金崎秋雄は最強に憧れる その1
「選りすぐりのカスの中で一番のカスが現れたな」
痰を吐きながら嫌みったらしい言い方をする。
秋雄の準備は万端。一番最後に来たことを悔いながらも決意は固まっている。
「テメーの脚を吹っ飛ばしたのはどこのカスだろうな…」
抱えていた咲妃を足元に降ろす。
「……ここまで事が広がると面倒くさい事も面白くなってくる」
「いつまでそう言ってられるかな…」
秋雄は悠然と両手で例の構えをとった。
一撃必中の雷撃。自身の肩へのダメージも相当だが、完璧に当たれば余裕で殺せるであろう。
秋雄は目を細め狙いを定める。
「(残りは3発程…まだ余裕はある)」
バンッ!!――
睨み合っている暇はない。
躊躇することなく雷撃を花岡へと放った。秋雄は体をのけ反らせながらも、雷の行く末を見る。
「ッ!!」
雷撃は花岡には命中しなかった。
少しカクカクと曲がりくねりながらも、花岡へは向かっているが、途中でその道筋は絶たれた。
『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』は既に雷撃を「停止」させていた。
空中で雷は「停止」したのだ。
「(電気まで止められるのかよ!)」
花岡の3つの能力のことは知っていたが、電気までをも止めることができるとは思ってもいなかった。
電気にも対応出来るスピードと精密度。
はてさてどうしたものか。常に『ウォーリアー』の範囲外から花岡を狙い撃つことまでしか考えていなかった。
だが花岡もやることは限られていた。
『ナイト・ヴィジョンズ』は脚をカバーしているため使えない。『ウォーリアー』は閉鎖空間でもない限り範囲外に出られたら打つ手はない。
「…また使えるのは一つだけか」
花岡は迷いなく『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』を秋雄に向かわせた。
蛇のようにうねりながら秋雄へと進むが、秋雄も『ウォーリアー』の範囲外と内の境界線ギリギリを逃げるように走った。
「いけるッ!」
龍はまだ秋雄に追いついていなかっため、チャンスだと思った。
バンッ!!!――
これで何度目かも忘れる程の雷撃と痛み。
白く輝くとした一閃は数十メートル離れていた花岡に命中した。
「…!?」
確かに花岡の胸を貫いたはずだった。
だが花岡は得意気な顔で秋雄をじっと睨んでいた。胸に貫かれた穴なんてものはなく、ただそこに立っていた。
電気は空を切ったのだ。
秋雄の顔は色を失う。
「あのオーストラリア人が教えてくれて助かった…」
秋雄の視界に入る花岡の像がぼんやりとしてくる。
漠然とした像の花岡は壊れたテレビのようにゆらめく。
「蜃気楼…こりぁ使える」
ニヤリと微笑む。
すると秋雄の見ていた花岡がぼんやりとなる。
水面が揺らめくように霞んだと思うとやがて花岡は消えた。
「なッ…!」
突然全く違う位置花岡が現れた。
「最強はこの私ッ!この花岡慶一こそが最強となる資格があるのだァッ!!フフフフハハハハハハハハ!!!!」
秋雄はその笑い声に気をとられ、気づけなかった。
今までずっと秋雄を追っていた『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』は唖然とし驚いた隙を突いた。
「うっ……」
秋雄は地面へと倒れ込んだ。




