第四十七話 戦闘準備
冒険者が最前線に配置されてから、五日が過ぎた頃にセージュが来たとの報告があった。これで空と地上から連携して攻撃ができる。
敵のゴーレムを補充する速度より、こちらの殲滅速度が上をいくのだ。いくと思う。いくといいなぁ。
「遅くなって申し訳ありません」
到着して開口一番セージュは謝った。だが、そんな事は、どうでもいい。セージュが来てくれた事が大事なのだから。
「よく来てくれた! 早速で悪いが頼む!」
「任せて下さい」
ギルマスが、もう待てないと言わんばかりに、セージュに言うと、セージュは笑って応えた。
宿舎から前線は目の前だが、それまでの短い時間で俺は聞いてみた。
「お前、ずいぶん痩せてるけど大丈夫か?」
「ええ、まあ。200人も相手にするのは大変でしたよ。新鮮な生肉に群がるゾンビのように、むしゃぶりついてきましたからね」
「その成果はリナに聞いたけどな。おめでとう」
セージュは200人の妖精を妊娠させるという快挙を成し遂げたのだ。まさに酒池肉林だが、妊娠させた妖精達をゾンビに例えるあたりを考えると、うらやましくない。
物事は程々が一番だってことをセージュは教えてくれたんだよ。たぶんね。
前線に到着するとセージュは、妖精の里への入り口を開いた。すると中から妖精が次々に飛び出してくる。
妖精の中には俺を覚えてる者も何人かいて、笑顔で挨拶をしてくれる。可愛いなぁ、何人か俺の仲間に欲しいが、セージュの元にいるのが一番なんだろうな。
「今から一時間後に攻撃を開始する。それまで休んでおけよ」
ギルマスの言葉に、冒険者達は適当な場所で待機している。リラックスしてる者、緊張で貧乏ゆすりをしてる者、仲間と騒いで不安を紛らわせてる者と様々だ。
セージュと妖精は魔力の充填を開始したようで、リナや他の妖精と色々話していた。邪魔したら悪いから、行くのはやめておこう。
俺の元にも仲間が集まってきた。ライム、サァベル、ユーリ、リル、ミッキー、キーラ、サクラ、スミレ、蜂っ子達25人で合計33人。
この世界に来た頃から考えると、ずいぶん仲間が増えたもんだよ。しかも全員美少女で頼りになる心強い仲間達だ。
「どう戦えば良いかな?」
と、ライム。
サクラとスミレは後方で負傷者の治療。ライム、サァベル、ユーリ、リル、ミッキーは俺の護衛をしてもらう。
ミスリルゴーレムを仲間にする為に、敵中突破をしなければいけないからな。
キーラと蜂っ子達は直掩と、セージュやギルマスとの連絡を務めてもらおう。
まぁ、そんな感じで指示を与えた。
「総員集合!!戦闘開始だ!!」
指示を与え終わった頃に、ギルマスの声が響き渡る。すぐに全員がギルマスの前に集まった。
ギルマスは今回の攻撃で、ゴーレム討伐は終了だと語った。理由は最強の戦力であるセージュが参加して、倒せないなら鉱山奪還は無理だと判断したからだ。
攻撃してダメだと思えば、即座に撤退を指示するが、いけると判断した時はゴーレムを全部破壊し、ゴーレム発生の原因、若しくは黒幕を叩き潰すまで、休み無しで攻撃する。
休み無しで攻撃しろと言われて「マジかよ!?」なんて悲鳴をあげてる奴もいたが、そんな奴らを見てギルマスはニンマリと笑った。
「安心しろ。死んだら、いくらでも休憩できるぞ。あるいは敵を全部叩き潰した後ならな」
冒険者達がギルマスの言葉に笑った。
これから激戦が始まる、その直前のハイな状態だからこその笑いなのかもしれない。戦いに参加する者達の戦闘モードにスイッチが入った瞬間を見たのかもしれない。
「魔術師は範囲魔法の詠唱を開始! それが終わったら突撃だ! 遅れるんじゃねーぞ!!」
「おう!!」
ギルマスの声に戦士達が応える。こういう時は野郎共の声が頼もしく感じるな。だからって仲間にする気はない。
俺は美少女と共にあるのだ。
冒険者達の後方から一斉に妖精達が空に上がっていくのが見える。ジャイアントキラービーの討伐時は、数倍の敵を相手に負けなかったのを知っている。
「どきなさーい。魔法攻撃に巻き込まれたくないなら、今すぐにどきなさーい!」
リナが叫んでる。
魔法か何かで、音量を上げてるのだろうか?
こちらにまで、はっきりと聞こえてくる。
「詠唱が終わった奴から、撃ちまくれ!」
ギルマスの合図と共に、火、水、風、土、雷といった属性魔法の範囲攻撃が、重なりあってゴーレムを攻撃していく。
ただでさえ強力な魔法が重なるのだから、破壊力も並大抵ではない。ロックゴーレムなどは一瞬で破壊されたし、アイアンゴーレムも破壊されていく。
ただ、疑問なのはゴーレムは、そこにあるだけで全然動かない。
範囲攻撃から少し遅れて、セージュの魔法が発動する。キラービーや巣を粉砕したやつだ。魔法は一直線に進み、その進路にあったゴーレムを粉々にした。
「野郎共!! 突撃だ!!」
近接戦闘の得意な冒険者が突撃していく。突撃していく冒険者達が、あるラインを越えた瞬間に、ゴーレムが初めて反応した。
ついに冒険者とゴーレムの激戦が始まったのだ。




