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第四話 中央都市へ向かう

 開拓村から中央都市へ行くのは、非常に恥ずかしかった。何しろ元の世界にいた時はパジャマ姿だったんだ。


 しかも、靴も履いてない。


 開拓村で寝泊まりした屋敷は、冒険者の拠点となる場所だ。何かあるだろうとマリアと探したら使い古した靴を見つけたので借りる事にした。


 これを使ってた冒険者が水虫に悩んだりしてませんように。 


 中央都市へ向かう途中、エリックって奴と出った。マリアが俺を金持ちのバカ坊ちゃんと考えて、中央都市へ該当者がいないか調査に向かわせたんだよ、確か。


 捜索依頼も無いし、冒険者ギルドから、とりあえず連れて来いと命じられたそうだ。


 「元気そうで良かったよ」


 笑顔で話しかけてきたエリックは、スライムに気絶させられる直前に声をかけてきた人物だ。


 「助けてくれて、ありがとう」

 「気にしなくていいよ。町の外は危険だから、互いに助け合うのは当然だよ」


 うん、とても良い奴だった。

 

 マリアと雰囲気が似てると思ってたら、やはり兄妹らしい。マリアはエリックに、俺が異世界人だと教えている。


 兄弟って良いよな。

 俺は一人っ子なので、兄弟姉妹がいる事に憧れてるんだ。

 アース・クロニクル・オンラインで、パートナーキャラを集めたのも、兄弟姉妹に対する憧れがあると思う。


 もちろん、リアルの不甲斐ない俺の代わりに、せめてゲーム内だけでもハーレムをって、気持ちは否定しないが。


 「フェイロン、これ読める?」

 「・・・フェイロン?」


 あぁ!!

 フェイロンって俺か。

 飛田竜司をフィダ・ルージーとか発音されたからフェイロンと名乗ってたの忘れてた。


 ごめんよ。


 ちなみに飛田の飛と、竜司の竜をつなげて中国語っぽい表記にしただけ。


 「悪い、ボンヤリしてた。これを読めば良いのか?」

 「うん、ギルドマスターも異世界人の可能性を疑ってたみたいなんだ。それでこれを渡して読ませろって」


 渡されたのは一枚の紙をプラスチックのケースに納めたものだった。


 「これをチョイスした理由は?」

 「そこまでは聞いてないよ。でも、この透明な板は貴重な物じゃないかな。その板に収めてるんだから、書類も重要な書類なのでは?」


 なるほど。

 

 「じゃあ、読むぞ」

 「頼む」

 「たぬきそば・うどん 600円

  きつねそば・うどん 650円

  天ぷらそば・うどん 900円」

 「ちょっと待った。何を言ってるんだ?」


 エリックの疑問に答えてやるか。


 「これ、飯屋のメニューだよ。料理の汁で汚れないように、紙が破れないように透明な板に入れてるんだ。ちなみに、この透明な板はプラスチックと言って安物だからな」

 「そ、そうか」

 

 なんか、ガッカリしてる?


 「異世界人と証明するのが目的なんだし、それが分かって良かったじゃない」


 マリアがエリックを励ましてる。

 しっかり者の姉妹って良いよね。

 本当に姉妹がいる奴は、鬱陶しいとか口うるさいとか、不平不満を言ってるけどな。


 道中は何度かスライムに出会ったけど、エリックとマリアが瞬殺してたので、大した事は無かった。


 パートナーに出来るか試したかったけれど、止めておいた。

 衣食住が無いのにパートナーに出来てしまったら、養えないもんなぁ。

 

 リアルは世知辛いよ、ホント。


 中央都市ってマリアが言ってたから、どんだけ巨大な都市かと思ったら、人口は5〜6万人程度のようだ。

 モンスターに対抗する為に周囲は城壁と堀に囲まれていて、日本より昔の中国の都市に似てるかもしれない。


 まぁ昔の中国の都市なんて見た事ないけど、三国志とか読んだイメージとかあるじゃんか。


 城壁は高さ10メートルくらいか。堀は幅5メートルくらい。中の水は近くの川から引いてるとエリックが教えてくれた。橋を渡って中に入ると街並みが広がっている。


 冒険者ギルドは町の中央にあった。開拓村にあった建屋より、はるかに大きい。中に入ると冒険者が大勢いて賑やかだ。


 「エリック、マリア。そいつが例の奴か?」


 プロレスラーみたいな体格の男が声をかけてきた。顔には古傷がたくさんあって、如何にも歴戦の古強者といった感じだ。マリアが小声でギルドマスターだと教えてくれる。


 「そうですよ。預かってた、これ。返しますね」

 「おう。これの意味は分かったのか?」

 「食堂のメニューだそうです」

 「マジかよ!?」


 パワーボムを食らって、ダメージを受けた悪役レスラーのような顔で俺を見る。なので、トドメを刺してやった。


 「まごうことなき事実です」

 「そか・・・まぁいい。価値が無いと分かっただけでも、良しとしよう!」


 そう言って悪役レスラーは、俺に握手を求めたので素直に応じる。すっげぇ馬鹿力だった。


 「俺の名前はブルーザー・アルフィスだ。お前には、そのメニューのように異世界から流れてきた物が貴重品か見極めてもらう。いいか?」


 衣服も金も寝る場所も無い俺は即頷く。それを見てギルマスは満足そうに笑った。


 「じゃあ、早速明日から仕事をしてもらうからな。エリック、マリア、御苦労。二人には謝礼を支払うから、忘れずにもらって帰れよ」


 二人が俺に手を振って去るのと入れ替わりに、ギルド職員の女性がやってくる。


 「しばらくぶりの異世界人だ。明日からウチで働いてもらう。今日のところは空いてる部屋に案内してやれ」


 そう言うと、のしのしと出入り口へ歩いていき、そこで殴り合いを始めそうな冒険者の仲裁を始めた。


 頭が吹き飛びそうなパンチで殴りつけて、無理矢理ケンカを止めただけ、なんだけどな。


 「こえーなぁ、俺は絶対に怒らせないぞ」

 「素晴らしい。賢明な判断ですね」


 職員の女性が褒めてくれた。いや子供でも分かる事だよね。


 「今日は疲れたでしょう? ゆっくり休んで、明日からよろしくお願いしますね」


 俺が使う部屋に案内すると、去り際に笑って言ってくれた。わりと綺麗な人だったな。

 

 中はベッドと小さい机がある狭い部屋だ。ネットで見た鉄道の寝台列車の個室みたいな感じか。


 でも、今はこれで満足だ。

 ゆっくり眠るとしよう。


 

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