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静電気は最強に憧れる  作者: ウエハル
開会
16/49

極月のスパイス・ボーイズ その4





「ソーラン節。って知ってるわけないか」

もう一度手を万歳のように上げると、次の振り付けにかかる。


「しはかぁ…いふぇえほー…」

呂律が回らず、何を言っているかわからないが。戸惑う暇はない。口から大量の血を流すキバキをどうも思わず、秋雄は両手を引くと


「オルァアッッ!!!」

両手を張り手のようにしてキバキを押す。キバキは涙を流したまま後ろによろける。


「オラッ!」

再び同じ動作をすると、先程よりも大きく後ろに下がる。

何度も同じ動作を繰り返す。



「テメェキバキッ!なぁにやってんだッ!金払ったんだからちゃんとやりやがれッ!」

こちらに今更気づいたのか、スダニがキレよく踊りながら叫んでくる。だが決してキバキはスダニを見ようとしない。


「へほおォー!ほれのしはがァー!」


「テメーの舌の話なんてどーでもいいんだよォッ!お前はもう負けてんだから俺に協力しやがれッ!」

そんな会話をしている間もキバキは秋雄に力強く押され続ける。


「クソォオーーッ!!!もうひらへぇぞォーッ!」

キバキは自分の血で濡れた右手をやけくそ気味に高く振りかぶる。

この状況でも秋雄は顔色一つを浮かベなかった。秋雄は張り手のような動作を一通り終えると、次の振り付けに入る。

それはさっき以上にアッパーに近い。というよりはウルトラマンが変身したときのように子供っぽく無邪気で無謀なアッパーであったが、それは今のキバキには十分だった。足を強く踏み込み、完全にキバキの顎を真下から捉えた。



「ハイッハイィィイーーッッ!!!」

脳天を貫く痛みがキバキに入る。

ボロボロだったキバキの下を完全に噛み切らせ、勝者が拳を上に掲げるかのごとく偉大で輝いた拳だった。



「アガァァァァァァァァァアグヤァァア!!!!」

この世もものとは思えない悲鳴を上げ、口から大量出血しながら空を見上げ、倒れる。同情するぐらいに痛そうで悲惨だった。

そして地面にキバキの背中がついた瞬間、その焦点の合わない目は一瞬、ほんの一瞬であったが、スダニを視界に入れた。



スダニの『トゥルトゥルダダダ』による踊りたい衝動は何者にも抗えない。痛みとショックで死にそうな状況でも、楽になるよりも、キバキの脳は踊ることを選んだ。



キバキはすぐさま立ち上がると

「ウガァァァァア!!!!!」

目を向けられないほど血だらけの顔を目一杯振り、心配したいぐらいの乱雑で一貫性のない踊りを見せる。



「…」

ピクッ――と、スダニの口角と眉が動く。

目尻を険しく吊り上げ、顔に血管を浮かべ、歯軋りし、拳を握り締める。訳の分からないその憤怒に満ちた表情は烈火の如く燃え上がる。



「おいテメェェエ!!俺の前で馬鹿みてぇな踊りをすんじゃあねェェェエーーーーッッ!!!肥溜めに落ちたドブネズミ以下のクソアフリカ野郎がァアーーッッ!!」

スダニはキバキに向かって即座に走り寄り、その血だらけの顔を殴り抜ける。3mほど吹っ飛んだ後に、キバキは白目を剥き死んだのかもわからない倒れ方をした。



「まったく………ハッ!?」


「お前今…踊りを止めたな…お前が踊りをやめることはつまり…負けるってことだ…」

秋雄とコールマンは真顔でスダニを追い詰める。

「…」

コールマンは腰のバックから眼鏡を取り出し、天高く上げる。


「お、おいッ!待てよッ!金はやるから!いくら欲しいッ!?言え!いくらでもやるからッ!」

スダニは体全体で動揺と焦燥感を表す。無様な姿は下を向いている2人には見えなかった。


「ほら、踊れよ」

怒っているわけではないが、怒りに限りなく近い不思議な感情だった。羞恥心にも近い何かを感じていた。



「フンッ!」

バリンッ――とそれはスダニの心がガラスのように割れる音でもあり、コールマンが地面に叩きつけた眼鏡が割れた音でもあった。コールマンはスダニを睨む。



「オッ…グォォォォオーーーーーーッッッ!!!!ギィヤグォィァァァァァァァァア!!!!!!」

股間を押さえ、さっきのキバキの叫びと同じぐらいの叫びを響かせる。それはスピーカーのリズムに混ざり合い、スダニの最後を陽気に彩るようであった。





『敗者復活戦勝者はァアーッ!!!日本の大和魂を受け継ぐ侍ィィイイーーッ!!!金崎ィィィィイ!!!秋雄ォォォォオオ!!!!』




常に踊っています。ソーラン節やビート・イットの振り付けが分かりづらいと思います。

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