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第63話 少女との再会


ティアより少し大きいくらいの女の子が目に涙を浮かべて泣いていた・・・


え、なに?・・・迷子?


とりあえず俺は怖がらせないためにいったん剣をしまう。

次に・・・次? え、次って何をすればいいんだ!?


近くに誰かいないのかよ!?

いたら全力でその人に押し付けることにやぶさかではないのだが・・・残念ながら誰もいない。


その間も少女は何か訴えるような目をしてこちらを見てくる。


まぁ、俺も泣いている迷子の女の子を見捨てるほど悪人ではない。

だから助けてあげようとは思うのだが、いきなり知らない奴に話しかけられたらビックリさせてしまうかもしれない。

俺がイケメンだったらなんの問題もなかったのだが、最悪誘拐犯扱いも十分あり得る。


さて、どうしたものかと悩んでいると、しかし俺はハタと気づいた。

この子がただの小さな女の子だということに。

そして俺は小さな女の子の扱いには慣れている・・・


ということは・・・

要するにティアを相手にするのと同じように接すればいいわけだ!


ふっふっふ、分かってしまえばどうと言う事はない。


俺はポケットに手を突っ込むと、そこから1枚の素晴らしい秘密兵器(葉っぱ)を取り出した。

ティアに自慢しようと思って、さっき下見している時にゲットしたとても色艶の良い葉っぱだ!

葉っぱマエストロであるこの俺が厳選した、この公園で一番良い葉っぱを見せてあげれば一瞬で心を開いてくれること間違いなしだ!


俺は押し付けがましくならないよう注意しつつ、相手の心を優しく撫でるかのごとくそっと1枚の葉っぱを差し出し、少女のてのひらの上に天空釣り銭落としの要領で丁寧に乗せた。

YES!ロリータ、NO!タッチ。


少女は素晴らしい葉っぱに見惚れてしまったようで、俺が近づいても騒いだりすることもなく、落ち着いているようだった。

きっと、これが植物セラピーで言うところのプラシーボ効果なのだろう。植物がプラントで種がシードだからたぶん合ってる。


葉っぱのおかげで打ち解けることができたので俺は単刀直入に聞いてみた。


「どうしたんだ?この前のお爺さんとはぐれちゃったのか?」


「・・・え?」


俺の問いかけに少女はきょとんとした顔をした。

おそらく迷子の寂しさで途方に暮れているのだろう。


「それとも、お父さんかお母さんとはぐれたのか?

一緒に捜してあげるから心配するなよ」


俺は安心させてあげるために鼻をフガフガさせてニコッと笑った。


「あの・・・私、迷子じゃありません」


え?・・・もしかして俺って何か勘違いしてる!?

いやいや、でも泣いてたじゃん!?外で泣く理由なんて常識で考えて迷子か、あるいはエロ本を机の上に置きっぱなしにしてきたことに気づいた時くらいのもんだろう。

はは~ん!この子、さては意地っ張りだな!


「じゃ、なんでこんな所で泣いてたんだ?」


「貴方には関係ありません!」


「・・・」


おっしゃる通りではあるんだけど、このまま「はい、そうですか」と言って帰るのは寝覚めが悪すぎる。

そして俺はまだ迷子説を捨てたわけではなかったので帰るに帰れない。


「私のことは放っておいてください」


「いや、そんなわけにも・・・」


そこまで言い掛けてこの子が意地っ張りなことを思い出し言葉を変えた。


「えっと、俺もちょっとここで休憩しようかな~って」


「そうですか・・・」


とりあえず理由を付けてこの場に留まったが、その後は完全にノープランだ。

どうすればいいのか分からなかった俺が黙っていると、沈黙の状態に居心地が悪くなったのか、少女の方から話しかけてきた。


「と、ところでこの葉っぱは何ですか?」


「この公園で一番いい葉っぱだよ。とても健康そうで美しいボディーラインだろ?」


「え、それだけですか?」


「うん」


「そうですか・・・

願い事が叶う葉っぱとかだったらよかったのに」


「はは、そんなのがあったら呪われし我が身をまず解放するよ。

ところでもし願いが叶うなら何をお願いするんだ?」


「・・・」


考えているのか答えたくないのか、たぶん後者だと思うが再び俺たちの間に沈黙が訪れた。


「・・・」


そして沈黙を破ったのは、また少女の方だった。


「・・・魔法が使えるようにってお願いします」


「そっか~」


「・・・」


またまた沈黙が訪れる。

しかし、今や俺は焦りを一切感じてはいなかった。


何故なら、相手は沈黙に耐えられない小娘こむすめだからさ!

静寂、気まずさ、孤独・・・それは完全に俺のフィールドだ!


「・・・」


俺は穏やかな気持ちでかぐわしいこの沈黙を楽しんでいると、少女がポツリと言葉を漏らす。


「・・・魔力が制御できなくて、外に出ていくんです」


「ふ~ん」


「・・・」


「・・・」


「いっぱい・・・いっぱい・・・やったけど・・・全然できなくて・・・」


え?え?えぇ!?

ちょっと、ちょっと!泣かないでね?お願いだから泣かないでね!


「お姉じゃん・・・みだいに・・・なりたいのに・・・」


わかった、わかった!だから一旦落ち着こう!な?


「みんな・・・わたぢのごど・・・垂れ・・・って言うし・・・」


うん、うん。その葉っぱで垂れた鼻かんでもいいから泣かないで!


「・・・」


「・・・」


・・・よかった。なんとか持ち直してくれたみたいだ!

ちょっと自分のフィールドだからって油断してたぜ。

ところで少し気になることを言ってたんだがーー


「なぁ、なぁ、その魔力が外に出るってどういうことだ?」


「・・・」


「・・・」


少女はこれに関しては完全にダンマリになってしまったので、俺は腕を突き出して質問を続けた。


「それって、もしかしてこんなのか?」


そう言って、突き出していた腕に無属性の魔力を纏わせた。


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