後日談
楽曲『いつかお嬢様が』の録音が終わった後のメンバー四人は、打ち上げがてら西洋喫茶【Q】で会食中。
詠「ふぇぇぇ……。コード、全然使わなかった……。練習、あんなに指痛かったのに……全然使わなかった……。うぅぅ……泣きたいよぅ……」
は「でも、上手だったよ。ちゃんと出てると思う。練習の成果」
詠「ほんと……? よかったぁ……!」
祀「うんうん。基礎は大事よ~」
水「……っ」
は「ままセンパイは、さすがの貫禄だった。部活でアンサンブルするのとレコーディングじゃ訳違うから、緊張して全然できないのが普通なのに。緊張とかしないの」
祀「うふふふっ。ありがと~♪ 全然~。本番はやっぱり緊張してたよ~? 私も初めてだから~。でも、楽しかった~♪」
詠「うん。楽しかった」
は「ふふん! わたしのおかげに他ならない!」
祀「あははははっ。はゆちゃん嬉しそ~」
水「……っ」
詠「……?」
祀(あら、はゆちゃん待ちなのね、水月ちゃん。可愛い~♪)
水「ご、ごほんっ! みんな、適当にパスタでいいよな? あたしが頼んでやるから、ほら、さっさと選んで」
は「え、パスタ? ラーメンがいいー」
水「喫茶店だっつの!!」
祀「私はぁ……、うどん~♪」
水「喫、茶、店っ!」
詠「じゃあ……」
水「えっ」
西洋喫茶【Q】は、洋菓子店がメインのお店だ。
しかし、マスターの根性で何とかなったらしく、暫くすると、頼んだものが運ばれてきた。
はゆの元には塩ラーメンが、祀の元には月見うどんが、詠の元にはエビチリが、水月の元にはたらこスパゲッティが。
は「美味」
祀「うんうん! 美味~♪」
詠「美味……」
水「ビミってなんだよ……」
祀「ふふふっ。でも、ほんとだよ~♪」
詠「うん。美味しい」
は「あの某チェーン店より、全然美味しい」
水「褒め方考えろよっ」
は「けど、水月はなんでこんな場所知ってたんだ?」
水「あたしにはお洒落な店なんか似合わねぇって顔してやがるな」
は「ん?」
水「なんか腹立つ……。ま、いいけど。前、姉ちゃんと来て知ったんだ。そん時はパスタとチョコレートコーヒー頼んだんだけど、すごく美……美味しかったんだよ。スタジオ【Love it】からそんなに距離無いし、そんでってわけ」
祀「あっ。お姉さんいるんだ~」
は「絶対言うと思った」
詠「うん」
祀「だって気になるんだもん~。年は幾つ? 学校はどこ? 名前は? どんな感じの人? 写真とかない~? 可愛い系? 美人系? 水月ちゃんがこっち寄りだから……美人系かな~? どうどう? どんな感じ?」
水「先輩、興奮し過ぎですってば」
祀「ごめんごめん。ついね~」
水「いいですけど、別に……」
は「わたしはあんまり興味ない。ズルルル……ッ」
水「察するわ。そんだけ熱心に麺啜ってりゃ」
祀「それで~、それで~」
水「あ、えっと。学校、一緒ですよ」
祀「えっ、ほんとっ!? 何年生?」
水「二年生です」
祀「一緒だ~! 名前は~?」
水「葉月です。藤森葉月」
祀「葉月ちゃんか~」
水「写真は無いですけど、ラインのホームにプリクラ的なやつ載せてましたね。それでよければ……はい、どうぞ」
祀「あ~、なるほどね~。可愛い系もちょっと入ってる感じだね~」
は「隣に居る人、誰これ」
水「知らん。けど、この前、家に遊びに来てたの見たし、ただの友達じゃないの」
は「プリクラとか意味わからん。それを載せるやつもよくわからん」
詠「撮ったらわかる、かも……?」
は「じゃあ、詠。明日取りに行こう」
詠「えっ、いいのっ?」
は「うん。興味湧いた」
詠(明日何着て行こ……あっ。普通に学校だぁ……)
水「……つーか、あたしの姉はもういいのか……」
祀「あ、ごめんね~。はい、スマホ返す~。お姉さん、可愛いよね~」
水(喫茶店の話はもういいんだな……)
祀「隣に居た人もすごく可愛い~」
水「はははは……。それで先輩。面識はありました?」
祀「うん。なんていうか、二人とも同じクラス~♪」
水「えっ。気付かなかったんですか?」
祀「わかんなかったよ~。葉月ちゃんって、水月ちゃんのお姉さんだったのか~。それは知らなんだ~」
は「全然似てないせいだな。側らはこんなに髪とか染めてるし」
水「う、うるさいわっ……!」
祀「うふふふっ。水月ちゃん。似合ってるよ~」
水(や、やりづらっ!!)
は「ま、いいと思う。したいようにするのが。枠があるって知ってて、それを破るのって、勇気要るし。だからもっと、アドリブのとこ自由にやっていいと思うよ。折角、すごく綺麗なんだしさ。水月のビート」
水「んなっ……! あ、ほら、麺、伸びちまうぞ!」
祀(うふふふふふっ。照れてる照れてる。可愛いなぁ~、二人とも♪)
その後、皆でチョコレートコーヒーを飲んで帰りました。
めでたしめでたし。