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第18話 アーリアの町


……

………バッ!

俺は勢いよく振り返る。


しかし、そこには誰もいない…。

ただ平原が広がっているだけだ。



俺は釈然としない気持ちを抱え、前に向き直り再び歩みを進める。

お金を貰ってから無性に後ろが気になっていた俺は、この行為を何度も繰り返していた。

けれど、未だドッキリプレートを持った人を見つけることは出来ていなかった。


絶対ドッキリだと思ったんだけどなー。

だって俺的には、パン屋に行ったついでにパンの耳を貰ったら、それが30万円で売れました。っていう感覚だから!?


う〜ん、まぁ一応、草を売って貰ったんだから気にしないでいいのかなぁ?

でもちょっと怖いなぁ〜、などと考えながら俺たちは街道を進んでいる。



途中、森に入って寄り道したり、草採りに行ったり、無駄に警戒したりしていたので、守衛さんに聞いてたよりも倍の時間がかかってしまったが、ようやく遠くの方に大きな城壁が見えてきた。


「おぉ!あれがアーリアの町か!?」




町に近づくと、俺たちはまず城壁に圧倒された。

アーリアの町を全て取り囲んでいるというその城壁は、高さは5m以上もあり、途切れることなく遠くの方まで続き、やがて緩やかなカーブを描いて見えなくなるほど大規模なものだった。

ティアの目線では、地平線まで続いて見えていることだろう。


俺は万里の長城を思い浮かべ、城壁をボケ〜っと見上げながら町へと続く道を進んでいると、いつの間にか街道の終点であるアーリアの町の門に近付いており、ビシッと背筋を伸ばした若い守衛さんに呼び止められた。


「身分証を出しなさい」


若い守衛さんは、クラスの委員長みたいなキリッとした表情で俺たちの手続きに当たってくれる。


「持ってないんですけど、どうしたらいいですか?」


俺の言葉に、若い守衛さんは一瞬怪訝な顔をするが、すぐに元に戻り説明してくれる。


「そっちの子は未成年なので必要ないが、君にはこの腕輪を付けてもらう。

身分証がなくても1週間は滞在できるから、その間に身分証を作ってここへ持ってきなさい。

その時に腕輪は外す。

あと腕輪をつける時、保証金として銀貨1枚必要だからな」


危なかった!

お金がなかったら入れないところだった!


「わかりました。じゃこれ保証金です」


若い守衛さんは、俺が大金を持っていたことに驚いた様子だったが、テキパキと仕事をしてくれた。

俺が腕輪をつけると、若い守衛さんは水晶玉みたいな物を取り出した。


「それじゃ、これに血か魔力を流しなさい」


血!?なんか物騒なものがでてきたな〜


「あの、それってなんですか?」


恐る恐る聞いてみると


「これは魔力を登録するものだ。

魔力を扱えないものは血でも構わない」ということだった。


なるほど〜。

この腕輪はGPS機能でも付いてるのかな?


登録を終えると、俺たちは門を通され、本当にあっさり町に入ることができた。





そして門をくぐり抜けると、そこは異世界だった。


今までも異世界だったけど、それを上回る異世界なのだ!

目の前に広がるファンタジーに俺は感動した!


城壁の中は中世ヨーロッパのような街並み。

石畳の上を馬車が走り、剣や杖を持った冒険者が闊歩する。

ドレスを着たご婦人が店で買い物をし、屋台には肉や果物がいっぱい積まれ、建物と建物の間には洗濯物が干している。

テンプレだ!

だが、それがいい!!


あぁ、ありがとう神様!

俺は両手を組み、人目も気にせずその場に跪く。

そして異世界に連れてきてくれた神様に感謝した。


俺は持てる全ての感謝の言葉を心の中で呟き、生まれ変わったら貴女の腸内細菌で良いから役に立ちたいと願ったところで、ようやく通行の邪魔になっていることに気がついた。

俺は渋々祈りをやめて、教えてもらった冒険者ギルドに向かいながら観光することにした。


武器屋、八百屋、本屋、防具屋、魔法道具屋、散髪屋…

ファンタジーなものから普通のものまで、目に映るもの全部が楽しい。

落ち着いたら一軒一軒入ってみよう!


俺が大興奮してキョロキョロしながら歩いていると、迂闊にも人とぶつかってしまった。


その人は「キャッ!」という可愛らしい悲鳴あげたので、俺は咄嗟に「すみません」と謝って、ぶつかってしまった相手を…見上げた。


…見上げたのだ。

その人は…いや、そいつは…いや、それは筋肉の塊だった。


「わたしは大丈夫よん♡」


それはピチピチの小さいシャツを着て…


「でも、ちゃんと前を向いて歩かないと」


それはパツパツの短いパンツを履いた…


「あ・ぶ・な・い・ぞ♡」


…青ヒゲを生やした変態だった!


俺は自分の見ているものが受け入れられず、声を出すことも出来なかった。

足もガクガク震えた。


…なんだ、この得体の知れない恐怖は!?


俺が驚愕のあまり動けないでいると、やがて化け物はお尻をプリプリ振りながら去って行った。


それは…俺がファンタジー溢れる異世界に来て、受け入れることができなかった最初の出来事(ファンタジー)だった。


ヒュー、ヒュー。

忘れていた呼吸を始める。


…異世界怖い!



俺はもう観光どころではなく、心を落ち着かせることに専念しながら歩いた。

そして、ようやくある程度落ち着いた頃、俺たちは冒険者ギルドに辿り着いた。


俺はギルドの建物を見上げる。

ここは魔物が蔓延る異世界だ。

さっきみたいなことがあるかもしれない。

ワクワクする気持ちもあるけど、気を引き締めていかないと…


そう自分に言い聞かせると、俺は気持ちを新たにして冒険者ギルドの扉をひらいた。



第17話の一部修正しました。内容に変更はありません 2018年 06月27日。

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