鎮めよ賢女、讃えよ勇士 その1
2つのネックレスを首にかけ、再び沿岸部をとぼとぼと歩く。
「(最低3つ手に入れれば勝てる…)」
たまに後ろを振り向き、一人だけでいいと思いながら森の中を見つめる。歩は止めないが、いつ来るかわからない敵を常に警戒しなければならない。
ガサガサッ…
「!」
森の奥から音が聞こえた。暗くてよく見えないが、何かが草をかき分けて動いている。
「誰だ!」
秋雄の口調は男だが、声が女なので違和感がある。目をこらすと、そこには眼鏡をかけた根暗そうな男。アルフレッド・コールマンがいた。
「(やるか…?試合で能力を使わずに終わった奴だ…油断はできない…)」
コールマンを睨みつけると、こちらに気づき、ビクッとした後に時が止まったみたいに動かなくなる。汗をだらだらと流し、怯えている様子。
「あ、あの…」
何か言いたげだか、下を俯き挙動不審だ。どれが攻撃かも分からないこの状況。もしかしたらもう既に攻撃は始まっているのかもしれない。
「協力、しませんか?」
「つまり男にしか効かない能力だから一回戦で負けて、俺に協力を持ちかけてきたと」
キバキのことは知っているらしく話は簡単に進んだ。
「はい…協力と言うよりは援護みたいなのですが…僕はもう優勝なんていいんです。あなたの見事な戦いを見て無理だと気づいたんです…」
やはり見た目からして分かっていたが、内気な奴だった。決して目を合わせようとしていないし、どこか怪しい。
「ああ、いいよ。だけど、俺から1m以上距離を開けること。あと、他の選手の能力を教えてくれ」
いつ裏切るか分からないし、ロッシだと勘違いしてるなら丁度いい、能力を聞いておこう。
「ケニアの人を倒したのなら…知っているので今いるのはインドのマデュア・スダニの『トゥルトゥルダダダ』だけですね…」
「…は?」
天から注がれているような水に打たれ豪快な水飛沫を上げ、これを踏めと言わんばかりに一定の間隔で置かれた岩の足場の上に立ち、滝壺にその2人の男はいた。
「テメー…インドの奴だな?」
今にも人を殺しそうな見た目をした筋肉質な男、イグナツィオ・ロッシは肌の焼けた眉の太い男を見る。
「お前…飛び入り参加とかいうイタリアの野郎か…?」
何故か全身真っ白のスーツを着て、アクセサリーを体のいたるところにジャラジャラと付けている。その男マデュア・スダニは漠然としている。
「お前の国は質問に質問で返すのか?やっぱケツを拭いた手で直に飯を食う国は違うなァ…」
「ケツは左手で飯は右手って人生で一度も聞いたことねェのかよマヌケな気取り屋が…」