第二話 リアル
目が覚めた。
なにか変だなと思ったけれど、それよりも夢だったのかと思うと、あまりに残念でならない。
はぁ〜〜〜〜っと、長いため息を吐く。
「夢かぁ、いや、そりゃそうだよな。でも夢かぁ〜」
分かってる。
この世に神様なんていない。
もし、いたって出てこない。
アース・クロニクル・オンラインそっくりの世界で、可愛いパートナーと遊ぶ。絶対にやりたかったよなぁ。
リアルで転移しなくて構わないから。
もう一回、サービス開始してくれたら。
ちょっと贅沢言って良いなら、最新の技術で作り直した感じの、生まれ変わったニューアース・クロニクル・オンラインを遊んでみたい。
まぁ、無理か。
体育座りをして下を見た時に、ようやく違和感の正体に気がついた。自分の部屋にいたのに、何故、床が土なんだ?
しかも、草が生えてるし。自分の体に陽の光が当たってるから、地面に影ができてる。
俺、外で寝てた?
急いで顔を上げると、目の前に野原が広がってる。2〜300メートル先に、かなり大きな岩が地面から顔を出してる。
ここどこよ?
少なくともウチの近所じゃねぇなぁ。
立ち上がって振り返ると、高さ20メートルくらいの丘がある。ちょうど俺は一番下の傾斜が無くなった辺りにいたようだ。
丘を登ろうと歩きだした時、後頭部に何かぶつかった。目の前がチカチカしてる。こんな痛みは社会人になってから久しく無い。
「人がいたのか!? おーい、大丈夫か!?」
声の主は中学生か高校生か。かなり若い男、というか男の子の声だった。
「大丈夫なわけ、ねーだろ!!」
怒鳴りながら振り返って、最初に見たのは目の前に広がる青だった。
次の瞬間
例えるならば、世界最高のバレーボールアタッカーの強烈なスパイクが、顔面に叩き込まれたような衝撃を受けた。
意識が断ち切られて、俺は暗闇の中へ沈んでいったのだった。
目が覚めた。
ベッドから身を起こす。顔が痛い。
室内を見て病院ではなく、誰かの家だと分かった。
「お兄ちゃん、起きてたの?キズは大丈夫?」
ドアを開けて女の子が入ってきた。パンやスープ、肉にチーズなどをベッド脇のテーブルに置いて、「どうぞ」と言ってくれたので遠慮なく口に入れる。
パンは固いが美味い。
スープに浸して食べると、なかなか良い感じ。
肉もチーズも美味かった。
「美味しかったよ。ありがとう」
「どういたしまして」
と女の子は微笑む。
見た感じ、身長は150センチくらいか。胸が大きくて発育がいい。髪の毛は栗色で、長い髪をとりあえずまとめましたとポニーテールにしている。
しかし、この娘は不思議な顔立ちだ。
何と言おうか、日本人と言われたら日本人に見えるし、別の国の人間と言っても納得してしまうような顔だ。
強いて言うならアニメ顔か。髪や目や肌を変えれば違和感無く、その国、その人種に見える。
とても可愛いんだけどね。
「ところで、ここはどこかな?」
「ここはモートスって開拓村。この家は冒険者ギルドが作った屋敷で、低ランク冒険者が利用する拠点だね。私はマリア、レベル12の冒険者」
日本じゃないっぽい。
さっき飯を食った時も食器が木だったもんな。日本ならプラスチックか瀬戸物だよな。そういえば室内の天井灯は、どうなってんだ?
「あ、暗いかな? ライト!」
俺が上を見たのを勘違いしたのか、マリアは指先を天井に向けて呪文、だよなぁ?
を唱えた。
すると先程よりも室内が明るくなった。
「それで今度は私が聞きたいんだけど、君は誰なの?」
俺が天井を見て魔法に驚いてると、マリアは質問してきた。もうここが異世界で間違いないみたいだけど、何と答えたものか。
「君は冒険者じゃないよね。武器は持ってないし、あんな服を着て歩くなんて自殺行為だよ。エリックが君を見つけなかったら、スライムに殺されてたからね?」
ちょっと今、信じられないことを聞いたぞ。
「スライムって、そんなに強いの!?」
「はぁ!? 君、何を言ってんの!?」
あ、ヤバイ。
マリアを怒らせてしまったようだ。




