ブリング・ミー・トゥー・ライフ その1
『待ちに待ったこの戦いッ!二回戦3戦目!敗者復活戦を這い上がり地獄の底からやってきた不滅の男ォッ!左手より!金崎ィーッ!秋雄ォォオーーーッッ!!!!』
『リベンジを阻止できるかこの男ォッ!!正体不明の恥知らずッ!右手よりッ!!アダムズゥゥゥゥゥウ!!!ハントォォオーーーッッ!!!!』
耳が吹っ飛びそうな程の歓声と期待の声が2人を貫く。鼓動は高鳴り、はち切れんばかりの歓声もそのうち聞こえなくなる。
少しずつ、的確に歩を進め、開始線につま先を合わせる。
「両者位置についてッ!」
今回ばかりは審判の濁った声はどうとも思わない。
睨み合う。ハントはまるでさっきの出来事がなかったかのように強張った顔をしている。
「試合!!」
「始めェェェエエエーーーーッッッ!!!!!」
その合図が言い始めたと同時に2人は力み、駆ける。
『両選手やはり走り出したァアーッ!!』
疾風の如く、腕で空を切り、足で地を抉る。
間が3mまで縮まると、秋雄はスプレー缶を構える。それはハントも、会場にいる誰もが分かっていたことだった。
片手で点火と噴射を両立し、指先に力を入れる。
「ッ!」
ハントは炎を避けるため、秋雄を見上げるようにスライディングをする。
しかし炎は出なかった。
「フェイクか!」
ハントは秋雄の右を通過すると、秋雄は体を回転させながら脚を構える。
立ち上がったばかりのハントにシュッ――と風を切り、キックが顔面めがけて向かってくる。
特異能力を介さない攻撃は反則だが、もちろん本気で当てるつもりはない。
「(これもフェイク!だがこの蹴りにわざと当たれば…)」
ハントは少し顔を上げ傾ける。
「(これは当たる!)」
そう思った矢先、ピタッと秋雄の脚が止まった。いや、止まったと言うよりは障害物に当たっていた。
ハントの視線の左には、スプレー缶が横向きの状態で、噴射口がハントに向けられていた。
「まさかッ…!」
秋雄は膝で噴射ボタンを押し、点火した。
ボォオッ――という何度も聞いた放火の音と共に、ハントのは大きく炎に被われた。
『秋雄選手ッ!ハイキックと見せかけて膝でガスを噴射したァアーーッッ!!』
「ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァアーーーーッッッ!!!!」
ハントは子供のようにジタバタしながら、髪に燃え移った炎を必死に消そうと、パーカーを脱ぎ頭に被せる。すると炎はすぐに消えた。
ハントは頭を振る。
「はぁ…はぁ…このナイロンのパーカーはさ…難燃剤入りだから燃え移りにくいんだよね…ふゥ~」
髪の毛を整えながら、さっきの叫びが無かったかのように冷静沈着に訳の分からない話を話し出す。
その顔は怒っているわけではないが、恨みのようなものが感じられた。
「火とか電気とかその他もろもろ…嫌いなんだ…」
「…」
呆れてはいけない。決して眉をひそめて心のどこでもバカにしてははいけない。
「…なんでだろう?よく分からないな」
常に冷静に冷徹にいかなければならない。こんな中身のスカスカな話にマトモになってはいけないのだ。
2人は再び睨み合う。
ハントが飛び出した。秋雄は迎え撃つ。
ハントは秋雄の右に回ると、一瞬ピタッとその場に止まる。
「…」
ハントの眉間にスプレー缶を向ける。至近距離で2人の間に静寂が留まる。
バッ――とハントは再び秋雄の右に回ったと思うと、秋雄の周囲をグルグルと走り始めた。
「そんなんで呆れると思ったか?」
秋雄はハントにスプレー缶を狙って離さない。
「………そうだ!さっき火とかが嫌いな理由が分からないって言ったけど、あれ、思い出せないだけ」
また唐突に話始めた。
「…」
「僕の父。知ってる?マクロイ・ハントっていうんだがね」
マクロイ・ハント。特異能力が報告されてすぐに特異能力が脳に与える影響。電磁波等を主に研究していた。
「科学者のか…」
「あぁ、知ってるのか。特異能力で…脳に与える影響?だっけ。忘れた」
「何が言いたい…」
「俺の能力…言わなくても分かると思うけど、実験に利用されてたんだ」
「お前のが?」
エヴァネッセンスは確かに脳に直接攻撃する能力なのかもしれない。だが、あの能力を使って実験とかやりづらくないか?
「そう思うだろ?だけど『エヴァネッセンス』の能力は呆れさせるのが条件…だけじゃない。」
「…!」
「かつてのトラウマが完全に蘇った時。俺が本当の恐怖を感じた時…それも発動条件なんだ」




