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第二章 刀匠ダイダロス

不死鳥族との戦いが終わり数日が経った。

これからどうしたらいいのか、羽竜達は迷っていた。

四つのフラグメントは、まだヴァルゼ・アーク達が持っていると思っている。

それを手に入れなければオノリウスの魔導書には辿り着けない。

かといってヴァルゼ・アークに戦いを挑んでも勝てるかどうかわからない。

ルバートを倒せたのは運が味方したのもあった。

犠牲の柩の副作用で弱まったところを突いたに過ぎない。

でも他にやる事がない。こんな事をずっと地上に戻って来てから考えっぱなしなのだ。

いい加減頭も疲れて来る。


「どうしたらいいんだ………」


羽竜はベッドに横たわり悩み続けている。

学校へ行く気も起きない。

戦いは終わった。フォルテとフランジャーの犠牲はあったが、一安心してもいいのに出来ない。

加えて嫌な予感も払拭出来ない。

何かが胸につかえている。吐き出したくても吐き出せないのだ。


「くそっ!イラつくぜ!」


起き上がり様に枕を壁に投げ付ける。


「何をそんなにイラついている?」


「レジェンダ…………」


枕を投げ付けたところから突然現れたので、苛立ちが一瞬どこかへ飛んでしまった。


「いたのか。」


「羽竜、一人で抱え込んでは解決しないぞ?」


「…………わーってるよ。でも何を悩んでるのか自分でもわかんねーんだよ。」


「そうか。なら何を悩んでるのかわかったら教えてくれ。」


全くもって不思議な『生き物』だ。肉体があった頃はどんな顔をしていたのか………きっとガリ勉タイプだったんじゃないかと勝手に想像する。


「………なあ、そういえばフラグメントを全部集めたとして、魔導書って何処に封印されてるんだ?」


ずっと疑問に思っていた事を不意に思い出してレジェンダに聞いてみる。


「……………………。」


「おいおい、まただんまりかよ?都合悪くなると黙り込むのやめろよ。余計ストレス溜まるじゃねーか。」


「…………残念だが、魔導書の封印されてる場所は私にもわからん。」


「はあ?何を言ってんだ?お前魔導書の番人なんだろ?鍵だけ持ってても肝心のお宝が何処にあるかわからなかったら意味ねーじゃんか。」


「確かに私は魔導書の番人の務めをオノリウス様から授かったが、魔導書の在りかまでは聞いていない。」


信じられない。それなら一体今までの戦いはなんだったのか?

番人がわからないのなら誰がわかるというのか?

羽竜を悩ませるネタがまた一つ増えた。


「オノリウスって奴が言うのを忘れたのかよ?だとしたらとんだイカサマ野郎だな。」


「そういえば、私が魔導書の番人として生きて行けと言われた時、意味不明な事をおっしゃっていたな。」


「意味不明?なんて言われたんだよ。」


「確か、『魔導書は番人と共にある』と。」


「なんだよそれ、お前が持っているって事じゃねーか。」


「だから意味不明だと言ったんだ。私はオノリウス様から羽竜にやったトランスミグレーションと、蕾斗にやった指輪しか受け取っておらん。魔導書など触れた事すらない。」


戦いは終わっても何も進展していない。

変わったのは今までいた友人がいなくなった事だけ。

水城あさみが死に、フォルテとフランジャーが死んだ。

なのにこれからの事すら見えて来ない有様だ。


「本当に存在すんのかよ、魔導書って。だいたい魔導書にインフィニティ・ドライブの事が書かれてる保証はないんだろ?」


「そんな事はない。オノリウス様がそうおっしゃっていたのだ、間違いはない。」


偉い信用の仕方だ。


「でもよ………」


羽竜が立ち上がろうとした瞬間、眩暈を起こしふらつく。


「羽竜!!」


レジェンダが叫ぶ………が、眩暈を起こしたわけではないらしい。

それはすぐにわかった。

部屋が上下逆さまになっているのだ。


「なんだよ………これ………」


「お気に召さなかったようだね。」


天井…………いや今は床と呼ぶべきか、下から右目を眼帯で隠した薄紫の髪の男が現れた。


「だ、誰だテメー!」


ただ者でない事は明白だ。

レジェンダがトランスミグレーションを羽竜に渡し戦闘に備える。


「フフ………トランスミグレーション………私にとって最高の剣だ。トランスミグレーション以上の武器を造る事はもう出来ないのだからな。」


「貴様…………何者!?」


トランスミグレーションの事を知っている。

聞き間違ってなければトランスミグレーションを造ったような事を言っていた。

何かがレジェンダに警告する。


「トランスミグレーションを所有しているところを見ると、ジョルジュ・シャリアンに間違いはないようですね。」


「………コイツ……………不死鳥族だぜ?知り合いなのか?レジェンダ。」


漂ってくる熱を帯びたオーラから不死鳥族である事は間違いない。


「トランスミグレーションを造ったような事をほざいていたが、トランスミグレーションを造った人物はもうこの世にいない。名を名乗れ!」


「ハハハ!そう熱くならないで下さい。いいでしょう、あまり時間もありませんから。私は不死鳥族ライト・ハンド。そしてもう一つの名は………もうこの世には『いない』トランスミグレーションの創造主、ダイダロスです。」


「なんだとっ!?」


「ダイダロス………だって?」


レジェンダと羽竜の驚きにギャップはあるものの、それは本人を知っているレジェンダとレジェンダの話でしか聞いた事のない羽竜との差だ。


「久しぶりですね。ええ、実に懐かしい。まだ若い貴方しか知りませんでしたから、その姿は違和感がありますけどね。」


千年前、天使と悪魔の戦いにイグジストとロストソウルを加えた事で手を貸し、地上を守ろうとしたオノリウスにトランスミグレーションを造った男……ダイダロス。

角度を変えて見れば、この男が戦いをおさめたように見えるし、また別の角度から見れば千年続く戦いを起こした張本人とも見れる。


「トランスミグレーションには特別な思い入れがありますからね………その使い手には興味をそそられますよ。」


また新たな戦いが幕を開ける…………


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