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静電気は最強に憧れる  作者: ウエハル
閉会後の決戦
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ナイト・ヴィジョンズ その4





「『ナイト・ヴィジョンズ』の能力元…確かロシア人だったか…」

ヴェロニカと龍は睨み合う

「能力が消えた兄は職を失い、仕事柄恨まれやすかったから、これ見よがしに狙われた…」

ヴェロニカはあの優しく頼り甲斐のあった兄を思い出す。しかし兄は突如、能力が消えてからは途端に多くの病を患った。

「名前は確か…ミハイルだったな」

龍。つまり花岡にとっては小さく覚える気にもならない出来事だろう。

だがヴェロニカにとっては忘れることはできない出来事だ。

「…兄は殺された」

ヴェロニカは涙を堪える。兄のあの温かい眼差しはもう数年前に消え去った。

「それで私に復讐を…か。兄がこの能力なのに妹はその馬鹿みたいな能力とは、嘲笑だな」

龍は人間のように溜め息をつく。

それが更にヴェロニカの怒りを大きくした。

「寝言は寝てから言うんだな。お前一人で勝てる希望はゼロだ」



「今はもう一人じゃない」



龍の真上から人影が雨と共に降ってくる。影にに被さった龍は何事かと思い上を見上げると、そこにはなんと7人の男が落ちてきていた。しかし5人は同じ背格好だ。

5人の中の黒ずくめの男の1人は何かを抱えて、横を向くと

「秋雄!」

その合図が聞こえると、秋雄は両手の小指と中指以外の指を畳み、手を合わせる。例の最適なフォームだった。

「あいよ!」

その光景には見覚えがあったが、避けることは叶わなかった。


バンッ!!――と聞き覚えのある破裂するような雷撃の音。浅緋色の一直線に伸びる光は真下にいた龍に手加減なく当たると、龍を四方八方に液体にして吹っ飛ばした。

地面は近づいてくる。

「いってェ~!おいロッシ!」

秋雄は地面に跳ね返った2つの赤い球体を見る。

「うるさい!」

ロッシは手に持っていた灯油缶のように大きく白いボトルの蓋を開ける。中には透明の液体が満タンに入っていた。

4人のロッシは1人のロッシに吸い込まれるように飛び込む。分身が本体に戻って起きる「加速」は、宙に浮かぶ目玉を完全に捉えた。

ボチャッと2つの赤い目玉をその透明の液体の中にすくうように入れると、2人は緊張が解けたように安堵の表情を浮かべ、地面に着地する。


「調子に…乗るなよ…」

蓋を閉めたボトルの中から声が聞こえる。

籠もった声が聞こえたと思った矢先、ロッシの足下から黒い何かが間欠泉のように強く大きく噴き上がった。

「何ッ!?」

その黒い液体はロッシの抱えていたボトルを上空に高く打ち上げると、黒い液体もボトルを追うように液状のまま大きく飛び上がる。2人はすぐに行動した。

「「ウォォオーーッ!!」」

ロッシは一瞬で分身を作り出し、上に跳んだ。直後分身がロッシに吸い込まれるようにロッシに向かって飛んでいく。

「俺は「加速」するッ!!」

ロッシの元に分身が戻った際に発生する「加速」を利用し、ロッシは爆発したように更に飛び上がった。

ボトルまであと少し。というところでロッシの視界の隅に黒い物が映る。

「クソ!」

黒い液体はロッシの加速をものともせずに、ロッシよりも更に速く飛んでいた。一時的な「加速」は一部分たけ見れば強いが、永続的な「高速」には勝てなかったのだ。

そして圧倒的な速さで追い抜かれてしまう。

「(もう一度、分身を創って加速まで持っていく時間はない…!)」

あと少しだというところなのに追い抜かれ、液体は槍のようになりボトルを貫く。隙間から透明の液体が噴き出る。

「もらった…!」

液体は中に侵入してしまった。


「ロッシ!そこどいてろォッ!!!」

秋雄が下で既に構えていた。体を反らし両手を天に掲げる。

バンッ!!!――と三度響く鼓膜が破れそうな音量の雷鳴。白く眩く光るその雷は真っ直ぐにボトルを覆う液体にヒットした。

「肩を痛める投手の気持ちがよく分かるぜ…」

液体は三度、打ち上げ花火のように飛び散り、ボトルが露わになる。

「おいテメー!丸ごと壊してるじゃねぇか!!」

ロッシは風を背中に受け、落下する。

目をこらすとボトルは見事にほとんど抉れ、原形をとどめず、中の透明の液体と目玉が飛び散っていた。

目玉は斜めに落ちていく。

「阿呆め…」

目玉から声が出たとき、いつもより速く黒い液体が集まっていた。その液体は直下で宙に固定され、トランポリンのように目玉を受け止めようとする。

「クソッ!手が届かない!!」

ロッシは必死に手を伸ばすが、目玉に手が届かず、虚しくワックスが手にかかるだけであった。


「お前が掴む必要はねぇよ」

下で秋雄が腰に手を当て呑気に上を眺めていた。

トランポリンのように広がった形の黒い液体に目玉が触れる。受け止めようとしているようだ。

しかし目玉は無視するように広がった黒い液体をツルッとすり抜けた。

「なッ!?」

目玉は瞳孔を小さくする。まさに目が点だ。


「目玉が浸ってた液体は超撥水のワックスだ…そして」

目玉の横。崩れ、壁のなくなった2階の部屋から現れた人影。

「いけ!ヴェロニカ!!」


「ウォォオーーッッ!!!」

2階から跳んだヴェロニカは空中で目玉をキャッチすると、手に掴んだ目玉と目を合わせる。


「目玉が防犯カメラみたいに本体に映像を送っている…正解…?」

ヴェロニカはポケットから何の袋にも入っていない白い粉を取り出した。 

「ジュンハオと「アングザイアティ・インヒビター」に…感謝するわ」


「見てるかな…?兄さん…」

そして「イン・ディスペア」は発動した。




「ワックスに漬けなくても別にいけたんじゃないか?」

肩をトントンと叩きながら、秋雄は体操をする。

「保険よ保険」

ヴェロニカも足を痛そうにしている。

「避雷針の下で雷を溜めるのは名案だったな」

ロッシは鼻が高そうに言う。

「さぁな……さて、咲妃達のもとに急ごう」

雨はいつの間にか止んでおり、湿った感覚が体に纏わり付く。

3人は走り出した。



最後のはちょっとした後付けと言い訳です

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