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このトイレのない世界で 2  作者: 山村 草
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19.エピローグ


 あれから半年経った。


 僕は相変わらず忙しい日々を送っている。公衆トイレの建設が一段落して今度は家庭用のトイレを作り始めた。と言ってもそんな事を出来るのは富裕層に限られるのでまだ数軒に設置した程度である。

 僕らの生活も大きく変わりはない。変わったと言えばイーレが伸びた髪を束ねるようになった事くらいだ。エアリィは毎日仕事で自室に引き篭もっているし、ティレットは毎日とは言わないが昼間から酒を飲んでいる。ブチも元気だ。洋子さんも相変わらず。僕はそんな平穏な生活を享受している。


 忙しい合間をみて僕はレンサに通っている。もちろん洋式便器を作るためだ。これが思ったよりも難航している。なにせ洋式便器となるとこれまでのように前から後ろに水を流すわけには行かない。洋式便器は楕円形の穴の縁から水が出て内部を洗うと同時に排泄物を流すのである。同じ物を作ろうとしたら便器内部に水路を作る必要がある。これが大変なのである。下水道へ流れるまでの構造も問題だ。考える事は山のようにある。

 そんなわけで猫六さんと六代目さんと一緒に試行錯誤の日々が続いている。だが僕らはそれを楽しんでいた。

 いつか完成する洋式便器を、そしてその先にある温水洗浄機付き便座のあるトイレを夢見て。


「室長?いませんか?」

 外から受付のお姉さんの声がする。部屋の中には僕一人しかいない。

「なんだいるじゃない。いるなら返事してよね」

「って、僕の事ですか」

「もう、いい加減慣れてよね。お客さん来てるわよ」

「あ、はい。今行きます」

 書類をまとめて部屋を出る。今日も忙しくなりそうだった。


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