第六十五話 自宅探検
甲板には兵隊蜂っ子が10名いた。全員青い戦闘服に身を包んでいる。よく見れば、ファントムとイーグルも同様だ。
「みんな、青いんだな」
「フェイロンに命名して頂いた通り、ブルーインパルスの青です」
あれ?
そんな命名したっけ?
編隊飛行なんてやってるから、ついツッコミを入れたけど。でもまぁ、もう服まで用意してるし、言えないよなぁ。
「では、ブルーインパルスの諸君。周囲の警戒をよろしく頼むぞ」
隊員からは敬礼をされたので答礼で応えた。
一層に降りると蜂っ子達が忙しそうに歩き回っている。宿屋の家から持ってきた荷物から、私物を見つけ出しては部屋に持っていってるようだ。
一応、自分の部屋を見に行くか。
俺の部屋は一番後部にある。ドアには名札が貼ってあるな。また芸が細かい装飾が施してある。
部屋に入ると、宿屋の家の時よりベッドが大きいんで驚いた。6〜7人は寝れるんじゃないか。一瞬、誰が一緒に寝るのかな、とか考えて顔がニヤけてしまった。
まぁサァベルとリルは寝に来るだろう。あの二人は俺の大事な湯たんぽだから。
部屋のほとんどをベッドが占領してるせいか、ロフトがあって、そこを物置として活用しろって事みたいだな。
キーラに頼んで、俺の部屋専任の侍女を産んでもらうか。もちろん絶世の美少女で。なんか夢が広がるなぁ。
とりあえず自分の部屋は確認できたから、二層目の操縦室へと向かう。二層に降りると、生活物資を入れたコンテナや、水を入れた樽などがギッシリと設置してある。
腐り易いものはミッキーの倉庫に収納してあるらしいが、干し肉やら何やら大量にある。食べ物がたくさんあると、何か安心できるね。
そんな二層の倉庫の後部へ歩いていく蜂っ子が何人かいるので一緒に行ってみる。・・・なんだ、トイレかよ。
そういや、トイレは二層の後部に設置したんだったな。
忘れてた。
大浴場も後部にあるけど、水は貴重だから水源がある場所に着陸しないと入れないんだっけ。
ああ、そうだ。
操縦室に行かなければ。
おー、今度は部屋になっている。
意外と広い空間だ。
ソファにテーブル、椅子もある。
「あら、船長。遅かったわね」
ハルナとナツミが迎えてくれる。
「船長? 俺が?」
「そうよ。家主兼船長よ。それと、どこへ向かうか決めてるの?」
「北はバカどもの本拠地だし、寒そうだから南へ行こうぜ」
「南ね、了解よ」
ハルナが指示を出して、ナツミが操縦する役割分担のようだ。
「南へ転進。微速前進!」
「よーそろー」
こちらの操縦室には、パイロット二名と伝令係二名の合計四名で運用するそうだ。何か不自由があれば、また変更をする。
変化があれば、また報告をすると言われて、自分の部屋に戻る事にした。一層に戻ると、さっきとは違うルートを歩く。
治療院と看板のある部屋を見つけたので、入ってみた。
「いらっしゃい」
ユーリとライム、アオイとアヤメとカエデがいた。他は休みらしい。
「フェイロン、どこか調子悪いの?」
おっとりした雰囲気をまとって、ユーリは心配そうに聞いてくる。全然雰囲気が違うから面食らうよな。
「いや、船内を見てまわってるんだ。ユーリこそ調子はどうだ?」
「私もいいよ。飢餓感にも似た性欲も無いし、自分を取り戻した感じかな」
「じゃあ、もう女の子にも興味無しか?」
ユーリは微笑みながら、かぶりを振って曰く。
「私、女の子が好き。柔らかいし、良い匂いするし大好き」
「そうか、女の子が好きなのか」
「うん、大好き」
「じゃあ、俺がユーリを部屋に呼んだら?」
「勿論、喜んでいくよ」
「部屋で何をされるか分かってるか?」
「うん、赤ちゃん頂戴」
うっとりした表情で言われたので、ついその気になって、腕を掴んで物置に連れて行こうとしたけどライムに止められた。
「仕事中だからダメ!」
マジで残念だ。
でも、ここで好きにさせろと、我を通したら自分がダメになると思う。自分を律する強い精神を持つのだ。
流される事も多いけどね。
部屋に帰る為に歩いてると、俺の部屋から二つ離れた部屋からサァベルが出てきた。いつも俺の部屋に入り浸りだったから、自室から出てくるのを見るのは新鮮だ。
「部屋の整理をしてたんですわ」
猫的、虎的な整理とは、如何なものかと興味が湧いて入ってみた。サァベルは自室に入られても嫌がりはしない。
一言で表現すると、機能的すぎて飾り気が全く無い部屋だと思った。ベッドは使った形跡が、まるで無いし、鎧に武器は簡素な箱にしまって隅に置いてある。
「何を期待してたんですの?」
「いや、可愛いぬいぐるみとか、並んでるかなーとかね」
サァベルは少し考えてから言った。
「私の大切な宝物を特別に見せてあげますわ」
「楽しみだな!」
「他の方には内緒にして下さいませ」
「勿論だ!」
ワクワクする俺を連れて、サァベルは俺の部屋に入っていく。
「ここ、俺の部屋なんだけど・・・」
「こちらですわ」
困惑する俺を気にもせず、サァベルはロフトに上がっていく。俺がロフトへ上がると、サァベルは荷物を動かして奥から箱を取り出した。
俺の部屋に私物をおいてんのかよ。いや、別に構わないけどさぁ。
「これですわ!」
サァベルが凄く良い笑顔で見せてくれたから、辛うじて飲み込んだけどね。心の中で叫びたい。
なんだ、こりゃ!?
見せてくれたのは石。ただの石。強いて言うなら、かなり丸い。
「見て下さいませ。ほら、転がるゥ」
「なるほど」
こいつはマジで猫だ。転がる石を見て、すげー楽しそう。そんな事を考えてる俺に、次々と至宝を見せてくれる。
「これは中央都市で買った一品の、ごむぼおるですのよ。こちらは草原の国で買いました、バンブーなる植物を編んで作った鞠で、中に鈴が入ってますの! ほらぁ、転がすと音が!!」
この調子で延々と自慢の一品を紹介された。
「そんなに大切なものを失くすなよ」
「大丈夫ですわ」
なんか疲れた。
もう寝よう。
俺がベッドに入ると、当然のようにサァベルも入ってくる。虎のくせに虎縞模様のパジャマを着てるし。
「俺も大事な宝物、失くさないようにしなきゃなぁ」
「懐に仕舞うのですわ」
「懐か」
俺はサァベルを胸に抱き締めた。言外にお前が宝だと言ったつもりだけど、分かったかなと思ってサァベルを見た。嬉しそうに俺を見てるので、ちゃんと通じたようで嬉しい。




