オン・トップ・オブ・ザ・ワールド その2
「ァァア…!!」
スダニは左手首を抱えて嘆く。隙間から見える左手首は少し茶色く変色し、壊死したようになっている。
「倒さないとダメだろうな…」
キバキは花岡を睨みながら前に少し歩む。
「あの中国のドラゴンのようなものに触るとマズいっぽいですね…」
花岡の後ろには禍々しい姿の龍が浮かんでいる。その龍は動くことなく幽霊のように3人を睨む。
「お前達のような愚者には永久に私の志は分からんだろう…」
「他の二体はもう向かったが…しかしお前達は我が『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』でも十分過ぎるな」
「頂天に君臨するのはこの私だ!」
静止していた龍がうねり、高速で一直線に進む。その狙いはスダニであり、一気にトドメを刺すつもりらしい。
最初にキバキが走り出す。
「(俺の能力がこの中で一番無意味…ここは本体に死に覚悟で突っ込む!)」
花岡にしゃにむに突っ込んでいく。キバキは自分の非力さを補うためのトレーニングや格闘術は欠かさずにやった。体格を生かした脚の速さは選手の中では最も速いであろう。
「ウォォオオオーーーッッ!!!」
拳を振りかざす。
「ダメだ!!避け―――
龍の大口はキバキの頭をすり抜けていく。
コールマンの声はキバキに届かずに、情けなしに過ぎ去っていった。
体が床に崩れ落ちていくのと花岡が無表情で横を通り過ぎていくのは同時だった。キバキは魂が抜かれたように目を瞑り口を閉じ床に伏せている。
「な……」
固まったようにキバキは一切動かない。眠ったように、気を失ったように、それを心の中で認めようとしない。
「おいテメー…死んだわけじゃあねぇよなァ?」
コールマンの気持ちを代弁するようにスダニが言い放つ。もちろんそれにさえキバキは反応せずに床に伏す。
「我が『オン・トップ・オブ・ザ・ワールド』喰らった物体を「停止」させる能力…」
スダニとコールマンの目の前に体格のよい秀麗な体を歩ませる。
「脳が止まればもちろん死に至る…」
不敵に笑む。
「こういうふうになァッ!!」
花岡の後ろから龍が飛び出す。
しかしそう易々とやられる男ではない。
コールマンは自分の眼鏡を乱暴に取ると、我を忘れて床に向かって投げつける。
目をパッと大きく見開くと花岡を視界に捉えた。
眼鏡を割り視界に入った男の睾丸を痛めつける能力。それが彼の「アトミック・スウィング」である。
花岡を見たはずだった。男を見れば3分間地獄のような苦痛を与え、下手すれば死んでしまう。
「え…」
いつまでたっても花岡が悶え苦しむ姿が見えなかった。
そういえば眼鏡が割れた音も聞こえなかった。咄嗟に眼鏡を投げつけたはずの床を凝視する。
そこにはヒビも入らずに床にそっと置かれたように佇む眼鏡があった。
「…!」
偶然か?大会に向けたトレーニングはしてきたはず。眼鏡を割る練習は数え切れないほどにやった。割れないはずがない。
「クソッ!!」
やけくそ気味にコールマンは足元の眼鏡を足で踏み潰した。
不思議な感触。ただの眼鏡のはずが妙に堅い。岩でも足で蹴っているように堅く、ビクともしない。
割れることはなかった。
「停止ってのはいろいろある…今のは眼鏡を床に接する前に停止させた。ヒビ一つ無いごく普通の眼鏡という状態で「停止」された…」
「眼鏡が割れることはない…あとついでにお前の足も少しだけ停止させた…足が義足みたいだろ?」
確かに足が重く、スダニの言っていた冷たい重りが付いているようだという比喩は的を射ている。
「お、おい!何やってる!速く能力を!」
コールマンは助けを求め、後ろにいるはずのスダニに視線を向ける。
非情にもスダニは既に、キバキと同じように倒れていた。
「そんな…」
「諦めろ…私に関わることは死を意味する。住む世界が違うんだよ」
龍はコールマンへと迷うことなく進んでいく。
そしてコールマンの頭を喰らった。
少し適当です




