表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/84

第19話 〜あるギルド嬢の業務記録 1〜

私はサーシャ。

アーリアの町の冒険者ギルドで受付をやってます。

今日も私はトレードマークのオレンジ髪を揺らし、作り笑顔で冒険者の皆さまのお相手をさせて頂いてます。


「ね〜ね〜、サーシャちゃん。

今日デカイ仕事が終わって飲みに行くんだけどさぁ、サーシャちゃんも一緒に行かない?愉しませてあげるよ?」


軽薄な冒険者が絡んでくるのは日常茶飯事です。

こういうのを相手にするのは凄く面倒ですが、それでも私は作り笑顔で丁重にお断りします。


(デカイ仕事って、城壁の上から周囲を見回るだけでしょうが!)と思いますが、そんな事はおくびにも出しません。


こういうのが何度も続くとイライラします。

呑気に午前中から酒を飲んでる人を見ると腹が立ちます!

こっちは前髪を切り過ぎて落ち込んでるけど頑張って働いているのに!




お昼休憩の時に、私の話を聞いてくれた同僚が慰めてくれました。


「でも、もし言い寄ってくるのが、誠実で、イケメンで、細マッチョのBランク以上の冒険者だったら、私ソッコーOKしちゃうんだけどな〜」


同僚のエリィがお弁当をつつきながら言います。


「アハハ〜、そんなのこの町にいるわけないじゃん!

でも、王都にはかっこいい冒険者が多いって言ってたよ〜?」


「うそっ!?それだれ情報?」


「この前行った合コンで、王都勤務してた子が教えてくれた〜」


マリアンナはまた合コンに行ってたらしい。


「いいな〜、私も王都に行きたいな〜」


「あなたたち、冒険者なんてダメに決まってるでしょ!」


先輩のミサさんが話に入りました。


「冒険者なんて不安定で粗暴な人と結婚したら、絶対後悔するわよ」


「いやいや、結婚じゃないですよ。遊びですよ、遊び!」


「ワタシも結婚は考えてないかな〜、サーシャは?」


「え、わたし!?」


マリアンナが私に振ってきます。


「流れ的にそうでしょ〜」


「私は、結婚したいかな…」


ちょっと恥ずかしいです。


「「マジで〜!?」」


そんな話をしながらご飯を食べます。

その後も時間までお喋りしました。




休憩から戻ってくると、役人さんの対応をします。


さっき私に言い寄って来た冒険者への苦情でした。

私は何度も頭を下げて謝罪します。

(なんで私が怒られて、謝らなきゃいけないのよ!)

これが仕事だと分かっていても、悔しくなります。




しばらくすると、今度はボロボロの服を着た浮浪者みたいな人が、女の子と一緒にギルドに入ってきました。

ささくれ立った私には、その人のオドオド、キョロキョロした態度が非常に不愉快でした。


その人は恐る恐る私に近づいて、冒険者に登録したいと言いました。


(何で猛獣に近づくみたいにしてこっちに来るのよ!)

私はイライラしながら仕事をします。


「それでは、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」


しばらくして用紙を預かり確認していきます。


「お名前は、セイさんですね。

(ジョブ)が…魔法戦士ですか?」


(魔法戦士って何よ!もしかしてからかわれてるのかしら?

も〜、今日こんなのばっかり!)


「すみません、魔法使いなのか戦士なのかはっきりしてもらってよろしいですか?

ギルドではパーティーの斡旋なども行なっておりまして、曖昧にされるとトラブルの原因になる恐れがありますので」


私は丁寧に説明します。


「え、え〜っと、一応細々(こまごま)と幅広くこなせる職なんですが…」


ここまで言ってるのに、この人は意見を変えようとしません。

(絶対バカにしてるっ!)


「分かりました。

では、そのように記入し直させて頂きますが、よろしいですか?」


「え?あ、はい…」


返事を聞くと、私はグリグリと文字を乱暴に消して書き直します。


「それでは魔力登録させて頂きます」


その後はギルドの説明を軽くして早々に登録を終えます。


私は出来上がったギルドカードを差し出しながら、最後の挨拶をします。


「本日は、 冒険者ギルドにご登録して頂き、誠にありがとうございました。

ギルドを代表して、セイ様のご活躍を心よりお祈りさせて頂きます」






登録を終え、カウンターから離れるセイと名乗る新人冒険者は、自分のカードを見ると、何か言いたそうな顔をこちらに向けてきました。


しかし私は威圧を込めた完璧な笑顔で迎え撃ちます。


(ギルド嬢だからって舐められるもんですか!

こういうのは最初が肝心だからね)


そして私の笑顔に打ちのめされた青年は、何も言わずに出て行きました。





この時はスッキリしたいい気分になりましたが、あとで上司に怒られました…


確かにちょっと…いやかなり八つ当たりしてたかもしれません。


今度からは少し優しくしてあげようと思いました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