和感があった。というのも、これだけ高ければ世界の、星の丸さを実感できそうなもんだが、元の世界の地球上でも見た事がないからなぁ。思い込みで違和感を覚えてるだけかもしれないし。
しかし、もう一つ。
これだけ高いと、外へ出たら死ぬだろ。エベレストなんて8000メートル級で、デスゾーンなんて物騒な領域があったそうだしな。
どうしよう?
なんとなく大丈夫って思いはある。だが賭けに使うチップが自分の命ってのはなぁ。やはり8000メートルまで降りて試すか?
そこならダメでも即死は無いだろうし。
あ、しまった。
ユーリを連れて来るの忘れてた。
俺がチキンぶりを発揮して、あれこれ逡巡してると、操縦室の窓の外に何かデカイのが張り付いていた。
見ればナツミとフユミが、外を飛んでいて窓の外から中に手を振っていたのだ。慌てて外に出ると、地上にいる時と何も変わらなかった。
なんか、ため息が出たよ。
俺の能力が科学じゃ有り得ないんだから、何があっても不思議じゃないんだよ。
でも、それでも、元の世界の常識で考える自分がいるのが救えない。
まったく疲れたよ。
自業自得だけどね。




