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第三章 封印の解ける日

「そんなに奇っ怪な顔をしなくてもいいではありませんか。」


上下逆さまの空間で予想外の人物が現れれば奇っ怪な顔にもなる。


「ダイダロス………何故お前がここにいる?」


「何故?なら貴方は何故この時代に存在しているのですか?ジョルジュ。」


「…………聞くだけ野暮だったか。」


「フフ……そういう事です。」


ダイダロスが何の為に復活したかなどわかりきった事。

全てはインフィニティ・ドライブの為に復活したのだ。


「チッ………また戦いかよ。」


『また』と言いながら心なしか胸が熱くなる。

ごまかそうとしているが、血が戦場を求める微妙な気持ちの温度差に迷いが生じる。


「羽竜………でしたね?」


「だったらなんだ?」


「君の持っているフラグメント、渡してもらいますよ。」


「やっぱりそう来たか!まさかはいどうぞ、なんて言うと思ってるんじゃ………ねーだろーなっ!!」


オーラ全開でダイダロスにぶつかる。

だが………力の差は大きかった。

手元にある技をどんなに尽くしてもトランスミグレーションが反応しないのだ。

これではただ重いだけの飾りに過ぎない。


「なんでだ!?トランスミグレーション!!?なんで応えてくれないんだ!?」


「ハハハ。何か忘れてませんか?トランスミグレーションは私が創造したのです。創造主の前ではトランスミグレーションも可愛い赤子のようなもの。つまり役に立たないのですよ。」


「そんな……!?」


「ま、今はまだ戦う時ではありません。焦らず、ゆっくりと行きましょう。」


トランスミグレーションは羽竜にとっては戦いのパートナー。

自分の想いを力に変え敵を討ってくれる。

信じたくない。何度も力を込め念じる。


「くそっ!なんでだ!!トランスミグレーション!!?」


「無駄ですよ。それより、フラグメントを頂きます。」


「どわっ!!?」


ダイダロスの衝撃波で吹っ飛ばされる。その拍子にフラグメントが零れ落ちる。

ニヤリと笑い落ちる三つのフラグメントを引き寄せ、その手に握る。


「フフフ………ハハハ……フハハハハハハハハハハッ!!!揃った………揃ったぞ!!フラグメントが全て私の元で揃った!!!見よ!!この美しい雫達を!!」


羽竜が落としたフラグメントと共にバルムングから奪ったフラグメント、そしてヴァルゼ・アークと羽竜達が見つけられなかったもう一つのフラグメント…………合計八つのフラグメントが宙に浮いている。


「なんと!フラグメントが…………全て………!?」


レジェンダでさえ八つ揃ったところは初めて目にする。

そしてフラグメントは共鳴を始め、独特の桃色の光を一層強く放ち一つになる。


「おお…………これは………!」


ダイダロスの前でフラグメントはマスターレジェンドとなる。その形は意外にもただの丸い球。手の平程度の大きさで変わらないのは桃色の光を放っている事だけだ。


「これが………マスターレジェンド…………魔導書の封印を解く鍵……?」


ダイダロスがマスターレジェンドをそっと手に取ってまじまじと見回す。


「レジェンダ!!」


成す術もない羽竜はレジェンダを頼るしかない。

しかし今度はレジェンダが羽竜の声に反応しない。


「レジェンダ?おい、聞いてんのかよっ!?」


「ぐ……………なんだ……この凄まじいパワーは…………ぐおっ…………ぐ……ぐわあああっ!!!!!」


「レジェンダ…………?」


突如叫び声を上げ苦しみ出すレジェンダ。

同時にマスターレジェンドがまた強く光を放ち、ダイダロスの手を離れレジェンダのマントの中へ入って行く。


「一体………何が始まるというのだ?」


ダイダロスも余裕を失い、胸が高鳴る。

レジェンダの存在を形どったマントが、マスターレジェンドの熱で灰になる。

すると辺りが何度か激しくフラッシュして、レジェンダがいた場所に小さな銀河が現れた。


「レジェンダが…………消えた?」


「いや………違う。なるほど、そうか………ジョルジュ自身が魔導書の封印だったのか!」


羽竜には何が何だかわからないが、ダイダロスには理解出来たらしい。


「フフ……オノリウスも味な事を………。」


小さな銀河にダイダロスが近づく。


「待て!!ダイダロス!!」


無我夢中で眠ってしまったトランスミグレーションでダイダロスを攻撃する。


「静かにしろ!!」


突進してくる羽竜にもう一度衝撃波を喰らわせる。


「ぐあっ!!」


上下逆さまの空間は二次元になって捻れている為に狭いのか広いのかあやふやで、まるで水中にいる感覚になる。


「羽竜、これは奇跡です。オノリウスは魔導書をジョルジュの『中』に封印したのです。そして………この銀河こそ魔導書への道………タイムゲート!」


「タイム………ゲート……?」


「そう。これは時間を行き来するゲート。ようするに、オノリウスは魔導書を現在まで存在させず、おそらくは千年前に存在させたままにした。そういう封印を施したのです。ジョルジュはその媒介として存在して来たに他ならない。素晴らしい!!時間移動が可能になるとは!!」


「それは面白そうじゃない?」


「………バルムング………どうやってこの空間に?」


ダイダロスの顔が一瞬歪みバルムングを睨みつける。


「悪魔を甘く見ないで。仮にも私は創造神。お前程度が創った仮想空間などたやすく破れるわ!」


「困った女性ひとだ。せっかくの感動もままならない。」


「最後のフラグメント、まさかあんたが持っていたなんてね。でも調度いいわ、魔導書への道ごとヴァルゼ・アーク様にプレゼント出来るもの。ついでに私の右目を奪ったお返しもしてあげるわ。」


ロストソウル・九十九折の爪を具現してダイダロスに仕掛ける。


「愚かな………」


片目を失ったバルムングは遠近感が狂っていて的確な攻撃が出来ない。

ダイダロスの気配を頼りに動こうとしても上手くいかない。


「おのれッ……ダイダロス!!」


「雑魚に用はないっ!!」


ファイナルゼロがバルムングの脇腹に刺さる。


「うっ…………」


あっという間に空間に血が広がる。


「悪魔が…………一撃……」


羽竜も戦おうとするが衝撃波を二度も受け身体が痺れて思うように動かない。


「少し眠っていなさい!」


三度目の衝撃波は肉体を切り裂くような痛みを伴い、羽竜は気を失う。


「お前達はすぐには殺しません。私は過去へ行きインフィニティ・ドライブを手に入れる。その時絶望に打ちひがれるお前達を見たいですからね。」


羽竜とバルムングに捨て台詞を吐き、銀河に触れる。


「さあ…………誘え!私を魔導書の元へ!!インフィニティ・ドライブの元へ!!」


触れた指先からダイダロスの身体が透き通り、銀河へ吸い込まれて行った。


「……………クッ………お前だけ………行かせてなるものか………」


ダイダロスが造った仮想空間が現実空間へ姿を戻す。

ふらふらと脇腹を抑えバルムングも銀河へ吸い込まれて行った。


行き先は過去。千年前。


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