深夜の炎
「ちょ、ちょっと! どういうつもりよ!?」
周囲を照らす光は夜空に浮かぶ月と星々。そして、たった一つの灯のみだった。
少女はその灯からじりじりと後退していくことしかできなかった。
鼻を衝く匂いが、彼女の恐怖をさらに高めていた。
「あんた! 自分が何しようとしてるか分かってんの!?」
「––」
その灯が、揺らめきながら少し少女に近づく。その度に少女も後ずさっていくが、それもすぐに終わってしまう。
「待ちなさい! あたしがあんたに何をしたって言うの!? 何でこんなことするのよ!? あんたは何がしたいのよ!?」
完全に追い込まれ後がなくなった少女は、叫ぶ。
だが、灯は止まらない。
「––」
また少し。
その度に少女の鼓動は早くなり、体の震えも激しさを増していく。匂いもまるで気にならなくなっていた。
「––」
「なにそれ? 意味分かんない。バカなこと言ってないでそれを消して! 今なら冗談だってことにしてあげるから……だから、お願い……」
涙目になって懇願する。もう、それぐらいしかやることができなかった。
「––––」
灯が、少女に向かって飛んだ。ゆっくりと弧を描くそれを、彼女はただ眼で追うことしかできなかった。
そして、次の瞬間
ゴウッという音とともに少女の身体は炎に包まれた。
(やっぱり、この学園は狂っている)
そんな声がどこからか、聞こえてきたような気がした。