それスキル制にする意味ある?
ファンタジー系で魔法だとか特殊技能とか存在させるとき、なろうではゲームみたいなスキル制って多いよね。炎魔法レベル1とか、剣術レベル1とか、鑑定レベル1とか。
何でスキル制にしてるんだろうね、あれ。うん、”何で”? 理由があるにだろうか?
いや、ホントは理由が欲しいわけじゃないんだけどさ、”意味”が欲しいのね。”意味”ってつまり”価値”よ。”価値”ってつまり”面白さ”よ。面白い? それ。
そもそもスキル制がなぜゲームで採用されてるかって考えてるのかなって思う訳よ。ゲームでは何でも数字で表現するよね、ゲームとして成立させるために。だって上手い下手っていうのを現実通りに再現できるほどの情報は処理できない訳じゃない。現実をまるごとシミュレーションとか物理的に無理があるし、その意味も薄いし。
スキル制って例えば剣術の習熟度を数値化してゲーム性に結びつけるためのデフォルメだってことは理解できるよね。剣術スキルのレベルが高いと装備できる剣のグレードが上がったり、何かしらバフがかかったりするように。現実で言えば、日本刀と銃剣は全く違うし、剣術として一纏めになんてしようがない。
あえて纏めて剣術スキルが強ければどっちも上手くなるって設定してる小説もあるっていうか、大体そんな感じだと思うんだけど、道理としておかしいという事実は解決してない。道理って大前提で、それがおかしいと全部台無しになると思うんだけど、なぜか見ないようにしている作者が多い気がする。
だって剣術スキルが強いから剣術が上手いんじゃないよね。剣術が上手いから剣術スキルという枠組みで高評価してるんだ。逆転したら道理が通らない。じゃあ剣術スキルの運用の上手さは剣術スキル運用スキルになるの? 馬鹿げてるよね。剣術スキル運用スキル運用スキルとか無限に続きそう。
ゲームでいうところのゲーム外スキルってやつ。ゲーム上の数値化された”スキル”ではない、プレイヤーの純粋な”操作技術”のことね。同じ次元で同居は不可能っていうのは分かると思う。早い話、この二つを作品内で同次元に存在させないで欲しい。これだけで致命的矛盾となって世界が壊れる。
何より、魔法スキルがハイレベルだから強力な魔法が使えるって、「何が”だから”なの?」となるんだよね。魔法スキルのレベルがいくつかなんて、単に数字が幾つかって話でしかない。何も説明できてない。数字は単に数字でしかないんだ。読者としてはね。
魔法スキルのレベルがいくつだと何ができるって基準が読者に共有できてないのも納得いかない理由だろうね。
これはそもそも論になるんだけど、小説世界って現実的な道理の上に成り立つ一つの世界だから、スキル制を導入する意味がそもそもないっていう当然の指摘もある。そもそもゲーム世界のキャラクターたちはスキル制なんて意識ないはずだよね。単に現実世界の我らが数値管理するためのデフォルメな訳だから。
じゃあ何でスキル制を導入してるんだろうか。単にそういうものだと作者が思考放棄、設定放棄してるだけなんだろうなっていうのが透けて見えて、感情移入できなくなるんだよなあ。
勿論、設定次第で言い訳は立つ。舞台があくまでゲームそのものである場合や、ゲームが現実に変化した場合だ。
舞台がゲームそのものである場合っていうのは、ゲーム世界の中っていう意味じゃないぞ。現実だろうと仮想現実だろうと、やっていることがゲームである場合のことだ。つまり現実の法則はきちんと存在した上で、ルールとシステムがある環境のことね。魔法レベル高い人には強い魔法を使わせてあげるよっていうシステムを設定したっていうだけ。本質的にゲーム。
ゲームが現実に変化した場合はそのままだね。ゲームである理由は別にない。単にスーパーパワーをゲームの設定を参考に発揮できるようにしたよっていうだけだから、本質的にはただのスーパーパワーだよ。ゲーム自体は関係ないからセーフ。
まあ、スキル制があってもなくても、そういう世界なんだっていう設定には変わりない。ただ、スキル制があるということは、そういう”システム”が存在するということになるってことだけ意識してほしいんだ。システム上の強さで粋がるのって正直ダサくない? 技術が上手いんじゃなくて、単にステータスが高いだけ。そういう強さって、単に出力高いだけで、当人が強い訳じゃないよなって。白々しく映ってしまうのは自分だけだろうか。
結局言いたいことはここに集約されるんだ。
魔法が上手いなら、普通に魔法が上手いでいいじゃない。スキル制の意味はない。
鑑定レベル1とか意味不明では? 鑑定って観察力と知識によって行う行為だ。観察力も知識も偏りがあるから、分野によって分かることは違う。レベルとは一体……。剣術と同じく道理的に矛盾する。
どうしてもスキルっぽいのが欲しいなら、神霊存在によって補佐される度合いっていうことにするといいかもしれない。鑑定スキルなんてナンセンスな名前じゃなく、あくまで本人以外の存在の助力を得ているということにすれば、違和感は和らぐ。神の目の力に目覚めると、物事の本質に気付けるとか、隠されたものを見付けられるとか、その方がファンタジーっぽい。
あくまでレベルは実際の出力に対する評価、あるいはカテゴライズという形を崩さないように。階級がいくつだから出力がいくつってする場合は、「そういうシステムの上にある」という前提を忘れないで欲しい。システム内か、システム外かという前提を理解した上で、書き始めてね。