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第2話 異世界転移

VRMMO「ブレイド×ファンタジア」

俺が遊んでいたゲームだ。


仮想のゲーム世界に飛び込んで、剣や魔法を習得し、パーティーを組んで強大なモンスターなどの敵に立ち向かう。


性別、年齢、国籍を問わず大多数に遊ばれている人気ゲーム。


幅広い職業・クラスの中からいくつか選び、そのレベルを上げて、技を磨き組み合わせ、自分だけのキャラクターを作り出す。

そうして作り上げたキャラクターで、他のプレイヤーとパーティーを組んで冒険したり、1vs1でプレイヤー同士が戦ったり、あるいはチームを組んでバトルする。そしてそれらにはポイントが割り振られておりプレイヤーランクとして公表されていたりする。



魔法戦士という(ジョブ)で遊び始めた俺は、このゲームにかなりのめり込み、パーティーを組まずともソロで殆どの魔物と魔王軍の四天王のうち3人まで倒すことができるほどやり込んだ。

倒せないのは魔王と四天王の最後の一人とドラゴンロードくらいのものだ。

魔王やドラゴンロードにしても、パーティーを組んで挑めばおそらく倒すことは出来るだろう。

そう、パーティーを組めさえすれば…


しかし俺は孤高の一匹狼。

例え魔王を倒せずとも、プレイヤーランクが中堅止まりでも気にしない。

俺は俺の信じる道を己の技だけで突き進む!


…そうやって騙し騙しやってきましたが、正直言ってつらたんですorz

みんなと楽しくパーティープレイをやりたいです。

誰かパーティーの組み方を俺に教えて下さい。

もっと言うなら友達(フレンド)の作り方を教えて下さい!

もっと、もっと言うなら彼女の作り方も教えて下さい!!


誰か…俺を助けて下さい。

パーティーを組んでるプレイヤーを見ると、バナナトラップという地味な嫌がらせスキルを使ってしまう自分が嫌になります。


最近では、パーティーを組んでいるプレイヤー達にこっそり近づき、そのメンバーのように振舞っていい気分になっている自分が許せません。

誰か…俺を助けて下さい。


言い訳ではありませんが、最初からこんなゲスだったわけではありません。・・・ホントだよ。


頑張ってパーティーに入れてもらい冒険したことだって何度かあります。

だけど・・・

慣れないパーティープレーのせいで、連携がうまくとれず、ミスの連発。そして最後は操作ミスなのか深層心理のせいだったのか、ひとりで戦闘離脱・・・。そのまま呆然と戦闘が終わるのを待っていた俺の前に現れたメンバー達は、オヤジの枕の臭いを嗅いだときみたいな顔をしていた・・・


そんなことがあった後も、めげずに俺は頑張った。

だけど・・・

何て言うか、ちょっと頑張りすぎて目的地に着いた頃には過呼吸みたいになってて、本気で心配されてそのままログアウトすることになりました・・・


もともと人と関わるのが苦手なのは分かっていたけど、ここまで失敗が続くとさすがに心が折れた。

一時期はパーティーを組もうと思っただけで蕁麻疹ができるほど悪化したのだ。

だからソロで遊ぶようになったのだ。



ホントは1人は寂しいけれど、それ以上に「ブレイド×ファンタジア」の世界は楽しかった。

休みの日には寝食も忘れて遊ぶほど好きだった。


だから目を開けた時に映り込んだ世界に俺は歓喜した。

風が頬を撫で、緑と土の濃い匂いが鼻をくすぐる。

眼下には1本1本が見たこともないほどの大きさの木が立ち並ぶ鬱蒼とした森。

その上には不思議な虫が飛び回り、火を噴く鳥がそれを追い回す。

まさにファンタジー!


驚愕と混乱のあまり座り込んでしまっていたが、だんだんと感動の波が押し寄せてくる。


俺は静かにうつ伏せになると、衝動のままに打ち上げられた魚のようにピチピチしてみた。


痛いっ!痛いっ!石が腹に刺さる!


これ以上ピチピチしていられなくなり立ち上がる。

そしてお腹の痛さを噛み締めながら呟く。


「これがリアルだから…」


ここが異世界なのはすぐにわかった。

まず目の前の光景が地球ではありえない。

次に、痛みや匂いを感じれる。これは仮想世界ではありえない。

それらを踏まえた上で最大の理由は、俺がこうして立っていることだ。

外見はゲームのキャクターではなく、黒髪黒目の典型的な日本人な俺自身なのだが、立っている事だけが決定的に現実の俺とは違っているのだ。

というのも、現実の俺は少し前に交通事故に遭い、身体に障害が残ってしまったため自宅で療養生活中だった。

あの光に包まれて意識を手放す寸前、身体をバラバラにされて再構築されていく不思議な感覚がした。

だからここが異世界なのを感覚的にも受け入れられた。


だったら次にやる事は決まっている。

それは異世界を始めるための不思議な呪文


「〜〜〜ステータス!!」


……

………

特に何も起きませんでした。


だよね〜。分かってたよ?


