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第5話 ティアとの生活

こうしてティアとの生活が始まった。


最初は何も分からない手探り状態。

何を食べさせたらいいのか?

何に注意しないといけないのか?

何を教えたらいいのか?

育児経験のない俺には分からないことだらけだった。

生まれてきたのがポ◯モンだったら世界一にしてやれるのに…。


この2週間、俺たちは小川の近くで生活している。

小さい子を危険な森に連れまわすわけにはいかないし、怪我や病気になった時、水場が近くにないとすごく不安だったからだ。


そんなこんなで思い悩み、右往左往した生活を過ごすうちにだんだんとわかってくる。


結論から言うと俺と同じだ。

俺と同じように起き、

俺と同じものを食べ、

俺と同じだけ動き、

俺と同じように寝て、

俺以上に鼻をほじる。


頭も良く言葉もだいぶ喋るようになった。

病気もしないし、怪我をしてもすぐ治る。

はっきり言ってかなりハイスペックだ。


まぁ、考えてみれば精霊王の卵から生まれたんだから精霊なんだろう。ハイスペックなのも納得だ。


この調子なら、ティアを連れて森を放浪しても良さそうだ。

さすがに戦闘はさせられないが、いろいろ教えていくのも悪いことじゃないだろう。


「ティア、明日からここを離れようか」


俺は寝る準備をしているティアに言った。


「…どこ行くの?」


「ずっと遠くかな」


「…わかった」


「じゃ、もう寝るよ。おやすみー」


魔法の灯りを消して寝ようとしたが、ティアが俺の腕に飛びついた。


「…あれやって?」


「またか!ほんと好きだな〜。

じゃ、一緒にやろうか」


それはティアが生まれた夜にやってみたら、とても気に入ったようで、暇を見つけてはやらされていることだ。


「「いない いな〜い」」


そう言うと、2人は両手で顔を隠す。


「「アイ〜〜ン!!」」


言うや否や、突き出した顎に片手を添えて、寄り目をキープ!


ティアは更に耳までピクピク動かしている。


完璧だ!やっぱりティアはハイスペックだ。




「それじゃ、寝るぞ」


今度こそ魔法の灯りを消して横になる。


「…セイ」


ティアは俺のことをセイと呼ぶ。

セイジが呼びにくかったみたいだ。


「…おやすみ」


そうして俺たちはクスクス笑いながら眠りについた。









俺たちの旅は順調だった。

はっきり言って1人のときより順調だった。


ティアは疲れる様子もなく、小さい歩幅ながらちょこちょこと一生懸命ついて来てくれるので進むペースを落とす必要がなかった。


それに加えて魔物との戦闘が激減した。

ティアが敏感に魔物の気配を感じ取り、遭遇しないよう進めたからだ。


嗅覚が鋭く足の速いウルフや、空から襲ってくるガルーダとは何度か戦闘することになったが、ティアが俺の言うことをよく聞いてくれたので、怪我もなく対処することができている。


またティアが魔法を覚えたいと言い出したので、簡単な回復魔法と補助魔法を教えてみるとすぐに使いこなしていた。

レベルアップもしていないのに羨ましい魔力量だ。


魔物の対応も問題ないし、

ティアが魔法を覚えたことで万が一の場合も少しだけ安心できるようになった。

この調子だと、森を抜けて人里に出られるのも時間の問題だな。


そんなことを考えながら緩い上り坂を歩いていた。

坂の上に行き、そこに立つ樹に登って周辺を確認するためだ。


「この上まで行ったら休憩するから頑張れよ」


後ろにいるティアに声を掛ける。


ティアはニコッと笑う。


俺もニコッと笑って、ズボッと足を踏み外す。


ティアがアレッ?って顔をするから、


俺はギャァァァァァァァァーー!って顔をした。



完全に前方不注意。

慣れてきた頃が一番危険とはよく言ったものだ。

あまりにも順調だったため調子に乗っていた。

それに話す相手ができて浮かれていたのだろう。


歩いていた所は緩やかな坂だが、側面が所々急な斜面になっており、運悪く俺はそこから滑り落ちてしまった。


油断していたところで足を踏み外してしまったので、踏ん張ることも出来ずコロコロ転がり斜面の下まで転落してしまった。


幸い軽い打撲以外に怪我はないようで直ぐに立ち上がる。

ティアのいる場所を見上げると30mくらい落ちてしまったようだ。

どうしたものかと考えていると、ティアが「後ろ!」と叫んだ。


その時には既に俺もその圧倒的な気配を感じていた。


…そうだった。

ここは死と暴力が蔓延る世界。

人が生きるには過酷すぎる深い森の中。


その気配は足元から這い上がり、身体を締め付け、首に巻き付く。


見えないものが徐々に首を締め付け、息苦しくなってくる。

乱れそうになる呼吸を必死に抑え、ゆっくりと振り返る。


「…バーゲスト」


高さ3mを超える黒い犬の魔物がそこにいた。



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