第8話 脱出
俺がこの世界に来て3ヶ月が経とうとしていた。
…改めて考えてみると、ちょっと長くね?
よくあるラノベだと、半日ほどで町に入ってるよ?
3ヶ月あったらハーレム作っちゃってるよ?
「森の生活」とかいう題名で、川のほとりでの生活を書いた本でも出せちゃうレベルじゃね?
もしかしたらこの世界でベストセラーになるかもしれないよ?
いや…やっぱ無理かな?ゴキブリとか食べた話聞きたい?
バッタの食レポとか誰か読んでくれる?
う〜ん、やっぱ無理だな。
まぁ、なんでこんなことを考えているのかというと、俺にはお金がなかったからだ。
お金が欲しいなぁ〜なんて思ってたら、変なことを考えてしまっていただけだ。
よくあるよね?
それで、なんでお金が必要なのかというと、俺たちの服がヤバイからだ。
俺たちは今、森の縁にいる。
ようやく森から抜け出し、町や村を探そうとしたのだが、自分たちの格好を見て森を出ることを躊躇していた。
まずは俺の格好。
汚い。
洗濯も碌に出来なかったし、魔物との戦闘でボロボロ。おまけにバーゲストの口の匂いがいくら擦っても落とせない。
どこから見ても嗅いでも、不審者だ。
次にティア。
どこから見ても、野生児だ。
まず服は俺が装備の下に着ていたシャツだけだ。
それをワンピースみたいにして着ている。
ところどころ花や葉っぱや虫の抜け殻を付けてお洒落をしている。
靴は皮と葉っぱで作ったもので、かなり不恰好だ。
2人とも人前に出られる格好じゃない。
…もう森に住んじゃおうかな?
こんな事を考えていてもお金が降ってくるわけでもないし、どうしたって森からは出ないといけない。
もっと建設的に考えよう。
魔物の素材を持って行くとか?
ウルフの毛皮とか持って行ったらすぐ売れるのかな?
でも綺麗に剥ぎ取れないし、血とか脂でベトベトなのを鞄に入れたくないし…。
全部持って行くのが簡単だけど、ウルフくらい大きいと鞄に入らないから無理だし…。
俺の持つアイテムボックスは、異次元に繋がってたり、時間が止まってたりするわけではない。
中に入れた物の体積と質量を小さくしてくれるもので、あくまで基本は鞄だ。
だから水を入れたら漏れてくるし、鞄の口より大きい物は入らない。
手を突っ込むと手も小さくなるのか、中の物は普通に触われる。
入る量はかなりのものだが無限ではない。
まぁ、これだけでもすごい便利だから文句はない。
いろいろ考えてみたけど段々面倒臭くなってきた。
何かを持って行ってお金に換えて服を買うのも、お金になる物を調べてから、持って行ってお金に換えて服を買うのも、どちらもそんなに違いはない。
俺は“今”服が欲しい。
叶うなら誰かに見られる前に服が欲しい!
お金は手段であって目的ではない。
それにお金があっても、すぐに補導でもされたら意味がない。
よし、いったんお金と服のことは忘れよう。
まず、補導されないことが重要。
だから、職務質問されても誤魔化せる、うまい言い訳があればいいんじゃないか?
言い訳か〜。
「ティア、ちょっと相談しよう。」
情報を共有している方が都合がいいだろうと思いティアを呼ぶ。
「俺たちは兄妹で、村を魔物に襲われて着の身着のまま逃げ出してきたっていう設定な。
だからこの辺の事もよく知らないし、服もボロボロだし、臭いし、お金もないし、とにかく臭い。
もし誰かに訊かれたらそう言うんだぞ?」
ティアはニコニコしている。
分かっているのか、いないのかよく分からない。
「まぁ、大体は俺がなんとかするから問題ないとは思うけど…。
そうだな〜、ちょっとリアリティが欲しいから、俺がこうやって耳を触ったら、悲しそうな顔とか出来るか?」
「…できる」
ティアは胸を張ってそう応えた。
「よし、完璧だな!」
そして俺が手を差し出すと、ティアが握って手を繋ぐ。
「じゃ、出発だ!俺たちの冒険はこれからだ!!」
そうして俺たちは森を出た。
次回はいきなり町から始まります!
今回短めで、説明が多かったので、すぐ投稿します。




