ふるさとへの帰省
なんか久々の投稿です。
生存報告をかねて。
「暑い・・・・・・」
「暑いねぇ」
セミの鳴き声が耳をつんざく。
夏の時期になると決まってけたたましく鳴くあいつらが熱気と相まって不快感が増す。
そんな炎天下、二人の男女は縁側で何をするでもなく隣同士で座って空を見上げている。
「すまんな。まさか誰もいないとは思ってなかった」
「別にぃ。気にしてないよー」
俺は両手を会わせ、隣にいる女の子に謝る。
今日は彼女を家族に紹介しようと帰ってきたのだが、事前に連絡したにも関わらず実家に着いたら誰一人としていなかったのである。
俺の謝罪を彼女は何でもないよと手をヒラヒラさせ、笑顔でそう言った。
こういうときは彼女の寛容な性格に救われる。
「しっかし携帯にかけても繋がらないのはどういうことだよ」
「畑にでも出てるんじゃないかなぁ?」
「常に持ってなきゃ携帯の意味がないだろうに」
「あははは」
家には誰もいなかったが、ここが田舎ゆえか鍵はかけられておらず、すんなり入ることはできたのでよしとしよう。
あのまま炎天下のなか家の前で待ちぼうけでは身体がもたない。
それに、誰もいないのでは家族に紹介もくそもないというわけだ。
「でも、ここはのんびりしてていいねぇ」
「なんもない田舎だけどな」
「だから良いんだよ」
「うん?」
隣を見ると、彼女は(俺が冷蔵庫から勝手に失敬した)麦茶の入ったグラスを手に微笑んでいた。
「わたしは田舎っていうのがないし。だからちょっぴりこういうのって憧れてるんだよね」
「・・・・・・」
彼女の目は少し遠いところを見ている。
たぶん昔のことを・・・・・・独りで過ごしていたときのことでも思い出してしまったのだろうか。
憂いを帯びた彼女の横顔を見て俺は手を伸ばし、頭を優しく撫でてやった。
「? どうしたの急に?」
キョトンとした顔をして小首をかしげる彼女に俺はなおもゆっくりと愛おしく撫で続ける。
「気にすんな、とは言えないけどさ。ここを今日からお前の田舎にしていけば良いんでないか?」
我ながら少しクサかったかなと照れ臭くなって彼女の肩を抱いてこちらに引き寄せた。
彼女もいきなり引き寄せられビクッとさせたが、すぐに俺の体に体重を預けてくれた。
「えへへ。そうだね~」
彼女も少し照れ臭そうにいつものフニャッとした笑顔を浮かべた。
その表情や雰囲気を感じ、俺は肩に置いた手に力を少し込めた。この子を大事にしようと改めて。
「お父さん、もっと詰めて。見えないじゃない」
「こら押すなよ。バレるだろうが」
「あんな美人な彼女連れてくるとか。兄貴、死ねば良いのに」
「そういってる限り、あんたは永遠に氷河期ね」
ーーーーーーいつの間にか帰っており、こっそり覗いていた家族をこのあと、追いかけ回したのは・・・・・・また別のお話。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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