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S.Z.A―第2課勇者係  作者: 黄金ばっど
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白鳳凰教会

 白鳳凰教会―――

 その成り立ちはLoonがこの世に発現した二十二年前にまで遡る。

 日本はその頃丁度平成が終わり新たな年号大成となった頃だった。

 MEと呼ばれる化け物が現れ、時を同じくしてBHと呼ばれる能力を発現した少年が現れた。

 少年達はその力を使いMEを駆除していった。

 中にはBH同士で戦った者達もいたがそれは初期の段階だけだった。

 正しく状況を理解した大人が勇者組合というなんとも子供が好きそうなNPO法人を立ち上げ、政府管理下の元MEを駆除すると言う組織が出来た。

 今のS.Z.Aの元になる組織だ。

 だか此処に所属したのは全員では無く一部で別の者が作り上げた組織がある。

 その中で最も有名な組織、それが慈善団体白鳳凰教会だ。

 実は日本ではMEを駆除すると懸賞金が政府から貰える仕組みになっており僕達S.Z.Aはその成果と政府からの補助金を頂いて運営されている。


 懸賞金は一般の人でも然るべき所にMEの駆除証明パーツを提出すれば貰える仕組みになっており、一部のフリーのBHが未だ活動しているのもこの制度があるからこそだ。

 ちなみにゴブリン一匹で六万円にもなる。

 ゴブリンなんかはほぼ複数で居ることが多いので5匹程度の群れを2回殲滅することで60万もの収入が得れる。

 但し税金で約半数持って行かれるが。

 世知辛いね個人事業主。


 S.Z.Aはそこら辺は優秀で優遇措置が施行されている。

 普通の企業みたいに勿論ボーナスもあるし、BHとして一戦を退いてからも仕事はあるのだ。


 その点彼ら白鳳凰教会は慈善団体を名乗っているのでどうなっているか非常に興味はある。

 白鳳凰教会は絶対的なカリスマ聖女事、白間陽菜乃しろまひなの率いる団体でありセカンドエイジの勇者本間佑(ほんまたすく)を擁するプロのMEハント集団でもあるのだ。

 そして目の前に居るこの白い鎧を纏った如何にも勇者然とする男こそがセカンドエイジの勇者本間佑である。


「せんぱーーーーーい!先輩先輩!!先輩じゃ無いっすか!!!」


 そう、何故か佑は僕の事を先輩とあがめ奉りよいしょして来るのだ。

 MEの血で緑色に染まった長剣を片手にこっちに駆け寄ってくる佑。

 その様はイケメンが猟奇的な笑顔を浮かべ走ってくようにも見える。


 「ひぃ」っと声を上げなかった自分を褒めたい。

 悲鳴を飲み込み一応挨拶をする。

 知らない仲でも無いしね。


「やぁ、久しぶり」


 周囲を確認すると、付近には耳の無いゴブリンの死体が放置されている。

 1、2、3、4どうやらゴブリンは佑達が殲滅してくれていたようだ。

 

「お久しぶりです!先輩もお元気そうで!」

「う、うん」


 君には負けるけどと言いたくなったが僕は大人なので言わない。

 ちなみに僕達第一世代と呼ばれるファーストエイジは大体年齢が今30~40までで第二世代の佑達は現在20代が殆どだ。

 僕らファーストエイジとは大きく一回り年代が変わる。

 現在第三世代のレンヤ達は10代しか居ない。

 もう二回りも年齢が離れるとどう接して良いか分からない。

 流石にセカンド達はそこそこ社会経験も積みある程度大人としての対応が出来るようになってきている者が多い。

 それにしても佑の様にここまで敬意を表して接してくるのは稀だ。

 なにわともあれ増員が早めに来たことは幸いだ。


「こんなに早く来てくれるとは思わなかったよ。正直助かる。ありがとう」

「いえ、先輩のためなら何処だって直ぐ行きますよ」


 そう言って僕が手を差し出すと、なんの戸惑いも無く佑が手を握り返してくれる。

 そう、佑は熱血な所があってちょっと暑苦しかったりするけど基本良い奴なんだ。

 じゃぁ何が苦手なんだって?


「汚い手で佑様に触らないで下さいません事?」


 そう、このエキセントリックな服装の女性、白間雪しろまゆきが苦手なんだ。


「雪、先輩の手は汚くなんか無いよ。大体いつも雪は――――」


 何故かいつも突っかかってくる雪に、それを制止するタスク。

 お決まりのパターンだ。

 大体一発目の挨拶後に二人の言い合いが始まったりするのだ。

 普段はとても仲の良いパーティだけに原因となる僕はなんとも言いがたい立場に陥る。

 残りの二人の誠也せいやと雄隆《ゆたか》も後ろでまたかとあきれ顔だ。

 ちなみに白間雪は白鳳凰教会の教主、聖女事白間陽菜乃の妹である。

 そして白間家自体が日本を代表する財閥の一つで政界から財界まで幅広く人材を輩出しその事業もまたオールラウンドだ。

 言ってしまえば彼女は其処のお姫様だ。

 我が儘になりがちなのは致し方ないのだろう。

 ただ彼女のヘイトは何故か僕に向きっぱなしだ。

 相変わらずと言えば相変わらずなんだけど、やっぱり居心地が悪い。


「――――君のそういう所が嫌いなんだ!」

「そ、そんな――――」


 あ~あ、やったな。

 雪が佑に好意を寄せているのは明らかなんだけど、佑が雪の性格を許容出来ていないんだよね。

 結構強烈なお嬢様だからなかなか受入れて貰うのは難しいんだろう。

 いつも最終的に佑がキレて雪が落ち込みギスギスするのだ。

 この空気が嫌いなんだ。

 作戦に響かなければ良いんだけど。


「とりあえず、案内しようとおもうんだけど皆アレ上れる?」


 このギスギスした空気から逃れたくて僕は案内を買って出る。

 そして僕が指刺すのは勿論さっき飛び降りた20メートル程ある切り立った崖だ。

 たぶん木々を上手く飛び移れば問題なく上れるだろう。

 皆BHだしこれぐらいは聞かなくても楽勝――――― 


「―――え?」

「出たよ非常識キャラ」

「ムリムリムリムリ」

「流石先輩です!」



 ――――ではないらしい。

 雪には何言ってんだコイツみたいな顔され、誠也には非常識呼ばわり雄隆は最初から諦め発現で佑は羨望の眼差しで僕を見ている。

 取り敢えず僕はスマホアプリを起動してエクスカリバーまでナビゲーションして貰う事にした。

 徒歩での所要時間は16分、勿論高低差は考慮されていない。


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