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終章

「どわっ!!」


過去から戻った瞬間、壁にぶつかる。レジェンダのマントの中にあった小さな銀河から吹き飛ばされたのだ。

頭を撫でながら羽竜が銀河の方を何気なく見ると、


「うわっ!!。」


蕾斗が飛んで来て、また壁に頭をぶつける。


「イテテ……………蕾斗てめぇ…………」


「きゃあっ!!」


羽竜が蕾斗に文句を言う前に、今度はあかねが飛んで来た。

結果はもちろん、蕾斗にぶつかり、蕾斗がまた羽竜にぶつかる有様だ。


「勘弁してくれよ……」


三回も壁と仲良くなれば、文句を言う気にもなくなるらしい。

いつの間にか、慣れ親しんだ匂いがしてくる。羽竜の部屋の匂いだ。蕾斗にもあかねにとっても懐かしい落ち着く匂い。


「……………帰って来たんだね。」


羽竜にぶつかったまま壁にもたれていた蕾斗が呟いた。


「うん。帰って来た。」


あかねにも実感が湧いて来る。

無事帰って来れた嬉しさと、心残りを置いたまま帰って来てしまった複雑さとが、三人の胸を締め付ける。


「みんな、ちゃんとミドガルズオルム、なんとかしたかなあ。」


「大丈夫だろ。あいつらなら俺達が心配しなくてもなんとかするはずさ。」


蕾斗の不安なんか、羽竜にとってみれば些細な事。

セイラ達を信じているから、不安になる必要は何もない。


「もう会えないんだね………みんなと……」


「…………千年も前の奴らだぜ?会いたくったって会えねーよ。」


淋しさをあらわにするあかねに対して、わざと憎まれ口を叩いて見せるのは、羽竜なりの淋しさの紛らわせ方。

あかねも蕾斗も、それを知ってるから何も言わない。

むしろ、羽竜にそう言ってもらった方が引きずらないで済む。


歴史の教科書にも、有名な博物館なんかにも決して載る事のない歴史を経験して来た。

本当の地球の歴史。隠されたとも違う。人々が記憶から消し去った真実。

嫌な事から逃れる為ではなく、未来に向かって歩いて行く為に忘れなければならない事だったのか……………あるいは、意図的に消されたのか……………本当の真実は誰にもわからない。


