第六十七話 雨の日
目が覚めるとライムは居なかった。どうやら部屋に戻ったらしい。この部屋に俺一人は寂しいんだよな。
そう思ってたら、布団がモコっとしてる。ライムかと思ったけど二つあるし。その二つは接近してきて、俺の体をガシッと掴んだ。
誰かと思ったら、ナツミとフユミだった。
「雨の日は嫌だね〜。退屈だから、お姉さん二人が遊びに来ましたよ〜」
二人の美少女がニコニコしてる。そのうちの一人は、絶世のって言葉を使っても構わないくらいだ。
「何して遊ぶんだ?」
「トランプ」
「オセロ」
どちらも転移してきた奴が広めたものだ。俺もこちらに来た頃は、労せずして儲ける事は出来ないかと思ったもんだが、先に来た連中が既にやっててダメだった。
しばらく二人を相手に遊んでたけど、二時間もしたら飽きてきた。それにしても、こんなにも可愛い女の子を相手にしても、赤面一つしなくなったな、俺。
「ちょっと家の中を見てくるよ」
「え〜、何でそんなに仕事熱心なのよ」
と、ナツミに言われてしまった。
でも理由はあるんだよ。
「可愛いお前達と、出来る限り楽しく暮らしたいからな。その為に出来る事は常日頃からやるんだよ」
「私、一緒に行きたい!!」
フユミが俺に抱きついてきた。フユミの腰に手を回して抱き寄せると、フユミのクチビルに軽くキスをする。
「ちょっとぉ、何なの今のは。ドキドキしちゃうじゃないのよ」
「私も行く。二人きりにさせたら危ない」
それって俺が危ないのか、それともフユミが危ないのか。
二層目に降りると中をグルっとまわって見た。雨漏り箇所はないか、荷崩れしやすい場所はないか。そんなところを重点的に見ておく。
「そうだ、トイレとか使って不具合はない?」
「特には無いかなぁ?」
「清潔だし、臭いも無いしね」
なら、問題無しと。
「次は風呂場だけど」
「毎日使いたい!」
「同じく!」
使用した水はスライムを使って浄化するけど、湯を沸かす手段が無いんだよな。火の魔法を使える奴か、湯沸かし器が欲しい。
女の子にしてみりゃ死活問題だよな。俺はナツミを捕まえて抱き寄せる。
「な、なによ? ヤダ、女の子の体の匂いを嗅ぐかな、普通!!」
「えぇ、私も!?」
二人の体臭と髪の毛の匂いを確かめてみたのは理由があるよ。風呂問題を先送りにするか、万難を排して解決するか。これは重要だ。
絶世の美少女が汗臭いとか、これほど萎える事は無いからな。
「ナツミ、フユミ」
「なによ?」
「何なのよ?」
俺は親指を立てて笑顔で保証してやった。
「お前達二人とも、すっげーいい匂いだぜ!」
「匂いフェチがいた!!」
「私じゃなかったら嫌われてるからね?」
「分かったよ。フユミの匂いだけ、嗅いでろって事だな!?」
「違うよッ!?」
ナツミとフユミの腕を掴んで、俺は自分の部屋に歩き出す。
「どこに行くの?」
「俺の部屋だ。帰ったら寝るぞ。お前らはパジャマ禁止。できれば裸の方が良かったが無理強いはしないからな」
「なんで裸か下着なのよ?」
「あの広い部屋に一人で寝るのは寂しいんだよ。お前らが寝て匂いが布団につけば、残り香で寂しくないだろ?」
ナツミが疑わしげに俺を見る。
「そうかなぁ? 私なんか布団にフユミの匂いがあったら、フユミくせーって思うけど」
「なるほど。同性ならあるかもしれないな。ユーリ以外は」
「あ〜、うん、ユーリは例外だね」
「何か、あったんですの?」
サァベルに事情を話すナツミとフユミ。
「そんな事でしたら、私が引き受けますわ」
「いいのか?」
「当然です。私だけのフェイロンと世間に知らしめる為に、マーキングは必要なのですわ!」
「「ネコ科来たー!」」
サァベルは俺を抱きしめると、胸に頭を擦り付けたり、頬擦りしたりを始める。サァベルの体も良い香りだよな。
「じゃあ、サァベルは今晩来いよ」
「勿論ですわよ」
そこに操縦室から伝令が来た。
「天候が回復しました。至急、操縦室まで来て下さい」
「分かった。すぐに向かう」
操縦室に入ると、前面のガラス窓から眩しい太陽光が入り込んでくる。
「強風も治ったよ、発進する?」
久しぶりに晴れてアキナが嬉しそうに聞いた。
「うん、進路南へ発進」
「了解。上昇開始。進路南、微速前進」
さぁ、南は何があるか楽しみだ。




