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エピローグ
そして、日常は再び流れ出す。
「ままー!」
雪南がわたしを見つけて大声を上げる。
「お待たせ。帰ろうか」
「きょうも、くろねこさんのまえ、とおる?」
「通るよ」
「あのね、ゆー、あたらしいおうたをうたってあげたいんだ」
雪南はうれしそうに今日あった出来事を話してくれる。
(今年中に、進展するように、闘っていこう)
また逃げ出したくなるときもあるだろうけれど、そのときは思い出そう。
あのひとのつくった、おにぎりの味を。
わたしは雪南の小さくて柔らかな手をしっかりと握りしめる。
「今日は、一緒にご飯をつくろうか?」
「つくるー! なにつくる? ゆー、はんばーぐがいいー!」
雪南は食べたいものを次々と声に出す。
その様子を見ていると、いとおしさで胸がいっぱいになる。
今日は一緒に雪南とおにぎりをにぎろう。
ごはんをつくろう。
そして、皆で、食べるのだ。
ーー親愛なるYの幸福を願って この物語を捧ぐーー