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静電気は最強に憧れる  作者: ウエハル
閉会後の決戦
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イマジン・ドラゴンズ その3





「…」

花岡は能面のような無表情で灯りがチカチカと点滅する廊下を歩く。

どこに向かっているのか。手すりも何も無い無駄に幅の広い廊下は暗然たる雰囲気だ。


コツ…コツ…――

空疎な足音のみが響く。



目の前に一つの扉が見えてきたところで、花岡が口を開く。

「足音を揃えればバレないとか…思ってるんじゃあないよな…?」

花岡の後方。

天井に足をつける引き締まった体の男。

灯りに顔が照らされ現れた端整な顔立ちの外国人。

ジェイス・ストライカード。


「私を…殺さないのか?」

視線を変えずにストライカードに向けて話す。

「人殺しは…災いの元だ」


「では、お前を殺そう」


「…させるかよ」


「!」

走る足音が背後から迫る。


ストライカードではない、もう1人の人間。

花岡は瞬時に振り向くと、すぐさま『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』を向かわせる。

同時に走ってくる者の姿も目に入る。

「貴様ァッ!」

花岡に迷いなく走り寄る者、ヴェロニカだ。

花岡は咄嗟に視線を下に向け、ヴェロニカと目を合わさないようにする。

しかしそれが仇となる。

花岡の鳩尾に、正確で容赦ないストライカードの拳の痛みが伝わる。


「アグァッ…!」

花岡少し上方に真っ直ぐ吹っ飛ばさる。

扉にぶつかると思ったその瞬間。扉が急に開いた。

花岡は扉の奥の部屋に入り、近くにあった階段を転がり落ち埃を巻き上げる。

コンクリート打ちっ放しの質素で薄暗い部屋。

所々不規則に光が灯り、インテリアも窓も何も無い不思議な空間。奥に扉が一つだけぽつんとある。



そして転がる花岡の横に蔑するように見つめる男。扉を開けた男だ。

「あぁ…殺し損ねていたな…」

花岡はふと思い出す。

アルフレッド・コールマンはまだ生きていた。

花岡の『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』を喰らう直前に『ナイト・ヴィジョンズ』と交戦していたヴェロニカ達によって奇跡的に死を免れたのであった。


コールマンは既に眼鏡を握っている。

「全く…鬱陶しい奴らだ…」

ゆっくりと花岡は立ち上がろうとする。

ググ…――コールマンが眼鏡を握る拳に力を入れた。

「……」

花岡とコールマンが睨み合う。

ストライカードとヴェロニカも少しずつ近づいてくる。


「死ぬ準備はできているな…?」


破裂する。海胆のように、針鼠のように、突然現れた無数の棘が手をズタズタに裂いた。眼鏡は黒く異様な物体に変形し、棘となってコールマンの拳から腕を内側から無惨に切り刻んでいた。

コールマンは蹲りただ必死に耐える。

それと同時にストライカードが走り出した。

花岡の頭上を軽々と跳び越え、奥の扉へと走っていく。


「ッ!」

花岡はすぐにコールマンの手を裂いた『ナイト・ヴィジョンズ』を移動させ、機関銃へと変形させる。

黒光りするその機関銃は鉛玉を撃ち放ち、弾丸の雨をストライカードへと向かわせた。


「『ノーバディーズ・パーフェクト』は無礙なる能力…」

カランカラン―と音を立て、銃弾は急に角度を変えコンクリートの地面へと静かに落ちた。

銃弾には今にも真っ二つになりそうな大きな凹みがあった。銃弾は「潰されて」いた。

「使い方さえ分かれば誇れる能力だ」

後ろを一切振り向かずに、扉に進む。


「クソがァッ!!!」

憐れな言葉を吐きながら、立ち上がる。

しかしまだ2人残っていた。

「あんたの相手は私達…」

花岡と肩を掴む。目を大きく見開き、気概のあるヴェロニカは花岡を引っ張り、視線を合わせる。

予想どおり花岡は目を瞑ると、後ろに大きく跳び、距離をとった。


すると黒雲が現れ、ゴロゴロ―と雷光を覗かせる。

それは『ウォーリアー』の「天気を操る」能力。

「…!?」

花岡は目を瞑っていても分かる。

雲が疎らで、ほんの少ししか発生していなかった。いつもは部屋一帯を多う程に大きな雲が発生するが、今回はそうはいかなかった。

それは扉へと向かうストライカードの能力『ノーバディーズ・パーフェクト』による精一杯のサポートだった。


「カス共がァ…!」

花岡はそれでも雷を落とした。


ヴェロニカのそばに白い雷光が煌めく。

バンッ!――その至近距離からの雷撃は、以前よりは威力は弱い。だが人を容易に感電させ、殺すには十分な威力だった。



白煙が立ち込める中、ヴェロニカの声が聞こえた。

「ハント、その雷は誰が落としたんたっけ?」


煙には3人の人影が見える。

「く……あァッ…!」

ここにきて初めて聞く声。

気合がなく、おぼろげな弱々しい声だった。

まるで何かに怯えているような。


花岡にはハッキリと見えた。

「アダムズ…ハントォ!!」

雷をまともに受けて大丈夫な人間。

花岡の知っている限りでは秋雄。そしてもう1人、アダムズ・ハントだけであった。


服はボロボロになり、体中にいくつもの火傷があるが、確かに生きていた。そこに立っていたのだ。

蹌踉けて倒れそうなハントをヴェロニカが支える。


「『エヴァネッセンス』の発動条件は…満たしたわ!」

ヴェロニカがハントの言葉を代弁する。

ハントのトラウマを蘇らせる、それも『エヴァネッセンス』の発動条件の一つ。


「調子に乗ってるんじゃあねェェェエーーッ!!!!!」

花岡は厳格で尊厳のある大臣ではなく、ただの一市民としての人間の正体を顕わにした。

慌てる素振りを見せ、すぐに『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』を向かわせる。

『エヴァネッセンス』は電磁波を出すことで相手の脚の自由を剥奪する能力。その電磁波さえ防いでしまえば能力は通らない。

電磁波は見えないため、龍は蛇行した動きでひたすらに電磁波を遮断しようとする。



「電磁波がいつまでも待ってくれていると思うの?」

ヴェロニカは哀れみの目を向ける。

「うッ!」

脚にくる違和感。それは『エヴァネッセンス』による力。

「ハントはよくやってくれたわ…」


「ウォォオーーッ!!!!」

花岡の脚は生まれたての小鹿のようにガタガタと揺れる。

やがて花岡は立つことすらままならなくなる。

汗を滝のように流し、花岡は下唇を噛み締める。

何度も味わった屈辱。もう永遠に味わうことはないと思っていた屈辱は、花岡に恐怖と憤怒を与えた。

こんな奴らに恥をかかされることは更に惨めだった。

ヴェロニカ達は花岡へと近づく。


「仇は必ず討つ!」



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