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第29話 彼との出逢い〜その2〜

第25話の別視点のお話です。

第25話(武器屋での出会い部分)を少し加筆しています(2018年 07月21日)

私はレイナ。冒険者をやってます。

少し珍しい(ジョブ)をしてますが、いたって普通の女の子です。



私がアーリアの町に戻って来てから2週間が経ちました。

私はいつも通り太陽が顔を出すと同時に起きて、すぐに孤児院へと向かいます。

孤児院には私の友達のユーリがいます。

ユーリは孤児院育ちの優しくて可愛い女の子です。

私はユーリに挨拶すると、一緒に子供達の朝食の準備をします。

孤児院には子供たちが20人程いるので大変です。


朝食の準備ができると子供達を起こしに行きます。

私が小さい子供達の所へ行くと何故か泣き叫ばれてしまうので、私は大きい子を起こしに行きます。


(みんな)が揃ったらご飯を食べます。

私は孤児院のご飯には手をつけず、子供達の面倒を見たり、ユーリとお喋りしたりします。


食事の後は、飼育小屋の(にわとり)を小さい子たちと一緒にお世話します。

その間に支度を済ませた大きい子たちが出て来ると、私はユーリに声をかけて出かけます。

大きい子たちを働く所へ送り届けるためです。


今日は人数がいつもより多かったので時間が掛かってしまいました。


全員を送り届けると、私はいったん家に帰って朝食を取ります。

そして冒険者ギルドに行ってお仕事です。

今日は、昨日済ませたクエストの報告をして、新しい依頼を受けようと思っています。

遅くなったけど、いい依頼が残ってるといいなと思いながら家を出ました。




私はギルドがあまり好きではありません。

だからギルドの前まで来ると、いつもお腹にグッと力を入れてから建物の中に入ります。


私がギルドに入ると、皆がとても暗い目をして私を見てきます。

いつものことです。

悪口を言って嘲笑う人もいます。

これもいつものことです。

だから私は全然平気な顔をして歩きます。


しかし、歩いていると今日はいつもと全然違うものが目に飛び込んで来ました。

私の視界に1人の青年が映ったのです。

それは、なんと彼でした!

私が驚いて見ていると、彼も私を見て目が合いました!

私は咄嗟に目を逸らしますが、驚きのあまり動きがぎこちなくなってしまいました。


私は彼のことが気になりましたが、他の人が私の悪口を言っているのを彼に知られたくないと思ったので、全然平気な顔をしてそのまま歩き、クエストの報告をすると、すぐにギルドを出ました。





ギルドから離れた所で、私は大きな溜息を吐きました。


(…今日、仕事を受けられなかったなぁ)


急に時間が出来てしまい、どうしようかと考えて私は装備を新調しに行くことに決めました。

私が行くのは人気(ひとけ)のない小さなお店です。


店には所狭しと、たくさんの武器が飾られています。

それをじっくり見て回ります。

私が扱える武器はそう多くはありません。

ナイフや小さめの片手剣などの取り回しのよいものだけです。

だから大きくてカッコいい武器には少し憧れてしまいます。

今、目の前にある刀身の分厚い大剣なんかもとてもイイ感じです。

私はそれを手に取り持ってみます。

かなり重かったですが、なんとか持ち上げることができました。

そして自分がそれを振り回して、モンスターと戦っているカッコいい姿を夢想します。


私がニヤニヤして頬を緩ませていると、扉が開きお客さんが入って来ました。

この店はそう多くのお客さんが来るようなところではないため油断していました。

私は慌てて妄想をやめて、扉の方に目を向けました。

するとそこにいたのは、なんと彼でした!


(ど、ど、ど、ど、どうして!?

な、な、な、なんで彼がここにいるのよ!?)


私は驚きのあまり、すぐに顔を前に戻します。

すると今度は自分が持っている大剣が目に映りました。


(キャァァァァァァァァァァァァァァァァ!

な、な、な、なんでこんな大剣持っちゃってるのぉぉぉ!?)


それは女の子が持つようなものでは決してありません。

しかも、ついさっきまでそれを見てニヤニヤしていたところも見られたかもしれません!


(いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

違うの!違うの!私、そんなんじゃ全然ないからぁ〜!)


私は泣きたいのを我慢しながら早急にこの場からの撤退を(こころ)みます。


で、で、でも、ちょっと待って!

今ここからすぐに逃げたら、私は剣を見てニタニタ笑う変態さんだと思われないかしら!?

……ダメ。

それだけは絶対ダメよ!


(ど、ど、ど、どうしよう〜!?)


私は必死に誤魔化す方法を考えます。


(え〜と、え〜と、う〜ん……そ、そうだ!

これはお(つか)い!そうよ、私はお遣いをしていたの!!)


……

………私は…イケると思いました。

だって普通に考えたら、私みたいな何処にでもいる女の子がこんな禍々しい剣を自ら買う訳ありませんから。

「ちょっとお塩が切れたから買いに来ました」みたいな感じでやれば絶対イケるわ!


そうと決まるとすぐ行動です。

私はお塩をひと摘みする感じの顔でデッカい剣を持ち直します。

そして全然怪しく思われないように、孤児院で飼ってる鶏のような軽やかな足取りでカウンターまで移動します。

あとはお金を払うだけなのですが…


(…痛いっ!この出費はかなり痛いです!)


そう思ってしまうと身体がピタリと動かなくなりました。

頭では「払え!」と言ってるのですが、身体がどうしても言う事を聞いてくれません。


私の中では、“乙女の尊厳”と“実利”が激しく闘っています…。

……

………その闘いは殆ど拮抗していました。

しかし背中にビシビシと感じる彼の視線が、ほんの少しだけ乙女の尊厳を後押ししました。


私は勝手に溢れ出そうとする涙を飲み込み、お金を払って店を出ます。

彼とすれ違う瞬間、私は恐る恐る彼の顔を窺いました。


(…どうかな?

変じゃないかな?変じゃないよね!?

お遣いにしか見えないよね?)


彼の表情からは何も読み取ることは出来ませんでしたが、少なくとも笑われたりはされませんでした。



私は店を出ると、重い大剣を引き摺るようにして家まで運びました。


(どうしよ…これ?)


とりあえず、お店でしていたのと同じように家の壁に立てかけてみました。

お店ではあんなにカッコよく見えた剣は、生活感のある私の部屋では物凄く場違い感が漂っていました…orz



後日、ユーリに怒られた私は2人で剣を返しに行ったのでした…


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