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第二十九章 蒼き騒音の悪魔

「やっぱり男の子ねぇ………ちょっと見ないとすぐに成長しちゃうんだもの。」


「………………。」


ベルフェゴールには羽竜が戦士として成長している事が嬉しく思える。

悪魔として生きるうちに、強い者を求めるようになったのだ。


「くすくす…………恐い顔して……私が嫌いなのかしら?」


「千明さん………俺は出来れば貴女と戦いたくない!貴女はいい人だ、ヴァルゼ・アークなんかの手下でいるより……悪魔なんかでいるより……女優・妃山千明でいる方がずっと魅力を感じる!だから……!」


「甘いわねぇ……………お砂糖よりも甘いんじゃない?わかってないのね、女優なんてものに執着なんて無いって言わなかったっけ?今の私の方が、一番私らしいのよ。ハー君だってそうでしょ?戦いたい、強い者と戦って『生』を感じたい…って。」


ベルフェゴールには羽竜の葛藤が見えている。これは格闘技の戦いとはわけが違う。殺し合い………それが許されている戦いなのだ。


「違うっ!!!」


「違わないわ!!」


ブルーノイズとトランスミグレーションが、ベルフェゴールと羽竜の心の叫びを代弁するようにぶつかり合う。


「千明さん、俺達は殺し合う理由なんて無いはずだ!インフィニティ・ドライブを欲しがってるのはヴァルゼ・アークだけなんだろ?だったら千明さん達に戦う理由はないじゃないか!」


「何度も言ったはずよ?レリウーリアはヴァルゼ・アーク様の為だけにあるのよ。ヴァルゼ・アーク様が求めるものが全て。それが私達の望みでもあると。」


「バカだよ………バカげてる。それじゃただの危ない宗教集団と同じだ!」


「くす………ムキになっちゃって。私の事が好きなのかしら?でも残念ねぇ………ハー君にはあかねちゃんがいるしねぇ…………丁重にお断りしておくわ。」


からかう中にあっても、羽竜とトランスミグレーションには警戒している。

隙あらばいつでも命を奪うつもりだ。


「茶化すなよ!!俺は真面目に言ってんだ!!」


天使や不死鳥族はどちらかと言えば抽象的な存在だった。

だからというわけではないが、戦う事に躊躇いは無かった。

武器を持って傷つけ合う事に違いはないが、罪の意識があったかと問われれば皆無だ。

でもベルフェゴール………千明は同じ時代を生きる人間だ。彼女の職業柄、テレビや街角のポスターで目にする機会も多く親近感がある。

刃を向けるのには抵抗がある。


「そう……………なら私も真面目に言わせてもらおうかな。いい人とか、いい仕事とか、くだらないのよ。毎日毎日目の前には退屈な人生と退屈な人間達しかないし、うんざりしてたわ。ヴァルゼ・アーク様はそんな退屈だらけの私を解放してくれたの。人はもっと自由であるべきだって。」


「そんなの……ただの自惚れだよ。」


「………かもね。でもね、人は自由を手にしても、それを扱う術を知らない。だからヴァルゼ・アーク様は悪魔の力を与えて下さったの。」


「……悪魔なら………悪魔なら自由を扱えるってのか?」


「少し違うわ。悪魔って嫌われ者でしょ?でも誰も悪魔を知ろうとしない。悪魔って、物事の本質をちゃんと理解してる存在なのよ。神も天使も綺麗であろうとするが故に、建前でしか語れない偽善者。悪魔だけが唯一自分に素直純粋でいられる。そんなところに惹かれたのかもね…………ワタシ。」


わからない。わかるわけがない。そもそも、羽竜に悪魔のなんたるかを説いたところで理解しろというのが無理がある。


「剣を交える事でしか解り合えない…………みたいね。くすくす。」


狂信者。そう思っていたが、どうやら勘違いだったらしい。

妃山千明…………紛れも無い悪魔・ベルフェゴールだ。


「力を持ってしか貴女を止められないのなら………トランスミグレーションでねじ伏せてやる!」


「くすくす………だから最初から言ってるじゃない。殺すつもりで来なさいって。」


もはや問答無用。羽竜の想いはトランスミグレーションを通して伝えるしかない。

そして悪魔は雄叫びを上げた。


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