極月のスパイス・ボーイズ その1
「クソッ…ネックレスがねぇ…」
びしょぬれになったロッシの服のポケットを探るも、ネックレスが見つからない。最悪海に飛び込む決意はある。
「コールマンの野郎もこねぇ…」
「げほッ!がはッ!ごはッ…!」
するとロッシが起き上がった。口から水を吐き出し、苦しそうにしている。
「はぁ…はぁ…」
まあ応急処置などはしていなかったから、当然だろう。
「…おいオメー、ネックレスはどこだ」
ロッシに影をかけ、見下しながらスプレー缶を拳銃のようにロッシの頭に向ける。
「ん?ああ…インドの奴に取られたが…」
「はぁぁあ!??」
「なんだ一体…」
「お前っ…そこはお前がインドの奴に勝ってネックレス2つ持ってて俺がお前からネックレス取って敗者復活戦勝利ってオチだろォッ!?」
「ネックレスをかけていなかったからそれぐらい分かるだろ…」
「…」
何も言い返せない。まさかまだ戦わなければならなかったとは、これはしんどい戦いになりそうだ。
「じゃあインドの…スダニってやつはどこなんだ」
溜め息交じりに話す。
「そんなの分かるか。自分で探せ青二才が」
「同い年だろ…」
「いない…コールマンもスダニもいねぇ!!」
空を見上げ、悲願するように叫ぶ。叫んでも誰も現れず、静けさだけが残る。
「疲れたな…休憩するか…」
現在持っているネックレスは3つ。あとスダニさえ倒せばいいのだが、探すのが面倒くさくなったのか、岩に腰を下ろす。
その時だった
ドゥンドゥンドゥドドゥン…ドゥンドゥンドゥドドゥン
「…?」
声や震動ではない、どこかから心臓に直接くるようなリズムが響く。秋雄は座ったばかりなのに立ち上がり、周りを見渡す。
「音楽…?」
その軽快なリズムは絶えることなく聞こえる。一方向から聞こえるわけではない。秋雄の四方八方から聞こえる。
「スダニのやつ…いつのまにかスピーカーを設置しやがったか…」
スダニの能力はコールマンから聞いている。
既にスダニはどこかから秋雄を見ていたらしい。
「出て来い!!」
「ンッンー!ンー!」
リズムを口ずさみながら、ガサガサという音が聞こえる。
「(スダニを見てはいけない…)」
声のする方向から視線を反らし、スダニを見ないようにする。
「そうだよなァ~?見ようとしないよなァ~?」
「なっ…!」
スダニは目の前に現れた、インド映画で見るようなキレッキレのダンスをしながら歩いてきた。そのシュールで異様な姿は少し気持ち悪かった。
「それは~スピーカーから出ている俺の声~↑古典的だなァ~フン~フフン」
腰を曲げ、ぴょんぴょんと軽やかに跳ねながら、秋雄に近づいてくる。
「ヤ、ヤバいッ!」
秋雄はすぐ目を反らすも、その衝動は抑えきれなかった。足を上げ下げし、リズムを取り始める。
「もう遅いなァ~俺の『トゥルトゥルダダダ』からは逃れられない~んだァ~」
「クッ…もう我慢できねェェーーッ!!」
突如秋雄は全身をくねらせながら、スダニには目もくれず踊りはじめる。スダニのダンスとはまたタイプの違う繊細な動きのダンスを見せる。
「ダンスはそいつの性格が出るというがァ~あんたいいねェッ!気に入ったァッ!!」
「なんでだァーッ!?踊りたくないって思っても心の底では踊りてェェーッ!!」
「『トゥルトゥルダダダ』は無敵だァアーーッッ!!!」




