Two Hearts その2
暴風雨の吹き荒れる真夜中。虫の集る街灯に照らされ、ストライカードは血を流していた。その血は誰のモノでもない、この世にもういない人間のモノなのだから。
大学入学時、ストライカードは19歳。養子の子供は8歳であった。
銀色の艶のある美しい髪に、誰もが認める容姿端麗な姿。まだ9歳ながら中学生に見間違えられるレベルで美しく大人びていた。
そしてその養子に密かに想いを寄せるストライカード。もちろんその想いを伝えることなんて出来なかった。
ある日ストライカードは、バスケットボールチームのチームメイトを家に招いた。その日は週末の深夜で、ストライカードは親が出張や会食で帰ってきていないため仲間達と夜まで飲んだくれていた。
「お前、妹いるんだって?」
「ん、いるけど?」
「今いる?」
「上で寝てるよ」
「可愛いか?」
「そりゃあ…まあ、俺の妹だからな」
「ふーん」
そんな他愛ない会話はすぐに終わったが、仲間達の気持ちは終わってはいなかった。
3人の仲間の内で2人は好奇心に任せて階段を駆け上がり、ストライカードの妹を見物しにいった。もう1人の仲間がストライカードを引き止めている内に。
軋んだ床とゆっくりすぎる速度で歩き、ドアを開けた。
そこにはベッドにぐっすりと寝ている養子の子供。ストライカードの妹がいた。
「お、おい…」
1人の男はもう1人の男に話しかける。
「…はぁ…はぁ…」
もう1人の男は息を荒らげ、その妹をじっと見つめる。感染したようにもう1人も目を見開き息を徐々に荒くしながら、その麗しい妹の姿を目に焼き付ける。
だが、2人はそれだけでは耐えきれなかった。ただの好奇心だったはずのものが、全く違うものになっていた。
二度とないそのチャンスは2人の理性を容赦なく吹っ飛ばした。
「キャァァアーーッッ!!!」
その悲鳴は今でもストライカードの脳裏に焼きついている。
『アァッ!!?アアァァァアーーッッ!!!なっ、なんと!!これは惨いッ!!秋雄選手ッ!相当な高さから地面に打ちつけられたァアーーッ!!!?』
秋雄はピクリとも動かない。まるで死んだかのように、うつ伏せになっている。
「……」
ストライカードは無言でその姿を見つめる。血は出ていないが、さすがにもう再起不能だろう。
『ここで審判が確認に入ります!』
審判は重苦しい足運びで倒れる秋雄へと近づく。体を屈め、体のあちこちに指を当てている。
「意識はある…まだ戦えますか?」
秋雄は目を開き息を荒々しくしている。体を強く打ったため返答が出来ないらしい。
「ギブアップの場合は2回連続で瞬きしてください」
秋雄は限界まで目を見開く。汗を浮かべながらギブアップをしない意思を必死に伝える。
「まだ戦うのですね、分かりました」
そう言うと審判は立ち上がり、襟にある通信機のような物で連絡をとっていた。
その光景はかろうじて秋雄にも見えた。
『秋雄選手!まだ意識はあり戦う意思があるようですッ!!』
体を震わせ秋雄はゾンビのようの立ち上がる。汗を滝の如く流しながら千鳥足で歩く。手で脇腹の辺りを覆い、息を整える。
「はぁ…はぁ、ったく…痛ぇじゃあねぇか…」
口角を上げ、強がりを見せる。
「我慢しないで諦めたほうが楽だぞ。昨日の中国人見ただろ」
秋雄は昨日のジュンハオというストライカードと戦った中国人を思い出す。確か体を打ちつけられ最後には死んだはずだ(もちろん医師の能力で生き返ったけど)。
「…あの中国人と同じ終わり方をさせてやる」
するとストライカードは木の実を口から落とし、三度上に落ちる。少し斜め具合に落ちると、ストライカードはすぐに木の実を落とし秋雄に向かって落下を始めた。
それを易々と受けるはずもなく、秋雄はスプレー缶を構え、炎を放射する。
避ける暇もなくストライカードは炎を足から被るが、重力はストライカードを下に運んだ。
秋雄はフラフラとしながら足を紙一重で避ける。ストライカードは髪を逆立たせ、地面に降り立つ。
「しつこい奴だ…そんなに死にたいか」
その言葉の途中で、秋雄はスプレー缶を構えると
ボォォオッ!――と手加減なく炎を放射する。体全体を包むほどの炎だが、ストライカードは腕で顔を覆い、ものともしない。
「難燃剤だったか…それを俺も使っといたんだが、案外効果があるな」
ストライカードの服や体は全く燃えていない、いつもの冷静なストライカードだった。
だがそんな中秋雄の視線は頭に向いていた。
パチパチッ――
「万国共通だぜ…静電気は髪を逆立たせるんだ」
疲れきった表情だが、余裕なところがどこかあった。
ストライカードの所々にある逆立った髪の毛に、炎が引火していた。ストライカードは腕で顔を覆っても、逆立った髪の毛は覆えなかった。
炎は髪の毛全体に広がっていった。




