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第十二章 愛しき因縁

「ジョルジュ、試験はどうなってるの?」


セイラが気になるのは試験そのものではなく羽竜の事だ。

ジョルジュが推薦した男だ、相当腕が立つのは想像出来る。

しかし歳は自分と同じくらい。

まだ十代の羽竜が士官試験をパスするとは思っていない。


「羽竜は圧倒的強さで進んでおります。」


「そう。最後まで来れるかしらね?」


ジョルジュからすれば羽竜の力は欲しい。

在るか無いかわからない魔導書を巡る戦争を終わらせる為には、人間的な強さだけでは不可能だ。

羽竜の見せたあの技と赤い刃の不思議な剣が必要になる。


「もうひとつ報告があります。」


「何?」


「羽竜の他にも二名、とんでもなく強い者が現れました。」


「へぇ〜……誰?」


「サマエルと申す青髪の戦士と、メグ・ベルウッドという歳は羽竜と同じくらいの女戦士です。」


「女?そんなに強いの?」


「はい。」


ジョルジュは無駄の無い男だ。

言い換えれば、素直過ぎてわかりやすい反応を示してくれる。


「貴方がそう言うのであれば強いのでしょう。………面白いわ、私も是非見てみたい。その二人。」


セイラも実にわかりやすい。見てみたいという事は見せろという事だ。


「間もなく残った四人での試験が始まります。」


「愚かな戦争を止める戦士かどうか…………見てやろうじゃない。」

















羽竜、サマエル、メグの強さに恐れを抱き棄権した者が大半だった。

試験も数を熟す度に、三人の攻撃も加減が失くなり対戦相手をこてんぱんにのしていた。

もっともサマエルだけは最初から殺さない程度の加減しかしていなかったが。

互いに顔を合わせる事は無かったが、残り四人ともなればそうはいかない。


「貴方強いのね、さっきの戦い見てたわ。」


「お前は?」


「私はメグ・ベルウッド。メグって呼んで!よろしくね!」


茶目っ気たっぷりにウインクする。


「俺は目黒羽竜。羽竜でいいよ。」


軽く握手をかわして互いの強さを讃え合う。


「目黒羽竜、準備はいいか?」


いつからいたのか、試験官が羽竜を呼んでいる。


「決勝まで来いよな!メグ!」


「もちろんでしょ!羽竜も頑張って!」


約束をかわし羽竜はリングに向かう。

今度は観衆に囲まれたリングだ。緊張などしてない。むしろ次の相手を待ち望んでいる。


「俺の次の相手はどんな奴だ?」


もはやこの世界に来た目的を忘れている。


「………とんでもなく強い奴だ。リングに上がればわかる。」


長い廊下を歩くと光が差し込む。

眩しさに目を歪めながら光の方へ歩いて行くと、大きな歓声に見舞われた。


「す、すげぇ…………」


耳が裂けるような感覚に捕われる。よく聞けばブーイングも聞こえるが、この際どうでもいい。

士官試験にしてはやけに盛大な催しに羽竜の鼓動は高鳴る。


「なんだ……この気持ち……?」


生まれて初めて体験する大舞台に多少戸惑いもある。


「俺の……俺の対戦相手は?」


向かい側の扉から対戦相手が現れる。

銀色の鎧を纏い、青い髪をしたあの男。


「な!!サ……サマエルッ!!?」


「ククク………また会ったな、羽竜。不死鳥界で会って以来か。」


「なんでお前が………!?」


「わかりきった事。お前を追って過去まで来たのさ。」


「俺を……?やっぱりお前も魔導書を………?」


「フッ………俺はミカエルとは違う。ただお前を倒す為……それだけだ。見ろ、この額の傷。疼くんだよ、お前を倒せってな。」


これまでの対戦相手はまるで手応えはなかった。

それゆえ、この展開は………嬉しい。

サマエルとならこの大舞台も無駄にはならないだろう。


「でもなんで俺なんだよ?天界では偶然あんたに勝てたに過ぎない。わざわざ……なんで?」


「愚問だな。偶然だろうとなんだろうとお前は強い。一度は死んだも同然の身。くだらん争いに参戦するより、我が道を生きる方がいい。」


「フン。ま、嫌いじゃないけどな、そういう考え方。」


翼をもがれた事で天界では生き恥を晒して来た。

だがもうサマエルを縛り付ける鎖は無くなった。


「羽竜、サマエル、お喋りは終わりだ。試験はこの観衆を前にしても緊張せずに己の能力を発揮出来るかにある。各々悔いのないよう………」


「黙ってろ。せっかくの雰囲気が廃る。」


試験官をサマエルが一喝する。


「抜けよ、まだ持ってるんだろ?イグジスト……」


サマエルの腰の剣にちらっと視線をやり、戦いの準備を急かす。


「もちろんだ。」


それに応えてイグジスト……カオスブレードを抜く。


「行くぜ!サマエル!!」


「来い、我が愛しき因縁よ!!」


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