雪に閉ざされた楽園 2
吹雪が強くなっていく。
だが、歌とともに誕生会は続く。
まだ幼いシェリアは、大人になったときこの日を覚えているだろうか。
少なくとも誕生日に家族が揃い幸せだったことは、記憶のどこかに残るだろう。
私からシェリアへのプレゼントは、手作りのワンピースだ。淡い水色のワンピースに白いケープを着たシェリアは、お人形のように愛らしい。
「みてみて〜!」
シェリアがクルクルと回れば、スカートがフンワリと広がった。
「俺からも何か……ああ、そういえば君は魔石の鑑定を生業にしているのだったな。割れてしまった魔石の破片はあるか?」
「ええ……」
割れてしまった魔石の破片は魔力を溜めこむことができず使い物にならない。
見た目は色ガラスのようで美しいが、魔力が完全に抜けると透明になってしまう。
「少し分けてもらえるかな?」
「たくさんありますよ」
「それは良い」
私は作業室から箱に溜めこんでいた魔石の破片を持ってきた。
「そうだなあ……全属性か」
カナン様は大きめの破片を四つ選んだ。
「光と闇属性は、さすがに難しいが」
カナン様が杖を掲げると、魔石の破片が浮かんだ。破片は赤、青、黄、緑に光り輝く。
やがて破片は、杖の周りをクルクルと回り始めた。
「娘の三歳の誕生日を祝いたい……力を貸してくれるか?」
杖から現れたのは四色の光だ。
光は互いにくっついては離れ、まるで何かを相談しているようだった。
しばらくすると、魔石を追いかけるように、杖の周りをクルクル回りだす。
光はいつしか白い光の玉になった。
「そろそろかな」
カナン様が手の平を上に向けると、光の玉からポタリと何かが落ちてきた。
赤と青が混ざり紫に、黄色と緑が混ざり黄緑色に。
紫と黄緑、二色の魔石……。
「四属性の魔石!?」
この地では魔石の原石である魔鉱石が多く産出される。魔鉱石は雪深いこの地で研磨され魔石となり、その多くは王都へ運ばれる。
魔石にあふれたこの地で鑑定していても、四属性の魔石を見たことはなかった。
「精霊に頼めばこの通り」
「えっ……大変な発見なのでは!?」
「俺にしかできないし、精霊たちは気まぐれだから、いつも力を貸してくれるわけじゃない。シェリアのお祝いだからと特別に力を貸してくれたんだよ」
「……そうでしたか」
「きれ〜……シェリーにもできる?」
シェリアは瞳を輝かせてカナン様を見つめた。
「シェリアならできるだろう」
「わーい」
「おめでとう。俺と精霊たちからの贈り物だ」
「ありがとう!」
魔石には小さな穴まであいていた。
ヒモを通してあげると、シェリアは首からさげた。
四色の光が、シェリアのペンダントを取り囲む。しかし、彼女の頭の上にいるマリルは、明らかに不機嫌そうだ。
「マリル?」
マリルはスルスルとシェリアの肩まで降りてきて魔石を尻尾で包み込んだ。
金色の閃光、尻尾がどけられると魔石の中には金色の光がキラキラと星のように散りばめられていた。
「光属性が付与された」
「初めて見ました」
「俺もだ……シェリア、これは御守りとして大事にするように。でも、誰にも見せてはいけないよ」
「うーん……? わかった!」
四属性に光属性まである魔石なんて、王城や中央神殿の宝物庫くらいにしかないだろう。
ペンダントをワンピースの襟ぐりから中に隠してシェリアが笑う。
今日もまた、隠さねばならぬ秘密が一つ増えたようだ。
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