目の前に不思議な画面なんて見えたら、精神科を紹介されちゃうところだからね。

いや、ホントホント。

だって目の前に不思議な画面が出てたら、音ゲーのアプリを取って異世界でアイドルとシャンシャンする事になってたからね。

だから全然がっかりなんてしてないよ?


それから自分の持ち物を確認してみる。

パッと見たところ、初心者の冒険者が装備しそうな、よくわからないけど安っぽそうな物を身に着けていた。


あとは薄くて軽い小さめの鞄を背負っていた。

鞄の中を覗き込んで見るが、シャボン液のように多数の色の光が揺らめいて、何が入っているか分からない。

これはたぶんアイテムボックスだよね?


手を突っ込むのも怖かったので、鞄をひっくり返してみると、中から手のひらに乗るくらいの大きさの卵がひとつ出てきた。


…これはゲームで精霊王というボスを倒した時にドロップした謎アイテムだ。

どの情報サイトにも載ってない謎たまご。

アイテム説明には

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【貴重品】精霊王の卵

【詳細】不明

【備考】ソロで頑張る貴方を見た時、王の目から零れ落ちた涙でできた卵

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


叩き割りたくなった思い出深いアイテムだ。



なんで卵? 非常食かな?

どうせならゲームで装備してた武器とかがよかったな…。


俺はゲームでメイン職として、剣と魔法の両方を使って戦う魔法戦士だった。


サブ職として、素手での格闘と回復スキルを得意とするモンク。


そして特殊職としてサバイバー。

これは戦闘において各パラメーターや武器補正に影響するクラスだ。


この特殊職は、鍛治や錬金術といった生産系職や、釣り師や読書家といった趣味のようなものまで幅広く存在し、戦闘以外でも楽しめるように作られたクラスが多い。



攻撃にも支援にも特化していない、どっち付かずの不遇職と言われた魔法戦士だが、ソロプレイの俺とは相性が良く、殆どの敵を倒せるまでに極めた俺に不遇の2文字は存在しない。


この世界でもちゃんと戦えるのか確認しないといけない。


まずは首や腕足首を回してみる。

ジャンプなど身体を簡単に動かしてみる。

装備していた安っぽいナイフを取り出して振ってみたりもする。


…特に異常はない。

でもそれだけだ。

突如、身体中に力が(みなぎ)るようなこともない。


ちょっと怖いけどナイフで指を傷つけてみた。

…普通に痛い。

血が流れ、しばらくして止まる。

血を拭うと、普通に傷痕が残っている。


…特に異常はない

でもそれだけだ。

傷をつけた指を(くわ)えても、血が甘いシロップに変わっていたりなどもせず、普通に鉄臭い。


次は魔法だ。

集中するために全身の力を抜き、目を閉じる。

魔法を発現させるために魔力を練り上げる。

ゆっくりと目を開け、全身に力を入れ直す。

十分に練られた魔力を明確なイメージに乗せる。

そして両手を前に突き出し、最後に呪文を唱える。


「ファイアーボール!」


……

………

特に何も起きませんでした。

ですよね〜。

だってやってる時に魔力って何?って思ったもん(笑)

練り上げるって何?

お菓子のイメージしか湧かないわ!


ということで、魔法に関しては今のところ煮ても焼いても練っても美味しくなりません。


…大丈夫。まだ冗談を言える余裕はある。

be cool …be cool…


冷静な俺はここが何処なのかを確認するために、目の前の巨木の1本に登ってみることにする。


大人5、6人が手を繋いだくらいの太さの幹に、高さ10mくらいの巨木。樹は意外と登りやすく、なんとか頂上まで登りきり周囲を観察する。


どうやら今いる所はちょっとした高台になっているようで、周囲の様子がよく見えた。

見回してみると、見える範囲には人工建築物などはなく、どこまでいっても巨木の森。

人の姿も声もなく、遠くの方では獣が鳴く声とともに巨木の1本が倒れていく。

そして倒れた樹のあたりからは、首の長い気持ち悪い生き物がちょっとだけ見えた。


焦らず、騒がず、慎重に樹を下りる。

下りきるまでが木登りです。


「…ヤバイ。…どうしよう」


正しく木登りを終えた俺はかなり焦っていた。

だって一般人が猛獣溢れる森にナイフ1本で無事でいられるはずがない。こんなの無理ゲーだ!

パニックを起こした俺は大声で助けを呼んでいた。


「誰か助けて下さ〜い!」


こんなの騒がずにはいられない。

だって無理だもん。


「誰か〜!おと〜さ〜ん!おか〜さ〜ん!」


声は虚しくこだますだけ…

そうだった、お父さんとお母さんは夜まで仕事だった。


「この際、婆ちゃんでもいいから助けてくれー!」


その時、後ろの茂みが動く音がした。


俺はビックリ半分、嬉しさ半分の気持ちで振り返り、音のする方を窺う。


ガサガサ


…ガサガサ


「……ば、婆ちゃん?」


やがて茂みから現れたのは薄汚れた子供のような体に、不釣り合いに大きいサルみたいな顔を持った魔物。


そいつは……、婆ちゃ…ゴブリンだった。



ピチピチするのはホントに私自身がやっていることです。

嬉しい時にベッドに飛び込んでやってますw

生暖かく見守ってやってください。

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