「ところで、レジェンダはどうなるんだろ?」


蕾斗の視線は、過去へとのゲートとなっていた銀河を見るが、銀河は音も無く消えて行き、床の上には無造作にレジェンダのマントだけが落ちた。


「元々肉体は持ってなかったし役目を終えたんだ、眠らせてやろうぜ。千年以上も存在し続けて疲れてたと思うしな。」


「そんな事言ってるけど、なんだかんだ言って一番淋しいのは羽竜君なんじゃない?家族でしょ?」


そうやってあかねに言われればぐっと込み上げるものがある。


「ヘン!あんなお化けみたいな奴、いなくなってせいせいするぜ!」


「強がっちゃって。さっきと言ってる事、矛盾してるじゃん。」


「うっせー!」


冷やかす蕾斗の首に腕を回して絡む。いつも以上に……。


「お化けみたいで悪かったな。」


「きゃあっ〜!!!」


男の声とあかねの叫ぶ声を聞いて、蕾斗と二人でそっちを見る。

あかねは顔を覆っている。

そして、声を出した男は………


「「ジョ…………ジョルジュ!!」」


なんと、そこにはジョルジュがいる。羽竜も蕾斗も口をあんぐりと開けたままだ。


「おまえ…………一体何が…………?」


羽竜には何がなんだか理解出来ない。間違いなくジョルジュ・シャリアンだ。


「私にも何がなんだかわからん。気が付けば肉体と共にここにいた。」


「こんの………………………バカヤロウ!!心配かけやがって!!」


気持ちを抑え切れず、蕾斗にしたようにジョルジュの首に腕を回して喜びを現す。


「は、羽竜!やめないか!」


「うるせー!お前には言いたい事がたくさんあるんだよ!」


羽竜の手加減無しの歓迎にいささか参ってしまうが、ジョルジュ自身も嬉しくて無理に解く真似はしない。


「よ〜し、僕も参加するよ!」


いつもは羽竜にやられてばかりの蕾斗も、じゃれ合う二人に飛び付いて揉みくちゃしてやる。


「ちょ………三人共いい加減にして!」


「何怒ってんだよ?」


一人テンションの違うあかねに羽竜も意味がわからない。でも、それもすぐに理由がわかった。


「ジョルジュを見てよ!!信じられない!変態!!!!」


真っ赤に顔を染めてこっちを見ないように手をバタバタさせてる。

何事かと思い羽竜と蕾斗が顔を見合わせ、ジョルジュをまじまじと眺める。そしてようやく、あかねの言ってる意味を理解した。

裸なのだ。何も着てない。生まれたまんまの姿でそこにいる。


「ぷっ!」


「早く言ってよ、吉澤さん!アハハハ!」


吹き出す羽竜につられて蕾斗が笑い、何故かジョルジュも笑う。


「これはレディの前で失礼だったな。」


「何済ましてんのよ!早くなんか巻きなさい!」


あかねに急かされ、落ちていたマントを腰に巻く。


「んもう!デリカシーが無いのは羽竜君だけかと思ってたのに!信じらんない!」


「な、なんだとっ!?俺だってデリカシーくらいはある!」


怒るのももっともな話なのだが、矛先がまさか自分に来るとはさすがの羽竜も予想外だったろう。


「もう大丈夫だ。悪かったな、あかね。」


本当に悪いと思ってるかは疑わしいが、とりあえずはあかねが怒る要素は排除されたようだ。


「それより、お前達魔導書はどうした?」


何も知らないジョルジュが、肝心の事を聞く。


「それがよ………」

















「なるほど。オノリウス様も手の込んだ事をなさったものだ。」


過去での出来事をジョルジュに話した。セイラの事、メグの事、リスティが結構いい奴だった事。ミドガルズオルムを残して帰って来た事も。羽竜が終焉の源である事、インフィニティ・ドライブの正体が魔導である事も全部。

 今、目の前にいるジョルジュの過去とは、やはり違いはあるらしい。


「だが、お前らが無事で戻って来ただけでも良しとしよう。」


「な〜にが『良しとしよう』だ。インフィニティ・ドライブは蕾斗が持ってるからいいけどよ、ヴァルゼ・アークとかダイダロスに本気の宣戦布告されたんだぜ?ダイダロスの前ではトランスミグレーションは使えねーし、ヴァルゼ・アークだって実力では俺より上だろう?頼みの綱のインフィニティ・ドライブも蕾斗は使いこなせない。お先真っ暗じゃないか。」


「羽竜、まさかここまで来て戦いを放棄するわけじゃなかろうな?」


「んな事しねーよ。ただ、なんかいい方法がないかと思ってよ。」


「方法なんて考える必要があるのか?」


ジョルジュらしくない言葉が出る。いつもなら前向きに考えろとか、弱音を吐くなとか言うだろうに。


「私は…………」


言いかけて一旦唾を飲み込む。


「私は、お前達とならどんな困難にも打ち勝てると思っている。方法を探るより、力を合わせて戦えば勝てる。そう信じている……………違うか?」


「お前が言うなよ、最初からそのつもりだ!なんせ、こっちにはインフィニティ・ドライブに加えて、エアナイトが二人もいるんだからな!」


羽竜が見せたガッツポーズが、この場に合ってるかどうかはこの際突っ込まずにおこう。

蕾斗、あかね、ジョルジュの表情を見れば、羽竜のやる気は伝わったとわかる。


「そういえば、吉澤さんがどうしてエアナイトの力を持ってるかは、謎のままだったね。」


「結局、『あっち』のジョルジュもわからなかったみたいだし……………別にもう気にしてないからいいんだけど。」


蕾斗とあかねの会話を聞いて、ジョルジュが何か言いかけたが思い留まる。

戦いはまだ続いている。永きにわたる戦いを終わらすのは、終焉の源の羽竜か?もう一人の終焉の源、ダイダロスか?それとも、神でさえ恐れる魔帝……ヴァルゼ・アークか?

勝利者は常に一人。

















 ダイダロスは都会の夜景を、空から眺めていた。


「人の革新は素晴らしい。しかしながら、どんな力を持っても、人は争わずにはいられない悲しき生き物…………」


不死鳥族の身体を持つダイダロスが翼を広げ、夜の闇へ消えて行く。

















「俺のやろうとしている事はわかっただろう?それでも後悔はしないのだな?」


ヴァルゼ・アークの前に、レリウーリアの女性達が平伏している。

問いに答えたのはもちろん、仲矢由利。レリウーリアの司令官だ。


「ヴァルゼ・アーク様が何をなさろうとも、私達の忠誠に変わりはありません。いえ、それどころか、前にも増して忠誠を誓う心があります。」


「そうか……………フッ、つくづく物好きな女達だ。いいだろう、最後の戦いへ着いて来るがいい。我が愛しき闇の下撲達。」


三度目の満月は、闇の住人達を照らしていた。

















インフィニティ・ドライブ………………手に入れる方法が一つだけある。


いつも読んでくださり、ありがとうございます。交流サイトの秘密基地のほうに、最終バージョンのイラスト更新中です。少しは上達したと思うので、ぜひご覧下さい。

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