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S.Z.A―第2課勇者係  作者: 黄金ばっど
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作戦会議 丹雷軒編

「それじゃ始めましょうか――――あ、私ピリ辛雷つけ麺」

「姉さん、ここ餃子も良いよ」

「じゃ餃子も―――あ、匂わない奴で、ええ一人前」

「僕は雷担々麺の20倍、餃子2人前で」

「に、二十倍ってアサヒさん人の食べ物じゃ無いですよそれ」

「ああ、この子ちょっと辛い物とMEに対してはオカシイから―――」

「え?何言ってんだよ夕紙さん、20倍って小学生用ですよ」

「「――――絶対違う」」


 僕達は今丹雷軒に来ている。

 何故かって?そりゃ勿論お腹空いたからだよ。

 ミッション中は大抵レーションを囓りながらが多いからこうやってお店に来れるのは正直嬉しい。

 店員さんに注文をし担々麺がくるまでに簡単な状況確認をしておこうと思う。

 本格的な作戦会議はその後、エクスカリバーですれば良い。

 どうせ姉さんの事だ、2課の動ける人員既に手配してるだろう。


「それで?ソウちゃん所はどうだったの?何だか一大事みたいだけど」

「ん~、取り敢えずMEが1200匹ぐらい居た」

「千っ!」「それで?脅威は」


 夕紙さんはその数に戦いたが、姉さんは恐らく既にOP(オペレーター)から報告を受けていたのだろう。

 特に驚くでもなく、その脅威の度合いが知りたいらしい。


「現地を確認出来てないから――――殆ど推測の域を出ないんだけどいいかな?」

「ええ。勿論よ」

「現状解ってる事は2つあって、一つはさっきも言ったけどMEの存在が山崎山山中で確認されている。言いにくいな山崎山山中って……まぁいいや。それでその数1276だったかな?あと、もう一つは僕がそのMEが固まっている巣を見つけるまでに、山中でMEと遭遇してるんだ。その時食事してたんだけどその食事が20代ほどの女性だったんだ」

「それって―――」


 夕紙さんが声を上げるのを僕が手を上げ牽制する。


「まぁ最後まで聞いてよ夕紙さん。知っていると思うけど、MEにとって、というより此処に生息するME―――ゴブリン種にとって人類の女性は種の繁殖のため必要な道具ツールなんだ」

道具ツールって・・・」


 夕紙さんが非難めいた眼で観てくるが、実際そうなんだから仕方ないじゃ無いか。


「ま、物の言い方よね」

「ごほん、それはともかく―――――大きな問題は、本来ならMEの繁殖に利用されるはずの女性が食料にされてたって事だよね」


 姉さんのフォローにならないフォローは無視して話しを進める。


「どういう事なんですか?」

「恐らく……だよ。恐らくだけど、女性型のMEが産まれた可能性がある」

「そんな…………って?」


 やっぱり夕紙さんは解って無かった。

 夕紙さんとは対象的に、姉さんは神妙な顔で僕の話を聞いている。


「あのね、女性型MEは結構脅威なんだよ」

「どういう事ですか?」

「ん~、女性型MEはまずほぼ産まれないんだ。そして産まれてくるとほぼ必ず災害級ディザスタークラスのMEを産むんだ。そして恐らく今回の女性型MEは女王クィーンだと思う」

「どうしてそう思うの?ソウちゃん」


 いつも思うけどいい加減、ソウちゃんは辞めてくれよ。

 って言いたいが言っても効果は無いから言わない。

 その代りちょっと白けた眼で見ることにしてる。


「・・・まぁ、いいや。今回千以上のMEが動いてないんだよ。同じ場所から。通常ゴブリンが産まれるときは女性の股から産まれてくる訳だけど、女王種の場合そうじゃないかも知れないだろ?」

「何それ?魚みたいに産卵するってでも言うの?」

「そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。ただ分かってる事は千を超えるMEが今か今かと動き出そうとしているって事だよ」


 ドスン―――

 色々と皆思うことはあるだろう。

 だけど取り敢えず一端それは脇に置こう。


「へいお待ちっ!」


 そのかけ声と共に僕の目の前に真っ赤な担々麺が現れた。

 食欲をそそるゴマとニンニク、それに香辛料の香り。

 刺激的な赤いスープに僕の脳内のアレコレがインスパイアされてイヤッホーだぜ!


「ソウちゃん、もうそれ匂いが痛いんだけど・・・」

「私も同意です」


 二人が顔を顰めながら僕の20倍担々麺を見る。

 まだ序の口なんだけどな、コレ。

 ただあんまりレベル高いの食べて作戦中に催すと色々と怖いから今日は控えめなんだ。


「いやいや、こう見えて超美味いんだからコレ、何なら一口食べてみる?」


 これぐらいなら幼児でも食べれるレベルだ。

 姉さんは辛い物が苦手だから夕紙さんに勧めてみる。

 コレを機に同好の士が増えるのは僕としても嬉しい。


「………」


 じっと20倍担々麺を見ている夕紙さん。

 夕紙さんの前には雷ラーメン昔味味玉トッピング、そして姉さんの前にはピリ辛雷つけ麺がそれぞれ配膳されている。

 ちなみに餃子はまだ来ていない。


「伸びちゃうから、食べないなら僕食べるよ」

「いえ、折角なので一口頂きます」

「案外チャレンジャーなのね、あなた」


 もの凄い真剣な眼で夕紙さんが僕を見る。

 意を決する、とはこう言う表情のことを言うんだなと僕はこの時思った。


 ごくり。


 夕紙さんが唾を飲み込む。


「頂きます―――――」

「――――どうぞ」


 ずるずるっ!


 勢いよく麺を啜る夕紙さん。

 こないだは啜れないんですよねとか言ってたのはどうやらネコを被っていたらしい。

 もぐもぐと可愛らしく咀嚼する姿はなんというか結構可愛い。

 ぴたりと急に夕紙さんの動きが止まる。

 その見事な停止っぷりは、そこだけ時間が止ったかと思う程だ。

 みるみるうちに夕紙さんの顔が真っ赤に変色していくと、だらだらと急激に汗をかき始め、その直後かっと眼を見開いた。


「$%&!#`@*/!!!!!」


 そして両手で口を押さえ、のたうち回り出した。

 夕紙さんの名誉の為に一応言っておくが、僕達の座るこの席は座敷だ。

 タイトスカートがずり上がり息も絶え絶えな、何とも言えない扇情的な姿になってしまった夕紙さん。

 その姿に、もし此処に姉さんが居なければ何かしらワンチャン合ったんじゃないかと想像してしまう。

 チラリと見えた太股の奥、夕紙さんの花園は飲み込んだスープと同じ刺激的な赤らしい。


 そして、どうやら同好の士は増えそうに無いみたいだ。




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