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幸せな葛藤、穏やかな抗争

作者: 青田早苗
掲載日:2015/01/31

寒い季節、布団の中でしばしば起きる葛藤と抗争。


なんてカッコつけてみたけれど、ただいちゃいちゃするだけの一コマ。


 体が冷えて目を覚ました。

 暗い部屋の中、カーテンだけが薄ぼんやりと浮かび上がっていて、夜ではなく明け方だと分かった。

 隣を見れば、彼が布団にくるまって寝息を立てている。

 最近は仕事がお互いに仕事が忙しくなってしまっていて、頻繁に会っているがあまりゆっくり出来なかった。久しぶりに二人の休みが重なって、久しぶりに一緒に寝た。

 一緒に寝て、いつも布団を盗られるのは私だ。

 朝に眠気よりも寒さで起きられないこの季節、布団を奪っていくのは許し難い。ただでさえ寒いのに、昨晩の名残で、下着も何もつけていない。幸せそうに寝ている姿を愛おしく思うと同時に、ちょっとしたいたずら心がわき上がる。

 これくらい、良いだろう。幸せな思いをして寝ているのだから。

 布団を軽く引っ張ると、背中をこちらに向けて丸まっていたのが、もぞもぞと寝返りをうつ。うっすらと彼が目を開けた気がしたけれど、きっと夢見心地なだけだ。その夢見心地を邪魔するべく、冷えきった体のまま、布団の中に潜り込んだ。

 ちょっとだけ眉間にしわが寄ったのを見て、私の寒さを思い知れば良いと思いながら、そこを指で押してみた。すると、暖かい手が布団からのびて来て、いたずらをする手を掴んだ。もう一方の腕が腰に回されて、ぴったりと体が密着する。近頃になって少し出て来た彼のお腹が、同じくちょっとたるんだ私のお腹と胸の間にぴったりと収まって、まるでパズルみたいだと思う。冷えた足に暖かい足が絡まって、寒さはもう感じなかった。彼の右足の先が三回もぞもぞと動く。眠りに落ちる直前、必ず右足が三回動くと気がついたのは何時からか。きっと彼ですら知らない癖。きっと家族も知らない癖。もしかしたら、前の彼女は気がついていたかもしれないけれど。

 だんだんと体が温まってくるのと同時に、また私は眠りに落ちていった。


 アイボリーの地に緑色の糸で葉の模様が刺繍されたカーテンをぼうっと眺めながら目を覚ました。いつもと違う、でも見慣れた部屋の景色に彼女のところに泊まったのだと思い出す。

 彼女は腕の中で静かに寝息を立てていた。夢を見ているんだろう。閉じられたまぶたの下で目が動いていた。

 最近太ったと気にしていたけれど、一時仕事のストレスでがりがりになっていた彼女を知っているから、手に吸い付くような肌とその柔らかな感触になんだかちょっと安心した。いつも俺が目を覚ますと、猫みたいに背中を丸め、うつぶせ気味になって寝てる。猫に似ているのは寝姿だけではなく、目を覚ます少し前になると、必ず猫が膝にまとわりついてくる時みたいに、顔を俺の首元にこすりつけてくるのだ。本人は知らないだろうけど、前に見てたら枕でも同じことをやっていてちょっと笑ってしまった。今はまだじっと丸まっているだけなので、しばらくは起きないだろう。

 この部屋では、朝日が隣のマンションよりも高くなると、日差しが窓から入ってくる。カーテンがだいぶ明るく光っているから、もうそろそろ日が昇ってくる頃だ。丸まっている背中を撫でるのが、何となく好きだった。撫でていると、長いカールした髪に指が触れる。前まではもう少し短かったのに、と思いながら本当に長い間一緒に寝ていなかったな、と思う。皆無、という分けではないがどちらかが次の日仕事で、慌ただしく準備をして出て行って。特に俺の方が忙しいことが多くて、彼女の部屋に来たのも今日みたいにゆっくりと過ごしたのは何時ぶりか分からないくらいだ。

