第五十四話 ベティさんと会話
洞窟から外へ出る時に、ポンと頭を叩かれたので振り返ると、眠そうな顔したタレ目のベティだった。
「ワシをおんぶせい」
イヤだと言いかけたが、真剣な表情だったので、大人しく背負ってやる。何か俺に話たいのかと思って集団の最後尾を歩く事にした。近くにいるのは護衛で残ったイオリだけだ。
「おおッ! 背中におっぱいの感触が!」
「たわけ。好き放題に触っておるくせに」
ベティは俺の首に腕をまわして絞めるように、掴まり直した。そのおかげで余計に胸が押しつけられたのだが、それは黙っておこう。
「で、何か話があったんじゃないの?」
「うむ。金銀宝石を出した時、まるで興味が無さそうだったじゃろ?」
「いや、興味はあるよ。生活は楽になるし、我が家は家族が多いから欲しいよ」
「ならば、先ほどの宝物の一部を我が家の物として、分けておくのはどうじゃ?」
俺は首を振った。
「何故じゃ。欲しいのじゃろ?」
「あれは今回の騒動で亡くなった奴のものだろ。それを盗む真似は出来ないよ」
「なるほど、分かったのじゃ」
「何が?」
「あれから取らぬでも、ワシに出させれば良いと思ったのじゃな? 当たりじゃろ」
このロリババアは、俺を金の亡者だと思ってやがるのか。この世には金より大事なものがあると教えてやるか。イオリにベティを渡してから言ってやった。
「寝床で寝たままウンコする奴に、俺が働けと言ったって無理だろ?」
「おのれ、此奴め。まだ言うか!」
盛大に文句を言おうとするベティの口を片手で塞ぐ。モゴモゴ言ってるが気にしない。
「金はな、必要なだけあればいい。
世の中には金より大事な物があるんだよ。
それを知らない奴が、金に固執する。
それが何か分かるか?」
ベティは悔しそうに首を振る。
ミスリーンを呼んで、俺の代わりに口を押さえておけと命じておく。
「口を塞がぬとも、騒がぬモガモガ」
「では教えてやる。それはお前たち!!」
イオリやミスリーン、そしてベティを指差した。
「美少女と巨乳だッ!!」
「モガ〜〜ッ!?」
ベティの胸を鷲掴みにしてから
「たとえ仰向けになろうと
形崩れしない巨乳にして美乳
これぞ神の造り至高の芸術
金など出しても買えないんだよ
分かってもらえたかな?」
答えはグーパンチだった。
「では次に究極の芸術について語るか?」
「どうせ、尻じゃろ!?」
素晴らしい!
さすがベヒモスだ。
ちなみに至高の芸術については、ユーリも全面的に賛同してくれてる。
「まぁ、そんなわけで必要以上の金に興味は無いってわけだ」
「執着が女体に変わっただけじゃろ!」
そう言いながら、またおんぶをしろと言いやがる。鷲掴みにしたから拒否出来ない。仕方ないな。
「ふん! 少女の敵め!」
「悪かったよ。でもベティも悪いんだぞ。どうしても、俺を金の亡者にしたがるから」
ベティは俺の耳元で小さくため息をつく。
「盟約を結んだ時、人間はワシの出した金銀を見て欲深い目で見ておったよ。お前もそうなんだと思ったのじゃ。ワシを利用するのだと」
「俺は違う!!」
「同じじゃ、アホゥ!金か女かの違いじゃ!」
「その違い故にベティを利用しない」
だから難しい事を考えないで、俺の家で寝て暮らせばいい。
「美味い話じゃの。罠やも知れぬ」
「罠はねーよ。ベティの豊満な体に血迷った俺か、ユーリが夜這いするくらいだぜ」
「ユーリは女じゃろ?」
「心は雄だからな。何人か毒牙にかかったけど、女の子同士ならセーフだろ?」
鍵はつけてやると言ったら安心してた。
「まぁ良いわ。これをやる」
そう言って俺の手に、コロンと親指くらいの大きさの宝石を落とした。
「これは?」
「これは浮遊石じゃ。魔力を通せば空中に浮かぶ事が出来るのじゃ」
これは面白いな。
「あまりに希少すぎて誰も知らぬ。王にでも売れば領地持ちの貴族になれるのじゃ。売れば生涯遊んで暮らせるのじゃ」
「これ、どれくらいの大きさまで、どのくらいの重さまで浮かぶんだ?」
俺の質問に少し考えてからベティは答えた。
「昔に見た貴族の屋敷くらいなら、敷地ごとで、膝の高さまで浮くんじゃないかの?」
敷地ごとって、土地の厚みはどれくらいで膝くらいの高さまで浮くんだ?
「何故、そんな細々と聞くのじゃ?」
「いや、空に浮かぶ家を作りたいと思ったんだよ。良いと思わないか?」
「思わぬ。ずっと地下で生活してたしの」
人間になった以上、太陽の光は生きていくのに必要だと教えてやる。ベティだけではなく、ミスリーンやイオリまで感心して聞いている。
空に浮く家を作る計画を練らなきゃな。
帰ったら楽しみだ。




