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英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です  作者: 氷雨そら


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筆頭魔術師 6


「わああ……みんな集まってきたね!」


 シェリアは無邪気に喜んでいるが、私はそこまで無邪気にはなれない。


「ご苦労」


 カナン様は鷹揚に挨拶してスタスタと歩んでいくが、私はそこまで堂々とできない。


 先ほどはシェリアの魔法で送られ、カナン様の魔法で移動したからわからなかったが、筆頭魔術師であるというのはこういうことなのだ。


「――大丈夫? 緊張している?」

「……問題ありませんわ」


 カナン様は私の前ではどちらかといえばおどおどしているくらいなのに、こんなに違うものか。

 彼はこういった扱いに慣れているのだ。


「騎士さま〜、こんにちは! シェリア・オルトです!」

「は! お声がけいただき光栄です」

「魔術師さま! お父さまがいつもお世話になってます!」

「は! こちらこそお世話になっております!」


 シェリアは列になって並ぶ騎士様や魔術師様に次々と挨拶して回っている。

 挨拶を返してくださるけれど、彼らの表情は一様に緊張していた。

 カナン様は、周囲に恐れられているようだ。

 彼がその気になれば、あるいは彼に捨てられてしまったら、この国の存亡に関わる――彼らからはそのレベルの緊張すら感じる。


 シェリアは筆頭魔術師カナン・オルトの娘であり、紫色の瞳を持っている。

 カナン様がシェリアを溺愛していることは周知の事実であり、彼女自身、いつか彼らの上官になる可能性が高い。


 ――シェリアが戦うなんて嫌だけれど……それが魔力が高い者の宿命であることは歴史が証明している。

 歴史ではときに魔力が高い者が魔獣以上の災厄を招くこともあった。

 それゆえに人々は、紫や赤、金や銀などの特別な色の瞳を持つ者を尊敬すると同時に畏怖するのだ。


「お父さま……みんなシェリーのこと、こわがってる?」

「――はは、そんなはずないさ。なあ、君たち?」


 ……あーっ、カナン様が魔王様みたいになってる!

 私は魔力を感じ取る力がほとんどないのだけれど、皆一様に青ざめている。


「あーっ、お父さま、みんなを怖がらせたらメッ、よ?」

「すまない……ついつい無意識に」


 周囲が安堵の息を吐いたのがわかる。

 すると、こちらに走り寄る足音が聞こえてきた。


「筆頭殿!」

「……ベルス卿」

「早く通り過ぎてあげて下さい。皆、職務に戻れません」

「登城のたびに出迎えるなど無駄極まりないと言っているのになぁ」

「致し方ありません。数百年もの決まりを変えようとすれば、伝統が格式がと年より連中がうるさいですから――諦めてください。今のところは……ね」

「はあ……実に面倒だ」

「ベルスさま?」

「おや、なんて可愛らしい。魔王から天使が生まれるとはこのことですね」

「……失礼だぞ。いや、フィアーナに似たのだろうから事実か」


 カナン様に気さくに接してくださる方がいてホッとする。

 ベルス様は、魔術師団長だ。


 ――彼の瞳は片方が金色でもう片方が銀色だ。髪は淡い水色で、神秘的な印象を受ける。

 筆頭魔術師であるカナン様が国王陛下直属であるのに対し、彼は王国軍の魔術師団の長だ。


「さて、オルト夫人、並びにご令嬢。貴賓室にご案内するように陛下から命を受けております。筆頭殿は早く陛下の下に行ってくださいね」

「……よろしく頼む」

「ええ、二人の安全はこの国の平和のための最優先事項でもあります。ご心配なく」


 カナン様は振り返り振り返り城の奥へと消えていった。

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