 そんなことを思っているとカーテンの隙間から朝日が滑り込んで顔に当たる

 8時くらいか。

 休日とはいえ、もうそろそろ起きないと買い物やら何やら出来なくなってしまう。でも、幸せそうに眠っている彼女を見ると起こすのが可哀想で、目を覚ますまでこのまま待ってようと思う。背中を撫でているうちに、日差しが少し顔から逸れて眩しくなくなった。そのせいか、段々眠くなってきてしまう。

 このままじゃ、寝ちゃうな。

 もう、半分眠っている頭でそんなことを考えていたら、腕の中で彼女が少し動いた。

 あ、ほら顔こすりつけて来た。

 思った通りだと、髪を撫でているうちに眠ってしまった。


 頭を撫でられる感覚があって眠りから少しずつ意識が浮上する。乾燥していると、目を開けられなくて起きていたけどしばらくそのままで居た。眠りと覚醒の合間を行ったり来たり。実はこうやって頭を撫でられるのが結構好きで、起きたら手が止められちゃうと思って、寝た振りをする。

 何度目かの微睡みに入ろうとした時、彼の足が当たって急に眠りから引き戻された。意識が再浮上した時には頭を撫でる手が止まっていた。

 また寝ちゃった。

 ようやく開けられるようになった目を開き、何度か瞬きすると、案の定、寝息を立てている。体をもぞもぞと動かして顔を彼と同じ高さにする。少しだけ布団の中に冷気が入って来た。

 壁の時計は8時40分を過ぎたところ。

 休日だし、このまま寝てても良いかなって思うけど、買い物に出かける前に溜めてた洗濯もしたいし、掃除もしたい。だけどこのままじゃ、寒くて布団から出る気になれないと、エアコンをつけようと手だけを動かしてリモコンを探した。いつもの場所にリモコンがなくて、おかしいなと思い首を動かす。

 そうだ、夜、途中で何か落ちた音したの、きっとリモコンだ。

 しかたなく、布団の中で体の向きを変えて、床に視線を巡らせるとベッドの下にひっくり返って電池の蓋が外れているリモコンを見つけた。腕を伸ばしてリモコンと電池の蓋を掴んだ時。

「おはよ。」

 彼の腕に捕まえられて、また暖かい布団の中に戻された。伸ばしていた右腕だけが冷たい。昨日の晩の寒い思いをさせられたことを根に持っていたので、冷たい掌を彼のお腹にくっつけた。ちょっと出てたお腹がびくっとして凹んだのが面白くって。

 くすくすと笑いながらエアコンのスイッチを入れる。

「おはよ。」

 そう言って、背中を彼にくっつけると私の前に回された手が不穏な動きをする。朝だから仕方ないけど、私のお尻には彼のモノが当たっていて、このままでは間違いなく休日の午前は潰れてしまう。だけど、布団の外の冷気と彼の体温の温度差に、快楽と怠惰に身を任せるのも良いかとほんの少し迷ってしまった。

 いや、だめだ。先週は忙しくて洗濯物がいつも以上に溜まっている。太ったことを気にしてると知っている筈なのにお腹の辺りを撫でてくる手と、もう少し上の膨らみを楽しむ手を掴んで取り押さえた。

「もう。起きよう?コーヒー飲みたいな。」

 彼が淹れるコーヒーは結構美味しい。私も最初はそんなにコーヒーが好きじゃなかったけど、一度、彼に淹れてもらってから好きになったくらいだ。

 ただ、彼は布団から出ることにご不満らしく、いいじゃん、なんて言って手を止めない。

 もう一押しか。

「久しぶりだから、淹れてもらうの楽しみにしてたの。ね?」

 そう言うと、渋々手を離してくれた。

 まずは洗濯から。

 エアコンが動き出した音を聞いて、気合いを入れる。

 布団を思いっきりめくって休日の一日が始まった。


もはや女子とは言えない女が集まって女子会をしていて、布団の話に。

布団をとられて夜中目が覚めるってよくあることなんでしょうか?

結構な割合で、「そうそう!」ってなったんですが。


くだらない小話ですが、ご覧頂きありがとうございました。


青田早苗

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